第101話 ストライク公爵と・・・
「すまなかった!」
目の前にはプリンダム王国の中でも格が最上級の公爵家の当主がラッキーに対して頭を下げていた。
王国武道会一回戦でメルトに勝利したラッキーは、シルフィー達を喜びを分かち合い、次の試合を見る事なく宿に戻って祝勝会を行った。そして、翌日朝から宿にラッキーの父親であるロート・ストライクと、母親のクッキー・ストライク、妹のスイート・ストライクが尋ねてきた。
ラッキーが部屋に招き入れると開口一番に放たれたのはストライク公爵からの謝罪の言葉だった。
「父上・・・いやストライク公爵。頭を上げてください。ここでは座る所もなくゆっくり話もできませんので、どこかゆっくり話ができるところにいきませんか?」
「むっ。そうだな・・・。」
「ラッキー。それなら虹の集いはどうかしら?あそこなら個室もあるし朝食も出してるわ。」
「そうですね。」
「マリアちゃん達も呼んでいいから準備できたら来てね。私達は先に行って待ってるわ。」
「はい。わかりました。」
スイートは、ロートとクッキーを連れて宿を出て行った。それを確認したラッキーは、シルフィーとマリアを呼びに行く。最近リルはマリアと一緒に寝ているので、マリアの部屋に行けばリルもいる。
「朝から騒がしいと思ってたけど、ストライク公爵が来てたのね。」
「ラッキー様。それで・・・どうするのですか?」
「ん?ああ。父上からは一番初めに謝罪の言葉をもらった。俺としては追放された事はもうそれ程怒っていないんだ。父上も公爵家の事を思ってしたことだしな。ただ、メルトを養子にした事で母上や妹、公爵家の使用人達がつらい思いをした事はゆるせない。その辺をどうするかはちゃんと聞いておこうと思ってるよ。」
『虹の集いの料理はおいしかったのを覚えているんだぞー』
「とりあえず虹の集いで3人が待ってるから急いで準備して向かおうか。」
シルフィー、マリアの準備を待って、ラッキー達は虹の集いに向かった。人気のお店なので、カフェには多くの人で賑わっていた。店員さんに話をし、ラッキー達は個室に入る。
個室の中にはすでにロート、クッキー、スイートの3人が座って待っていた。料理も食べず、飲み物も飲まず無言で座っている3人の雰囲気は暗い。
(いやいやなんでこんな雰囲気なんだ。空気が・・・こんな所で話なんかできないだろ・・・は~。しょうがないな。)
「先に食べてるかと思ったのに待っててくれたんですね。スイートは料理はまだ頼んでないのか?」
「はい・・・。」
「なんだよ。スイートはここにきたらいつもパンケーキと紅茶だろ?早く頼もうぜ。俺も腹が減っちゃったよ。」
「お兄様。」「「「「ラッキー。」」」」
「いやいや朝からこんな雰囲気じゃ。おいしい料理もおいしくなくなるだろ?ほらほらみんな料理頼んで。話はそれからにしよう。」
「そうだな・・・。」
ラッキーが明るく振る舞い、シルフィーとマリアもそれに続く、リルは気をきかせたのかスイートの元に近づいて膝の上に座った。
全員分のパンケーキが運ばれてきた所で、ラッキーは話始める。
「ストライク公爵。いや父上。父上達の雰囲気が暗いのはある程度、理解しています。それでまず初めに言っておきたいのは、俺は公爵家を恨んではいません。公爵家を陥れたいとかそう言う気持ちは全くないのでそれだけは先に言っておきます。」
「ラッキー・・・すまなかったな。俺のせいで。」
「あなた・・・。あなた!ラッキーもこう言ってる事だし先に食事にしましょう。家族で食事なんて久しぶりだもの。ラッキー!この間は聞けなかったけど、シルフィーちゃんとマリアちゃんとはどんな感じなの?とっても気になるわ。」
「えっ!?いや・・・それは・・・。」
「お兄様!それは私も気になります。じっくり教えてください。」
恋愛話になり、食事は和やかムードの中進んでいった。そして食事が終わり、紅茶を飲みながら、ストライク公爵が話し始めた。
「ラッキー。改めてこの度はすまなかった。俺が間違っていた。今回は俺の独断でほとんど進めてしまったようなものだ。その為にラッキーの他にも、クッキーやスイート、使用人達にも迷惑をかけた。」
「そういえばメルトはどうしたんですか?」
「ああ。アイツはラッキーに負けた日に屋敷に帰ってきて使用人達に当たり散らしてたから部屋に軟禁してある。」
「そうですか・・・。それで、今後はどうなるんですか?」
「お父様・・・。」「あなた・・・。」
「ああ。それなんだが・・・。ラッキー!公爵家に戻ってきてくれないか?追放しておいて言うのも今更ではあるんだが・・・。」
「父上・・・。父上、俺が戻ったとしてメルトはどうなるのでしょうか?俺はアイツを許せません。だけど・・・だけど、アイツも被害者だと思うんです。」
「「「ラッキー・・・」」」
「そうだな。アイツは養子を解消して、南の辺境の地に送ろうかと思っている。あそこは帝国との境目で重要な拠点だ。あそこの領主は兵士達にとても厳しいのが有名だ。そこに送って鍛えてもらおうと思う。元はと言えば俺がメルトを甘やかしたのが原因だからな。最後まで面倒はちゃんと見るつもりだ。」
「それなら安心です。よかったです。俺と同じように追放するんじゃなくて。」
「お兄様。なら、これからはずっと一緒にいられるんですね。」
「スイート・・・そうだね。又一緒に買い物に行こうか。」
「はい!」
(今はまだ言わなくていいか。武道会も終わってないしな。今は父上と仲直りできた事を素直に喜ぼう。)
その後、久しぶりの家族の時間を過ごしたラッキーは、冒険者活動の話、素質の話、シルフィーの話にマリアの話など今までの事を話した。気が付けばとっくにお昼が過ぎていた。
ひとしきり話した後、ラッキー達は宿へと戻って行った。スイートから一緒に屋敷に戻らないの?としきりに言われたが、ストライク家の後処理もあるし、今はまだ屋敷にメルトもいるので、落ち着くまでは宿に泊まる。と伝えた。渋る妹に、王国武道会が終わったら一緒に買い物する約束を取り付けてその場を切り抜けるラッキーであった。
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いつも読んでいただきありがとうございます。
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