第91話 久しぶりの王都へ
「ラッキー?王都に来るのは久しぶりなんじゃない?」
「そうだな。追放されてから来てないからな。」
「私も、教会から逃げてからここには来てませんね。」
ラッキー達は王国武道会に参加する為に王都に来ていた。ラッキーとマリアは人目につかないように黒いローブを頭から被り目立たないようにしていた。
「やれるだけの事はやったんだ。後はここでしっかり結果を出してマリアを助けるだけだ。」
「ラッキー様・・・ありがとうございます。」
『王都にはオークがいるのかー』
「そうね。レベルも大分上がったし、スキルや魔法も大分使えるようになったものね。さすがにソルジャーアントには苦労したけど、苦労したかいがあったわね。」
「ああ。」
『俺も蟻はいやんだぞー。アイツらはおいしくないし倒すだけ無駄なんだぞー』
フロンダールの街でミスリル装備を手に入れたラッキー達は、再度レベル上げる為に手に入れたと同時にアクアマリンへ向かった。アクアマリンでダンジョンを攻略しながら王国武道会への準備を進めていると、ギルドに緊急依頼が発動されたのだ。
その依頼は『アント大発生‼早期に殲滅せよ‼』という内容だった。アクアマリンの近くにある荒地にはキラーアントという蟻の魔物がおり、数十年周期で大量発生する事がある。大量発生する理由はアントの中にクイーンアントが生まれ、クイーンアントが大量のアントを生み出すからだ。
緊急依頼という事もあってラッキー達はその依頼を受けた。荒地に足を運んだラッキー達の目に映るのは、所々に大穴が空いていて、そこからアントが出てきて、それを倒している冒険者達の姿だった。
ラッキー達は手の付けられていない巣を探し、中に入っていく。体長1mにも満たないアントの巣だが、入って見ると人が3人通っても十分な程広かった。中を進むとアントがワラワラと現れる。大量発生というだけあって巣の中はアントでいっぱいだった。
「私もです。しばらく蟻は見たくもないですね。たしか1,000体ぐらい倒しましたよね?」
「ああ。正確には1163体だな。」
荒地に行って、巣を見つけて突入し、出てくるアントを倒して行く。そんな毎日をラッキー達は過ごしていた。緊急依頼を受けた時にギルドから倒したアントを測る魔道具を借りており、どれだけ倒したかわかるようになっていた。
巣の最奥にいるクイーンアントのランクはBランク。ラッキー達では太刀打ちできないので、ラッキー達の仕事は道中大量にいる、ソルジャーアント、キラーアント、アントの数をできるだけ減らす事だった。アントはFランク、キラーアントはEランク、ソルジャーアントはDランクの魔物だ。数が多く脅威ではあるが、巣の中で挟み撃ちでもされない限りはラッキー達でも十分対応できる魔物だった。
クイーンアントが倒されるまでラッキー達は毎日依頼を受けてアントを倒して行く。最終的にラッキー達は1163体のアントを倒していた。ギルドの集計では、最終的に倒したアントの総数は3333体。終わってみればその3分の1をラッキー達が倒していた。
「まあでも運がよかったわ。あの依頼のおかげでCランク冒険者になれたんだから。」
「そうですね。あのままダンジョンでレベル上げをしていたら冒険者ランクは上がらなかったと思いますし運がよかったですね。」
「運が良いのはラッキーがいるからよ。きっと。」
「運も実力の内・・・だろ?」
アクアでの素材の貢献と、アント討伐数の評価により、ラッキー、シルフィー、マリアの3人はDランクからCランクに冒険者ランクが上がっていた。ステータスも上がりCランクのサフィーネとの模擬戦ではラッキーが勝つ事もあったので、実力としてはCランクの力がすでにはあった。
「そうね。ミスリル装備に転移魔法。この二つがなかったらアントをあれだけ倒すのも無理だったでしょうし、ラッキー様様ね。」
「そうですね。」
フロンダールで作ってもらったミスリルの剣はアントをおもしろうように切り裂いた。切れ味がするどく、剣を振るだけでアントはバターのようにすーっと切れていた。転移魔法も優秀だった。ラッキーは毎日毎日使えなくなる限界まで転移魔法を使い続けた。
結果・・・
ラッキーだけでなく、シルフィー、マリア、リルも一緒に転移する事が可能になっていた。今の所それ以上の数でも転移できるかは検証していないからわからないが、取得した時と比べると成長しているのは目に見えてわかっていた。
距離も大幅に伸びた。始めは1m先にしか転移できなかったが、今では100m先まで転移できるようになっていた。それ以上の距離はまだ転移できない為、知っている場所への転移はまだできないが、距離が伸びて行けばそれも可能になるとラッキーは思っていた。
一日に転移できる回数は10回のまま変わらなかった。一度寝ると再度使えるようになっていたので朝になるとリセットされて再度10回使えるようになるみたいだった。
「立ち止まっていても仕方ないわ。まずは宿屋を確保しましょ。王国武道会に参加する人や観戦する人も多いはずよ。早くしないと宿が埋まっちゃうわ。」
「そうだな。とりあえず宿を確保してそれからどうするか話し合うか。」
「はい。」
『おー。俺はお腹空いたんだぞー。』
ラッキー達は、久しぶりの王都を堪能する事もなく、人だかりを避けながら宿屋に向かうのだった。
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