第68話 ユリウス・フロンダール

無事マリアとの再会を果たしたラッキーとシルフィーは、マリアに誘われて夕食を共にしていた。


参加メンバーは、ユリウス・フロンダール、アクア・フロンダール。この2人はマリアの両親だ。そして、マリアの弟。そこにラッキー、シルフィーの6名だ。


「久しぶりだな。ラッキー君、シルフィード嬢。だいたいの事はマリアから聞いてるよ。わざわざマリアの為にきてくれてありがとう。」


「ラッキーさんもシルフィードさんも久しぶりね。マリアが迷惑かけてごめんなさいね。でもきてくれてうれしいわ。」


そうして和やかムードのまま夕食は終わり、食後のティータイムでは、ラッキーとシルフィーの冒険者活動の話しが盛り上がった。


「ラッキー君はそこまで強くなってたんだな。それに剣術の素質も現れるとは・・・。できれば天職の儀の時にそれを授かっていればな・・・。」


「お父様・・・。」


マリアの話題を出さないように努めていたがユリウスの一言で暗い雰囲気になった。


「ユリウス様!マリアの婚約はどうにもならないんですか?俺が・・・俺が公爵家を追放されたばっかりに、マリアに迷惑をかけてしまって・・・。」


「ラッキー様」「ラッキー君」


「そうだな。正直な所、ストライク公爵家からの婚約の打診だ。私のような下級貴族では断る事はできない。」


「あなた!?」


「だが・・・マリアの婚約を取りやめにする方法がない訳でもない。」


「!?本当ですか?」


「ああ。可能性としては小さいがな。」


その後、マリアがメルトと婚約しないですむ方法がユリウスより語られた。


その方法とは、


1.公爵家から婚約破棄の連絡がある

2.公爵家よりも優れた婚約者を見つける

3.公爵家が問題を起こす


だった。


「どれも難しそうですね。」


「そうだな。正直公爵家の嫡男になったメルト君が、他の令嬢に手を出す可能性もあるかと思っていたからマリアとの婚約は病気療養という形で時間を稼いでいたんだ。噂のメルト君の事だ。もしかしたらもう問題を起こしてるかもしれないが、公爵家がもみ消しているだろう。」


「メルトはそんなにひどいんですか?」


「ああ。そういえばラッキー君は知らないんだったね。僕の所に入ってきてる内容は、ひどいものだよ。公爵家という権力と、剣聖という権力を使って好き放題やってるみたいだね。なんせ公爵家は王族を除いたら最上位の貴族だし、剣聖だってこの世界で最上位の剣の素質だからね。」


ユリウスからメルトの悪行の数々を聞いたラッキーは拳を固めて静かに怒っていた。


(使用人にも乱暴してるのか!?あそこの人達はとても良くしてくれた。父さんは何も言わないのか?くそっ!何か俺にできる事はないのか?)


「じゃあさぁ、そのメルトっていう剣聖よりもラッキーが強いって事を証明すればいいんじゃないの?」


「えっ!?」


「だってそうでしょ。ラッキーがメルトより強かったらマリアもメルトじゃなくてラッキーを選べるじゃない?」


「たしかにシルフィード嬢の言う事は一理ある。だがどうやって?剣聖の素質は剣の中では最上位だ。挑んだところで返り討ちになるのが目に見えてる。」


「そんな事ないわ。だってラッキーは、」


「シルフィー!!」


「あっ・・・ごめんなさい。」


シルフィーがラッキーの素質の事を話そうとしたので、ラッキーがシルフィーと止めた。


(たしかにメルトが剣聖の素質を持っていたとしても勝てる可能性はある。ライアン教官の言うように剣術は毎日の積み重ねが大事だ。メルトがどうかは知らないが俺は毎日剣術の鍛錬はかかさずやっている。それにステータスだって伸びている。だがどうやってメルトよりも強いって証明する?それにメルトより強かった事を証明した所で俺は追放された身だ。もう公爵家でもない。ただの平民だ。)


「シルフィー。俺がメルトより強いって証明しても所詮平民だ。どうにもならない。」


「そうだね。ラッキー君の言う通りだ。今のラッキー君は平民。公爵家嫡男のメルト君よりも強かったとしてもそれを証明する場なんか現れる事なんかない。普通ならね。だけど丁度いいイベントが実はある。」


「本当ですか!?」


「ああ実は半年先にはなるんだが王都で3年に一度の王国武道会が開かれる。今年は剣聖が現れてから初めての武道会だから剣聖が参加するって大きな噂になっている。」


「それって・・・。」


「ああ。メルト君はこの王国武道会に剣聖として出場する。これにラッキー君も出場すれば、メルト君と直接戦う事はできる。大観衆の前でラッキー君とメルト君が闘う。ラッキー君は追放されたとは言え元々公爵家の実子だ。ラッキー君がメルト君に勝てば、あの公爵なら再びラッキー君を公爵家に迎え入れる。なんて可能性もあるかもしれない。まあ一度追放した後に再び戻すなんて世間体も悪いから公爵がするかどうかはわからない。ホントごく小さな可能性だ。」


(王国武道会か・・・。父さんと一度観戦した事があるな。騎士団とか高ランクの冒険者とかも出場してたはずだ。そこに俺が出る・・・。勝てるのか?いや勝つしかないだろ・・・。俺のせいでマリアが苦しんでるんだ。まだ6か月もある。今から鍛えればなんとかなるだろ。)


「ユリウス様。俺、その王国武道会に出てみようかと思います。どこまでできるかわかりません。ただ・・・俺はマリアが苦しんでるなら助けてあげたい!」


「ラッキー様・・・。」


そうして、ラッキーはマリアの為に、3年に一度開かれる王国武道会への参加を決めるのだった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る