第10話 ラッキーを見守る神界と今の公爵家・・・

モンスターガチャを引くところをリアルタイムで見ていた神界のミラとマイは、


「ラッキーさん。おめでとう。」


「よかったわねミラ。これで素質が引き当てればいいんだけど・・・。」


「うん。」


モンスターガチャから出て来たのは下級ポーションだった。


「あちゃー。運が良いのはわかってたけど、ここで素質じゃなくてアイテムを引くかーーー。」


「・・・。でもラッキーさん喜んでる。」


「まあミラが昨日ラッキーに神託で【ゼンパン】の素質について伝えたのが大きいわね。あの顔は神託がウソじゃなかったって安心している顔だもの。」


「うん。でもモンスターガチャの中にもランクがあるのは知らなかった。」


「それは私も知らなかったわ。どういう設定になってるのかしら・・・」


今回ラッキーが使ったモンスターガチャスキルはFランクのモンスターガチャスキルだった。


これは討伐した魔物10体の平均ランクがFランクだった為だ。


素質を授けたミラ、姉のマイ共に、【ゼンパン】の素質については知らない事もあったのだった。


実際は10体の討伐のランクが上がると、当たりが出る確率と、当たる素質とアイテムのレア度が上がるのだが、この時のミラとマラはまだその事を知らなかった。


「わからない。私もモンスターガチャスキルは初めて見たから・・・」


「そうね。父さんに聞いて見るわ。」


「ありがとう姉さん。」


「まかせて。ミラとミラが見守るラッキーの為だもの。」


「うん。」


その後、モンスターガチャスキルを使ったラッキーは引き続いて、デイリーガチャスキルを使い、パンを出した。


「あちゃー。毎回毎回ドキドキするけど結局ハズレのパンなのね。」


「うん。」


「まあ安心しなさい。まだ素質をもらって1カ月でしょ。これからよ。」


ラッキーがギルドで報酬を受け取り、ウキウキ気分で宿に帰る姿を見て、ミラとマイの2人はラッキーを神界から応援するのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


一方、ラッキーを追放した公爵家では・・・


「やっと俺にも運が回ってきたな。剣聖の素質を手に入れたし、平民だった俺が公爵家の養子にまでなれた。しかも嫌いだったラッキーを追放してだ。」


メルトはラッキーが嫌いだった。


素質を得るまで、メルトは公爵家の小間使い・雑用係として働き、日々の生活を送っていた。特にラッキーになにかされたわけではないが、必死に働いてもその日ギリギリ生きる事しかできなかったメルトにとって、日々剣術や魔法の勉強をし、女性と仲良く話し、豪華な服を着るラッキーは嫉妬の対象になっていた。


「それにしてもラッキーのあの顔は今思い出しても傑作だったな。俺の日頃の頑張りを神様が見ていてくれたんだろうな。」


メルトは庭で毎日の日課である、素振りをしていた。すると・・・


「メルトよ。ここに居たのか?」

そう声を掛けたのはラッキーを追放し、メルトを養子にしたラッキーの父親、モルドー・ストライク公爵だ。


「はい父上。剣聖の素質を手に入れてから、剣術の鍛錬は日課になっていますので。」


「そうか。期待している。がんばれよ。」


「はい。それより父上?何か用があったのではないのですか?」


「おお。そうだった。今からお前の婚約者になる子爵家の子が家に来るのだ。メルトも会うのは初めてだろう?着替えとかあるから直接呼びにきたのだ。」


「婚約者!?本当ですか?」


「ああ。元々ラッキーの婚約者だったのだが、アイツはもう公爵家の人間ではないのでな。メルトと婚約する事で話をしていたのだ。」


(マジか!?ラッキーの婚約者だったって事はあの綺麗な人だよな~。マジか!!お~マジか!)


メルトはぶっくりと出ている腹をさすりながら、ニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべるのだった。


だが、メルトの噂は最悪だった。


元々太っていて、周りに傲慢な態度なメルトは、公爵家の使用人達からの評判が悪かった。


剣術の鍛錬もモルドーに、剣聖の素質をもらったからちゃんと鍛錬してますよ。というアピールの為だけなので、長時間訓練する事も本気で剣を振る事もしていなかったのだ。


そんなメルトは、剣聖という素質を得て、公爵家という権力を得て、子爵令嬢という婚約者を得て、傲慢な態度が更に増して行った。そして体もぶくぶくと太って行ったのだった。


一方、婚約者の顔合わせが終わって、子爵家に戻ってきた子爵家の令嬢、マリア・フロンダールは、


「お父様!婚約はどうしても受けないといけないんですか?ラッキー様ならともかくあのメルト様は・・・」


「うむ。マリアの言う事もわかる。公爵様はあのような者を養子に迎えて大丈夫なのだろうか・・・。どう見ても公爵家を継げる器には見えない。素質が残念だったとはいえラッキー君は良い少年だったのだが・・・」


「お父様・・・」


「すまないマリア。私は子爵、ストライク公爵家には逆らえない・・・」


「・・・。わかっております。ですが・・・」


「ああ。ラッキー君がもどってきてくれれば・・・もしかして」


「ラッキー様・・・」


ラッキーの婚約者だった、マリア・フロンダールはラッキーとの思い出を振り返りながら、今はどこにいるのか?と暗い表情で子爵家で過ごすのだった・・・

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