第89話 至らぬと知りながら(ジェームズside)
ぽつぽつと雨音が鳴り響く。現在は室内に一人きりだ。イアンたちは下がらせている。
全てを吐き出すかのように、深いため息を吐く。
分かっていた。自分が愚かだったことは。第一王子として、取るべき振る舞いではなかった。イアンにも苦言を呈されたし、タンザナイト寮生の視線がそれを物語っている。
僕は完全に間違えたのだ。
それでも、自分に何が選べただろう。
脳裏に浮かぶのは、まだ幼かった頃の彼女。
信じられないかもしれないけれど、どうか聞いてほしい。そう言って、僕に語られた未来の彼女の話。
彼女は言った。いつか自分は他者を虐げるかもしれない。そんな自分は僕に相応しくないから、身を退きたいのだと。
僕のために身を引きたい、そう告げる彼女の言葉に、心の隙間が埋められるのを感じた。
それまでは、誰も僕を必要とはしなかった。父である陛下も、僕を産んだ母ですらも。
母は言った。あの女の息子に玉座を取られてはならない、と。母にとって、僕の価値は玉座を取るための駒だった。腹違いの弟に玉座を取らせるなと、そう何度も繰り返していた。
僕は弟に会ったことはない。父が愛する女性から生まれた弟は、とても愛されていたのだ。僕らに会わせるつもりがないほどに、大切に守られているらしい。
父に愛され、優秀な才を持つ弟。僕とは異なり、王家の青を宿す祝福された身。
弟の話を聞いたとき、一番に芽生えた感情は困惑だった。
――正当な生まれでもないくせに
そう思ったのは、紛れもない事実だ。
だって、弟は不義の子だ。彼自身に罪はなくとも、婚外子であるのは事実。本来ならば、王子と名乗ることすら許されない存在だ。
なのに、王城の者は噂する。離宮で暮らす第二王子は素晴らしい。学問も剣の腕も、他の追随を許さぬほどの才を持つ神童だと。
『偽りの愛では、女神の寵愛は受けられぬようだ』
そんな言葉が、幼い僕の胸を切り裂いた。言われなくとも、それが僕に向けられたものであることは理解した。
神に認められず、親にも愛されず、腹違いの弟に劣る欠陥品。スペアにもなれぬ紛い物。それが僕だった。
そんな僕を救ったのが、リジーだった。
玉座を取るための駒でもなければ、王家の欠陥品としてでもない。ただ一人の人として、僕の幸せを願う言葉をかけてくれた。
その言葉を聞き、空のグラスへ水が注ぎこまれるように、空虚だった僕の心は満たされたのだ。
だからこそ、幼い僕は彼女を愛し抜くと決めた。救ってくれた彼女に、僕が返せるのは愛しかなかった。
僕だって分かっているのだ。自身が王位を継げぬことくらい。母が諦めていないのが不思議なほどに。
王家の青を持たず、弟に実力すら敵わない欠陥品。そんな自分が、玉座につけるはずもない。
父の愛が僕に向けられていたのなら、違ったかもしれないが。そんなもの欠片もなかった。
それが分かっているからこそ、彼女を愛し抜くことだけは誓ったのだ。王子妃にはなれても、王妃にはなれないだろう彼女。その彼女に手渡せるのは、僕の心しかなかった。
そんな愛する彼女だからこそ、守りたい。そう思っているけれど。
僕は天を仰ぎ、目元を手で覆う。
守り方を間違えたのか。例え、一度泣かせることになったとしても、彼女にあの場で話をさせるべきだったのか。
分からない。ただ一つ分かるのは、間違えたという事実だけ。
聖女の従者が問いかけた内容に、答え一つ出せず。周囲から見放された。
「殿下、おられますか?」
軽いノック音の後に、愛らしい声が響く。リジーだ。いつもならその訪問を嬉しく思うのに、今だけは自然に笑えない。
それでも、無視することはできなくて。無理に口角を上げて返事をした。
「失礼します」
入って来たのは、予想通りリジーだ。白いワンピースに身を包む彼女は、どこか不安げな表情を浮かべている。
無理もない。昨日は大変な事件が起きたのだから。
「ジェイミー……私は」
「こちらにおいで、リジー」
眉を寄せて苦しそうに呟く彼女に、優しく声をかける。もはや癖のようなものだった。彼女が不安を抱く度、それを拭うのは僕の役目だったから。
「私、私っ! 本当に、していないのです。彼女のケーキにナイフを仕込むなど……!」
「分かっているよ、リジー」
宥めるように彼女へ声をかける。疑ってなどいないと伝わるように。
事実、僕は彼女がシャーロット嬢を虐げたとは思っていない。
彼女は僕を救った心優しい女性だ。それに、幼い頃から言っていた。シャーロット嬢を虐げるつもりなどないと。
「ですが……皆、私を疑っているのです」
その言葉に、僕はピタリと口を閉ざす。
そう、そこが何より問題だった。ケーキの件はともかく、彼女がシャーロット嬢を疎んでいるという疑いが広まっている。
事実、お茶会でちょっとした諍いはあったけれど。
しかし、リジーにシャーロット嬢への悪意はないはずだ。
貴族令嬢が魔獣騒ぎを怖がるのは当然のこと。言い方に問題はあったかもしれないが、大なり小なり皆恐怖を覚えていただろう。
シャーロット嬢だって、恐ろしいと言っていたではないか。
今回の件は、言い方が悪かった。それだけのはず。はず、なのだ。
「リジー、大丈夫さ。君がシャーロット嬢を虐げるわけがない。
だって君は、そんなことはしないと昔から宣言していただろう?」
「……もちろんです。そんな酷いことできるはずがありません」
わずかな間が空いて、彼女が僕の問いに答える。言葉がつっかえるほどに、彼女の心は傷ついているようだ。
彼女の優しさは、僕が誰より知っている。僕の幸福を願い、自ら身を引こうとした彼女。優しさが無ければ、そんなことできるはずもない。
貴族女性であれば、より良い結婚を望むのが普通だ。例え欠陥品の王子でも、王族であることには変わりないのだから。
「リジー。今はハリス女史の指揮で調査が進められている。そこに私事が介入する余地はないだろう。きっと、君の無実は証明される」
僕の言葉に、彼女は静かに頷く。その表情はわずかに緩んでいた。少しは安心できたようだ。
このまま、無事に疑いが晴れると良い。そう願いながら、僕はゆっくりと彼女の髪に指を通した。
そのときだ。
室内に再びノック音が響く。リジー以外に、訪ねてくる者など思い当たらないのだが。
とはいえ、用事もなく訪ねるはずもない。彼女の髪から手を放し、扉の外へ声をかけた。
「失礼。殿下、少々お時間をいただきたい」
驚くべき声に目を見開く。名乗られなくても、誰なのかすぐに分かった。
「お父様……?」
そう、愛する婚約者の父。ユースタス・ハワード・コードウェルその人なのだから。
「ああ、入ってくれ」
僕の声に、扉がゆっくりと開かれる。予想通り、扉の先には公爵の姿があった。
「やはりここにいたのか、ブリジット」
「お父様、どうして……?」
「……変わらないな、お前は」
そう告げる公爵の顔に、笑顔はない。情といったものが滲む様子もない。
この瞳は、嫌というほど知っている。僕を見る父の瞳と同じだ。
「公爵。僕に話があったのでは?」
リジーにそんな瞳を見せるわけにはいかず、僕は話を促した。
心優しいリジーは、あの瞳がどんなものか分かっていないのだろう。知らずにいられるのなら、その方がいい。僕は彼女の父親にはなれず、婚約者としての愛しか注げないのだから。
だからせめて、親に愛されていない事実を彼女が知らずに済むように。僕は彼女の目を塞ぐのだ。自分のような苦しみを、彼女が抱える必要はない。
「リジー、すまないが席を外してくれないか」
公爵がわざわざ来たんだ、重要な話だろう。そう告げる僕に、リジーは心配そうな表情を浮かべる。
しかし、そんな言葉は無意味となってしまった。公爵が制止の声を上げたからだ。
「気遣いは無用です、殿下。娘もコードウェル公爵家の人間。話一つできぬほどではないでしょう」
「公爵……」
言外にこう言いたいらしい。「話一つできぬほど、愚かなのか」と。
ここから彼女を遠ざければ、公爵の彼女を見る目はより厳しくなるだろう。
しかし、話の内容によっては、より厳しい評価を受けるかもしれない。
「ブリジット、お前はどうするのだ」
悩んでいる僕をよそに、公爵はそう問いかける。自分のことは自分で決めなさい、彼は彼女にそう迫った。
ああ、そんな風に言われれば、彼女が何と返すか分かっているだろうに。
「是非、ご一緒させてください」
その言葉は、僕の予想通りの答えだった。彼女が望むのなら、そうするしかないのだろうけれど。
彼女は、この男と渡り合うだけのずる賢さを持っていないのだ。
どこまでも冷徹で、貴族然とした男。抜け目ない人間を相手にするには、リジーはあまりに純粋過ぎる。
「娘はこう申しております。よろしいですね?」
「……ああ。彼女が望むのならば」
そう返す僕に、公爵は静かに頷く。自分の思い通りになったというのに、満足そうな雰囲気は微塵もない。想定内の結果だったのか。
「では、いくつかお尋ねしましょう。ブリジット、お前もだ。噓偽りなく答えるように」
二度は言わない。そう言い渡す声は、恐ろしいほどに冷ややかだ。
やはり、この男はリジーへ愛情など持ち合わせていないのか。家の益になるか否か、それだけの興味しかないのだろう。
「昨日催された茶会で、聖女への嫌がらせが発生したと聞いております。間違いありませんね?」
「ああ、事実だ」
公爵の問いに、僕は静かに答える。予想はしていたが、やはりこの話題か。
今回の件は、コードウェル公爵家としても無関係ではない。黙っているはずもなかった。
「今回問題に上がっているのは、三点です」
「……三点?」
思いがけぬ言葉に、僕は眉を寄せる。僕が知る限り二点のはずだが。もう一つ問題があったのだろうか。
公爵は僕から視線を外し、リジーへと目を向ける。
とはいえ、それも一瞬のこと。単なる確認だったのだろうか。すぐに僕へ視線を戻し、口を開いた。
「そうです。一つは、当家で作ったケーキにナイフの刃が混入されていたこと。こちら、事実と相違ございませんか?」
「そのとおりだ。幸い、すぐに従者が気づいたため怪我はなかった」
そう返すと、公爵は静かに頷く。彼が把握していた内容と変わりなかったようだ。
「次にブリジット、お前の話だ。お前は聖女と口論になったそうだが、身に覚えはあるな?」
「それは……っ」
「言い訳はいらん。あるかないかで答えろ」
冷たく切り捨てる姿は、取り付く島もない。リジーはそんな彼に恐怖を覚えたのだろう。「わ、たしは……」と涙混じりの声がした。
到底見ていることができず、僕は口を開いた。
「失礼、公爵。その件は事実だ。リジーの発言に問題があったのは、否定できない」
「ジェイミー……!」
リジーが悲痛そうな声を上げる。僕に言わせたことを悔いているのだろうか。こちらを見る瞳が涙で揺れていた。
たしかに、彼女はミスを犯したけれど。威圧的な相手の前で、それを語らせるのはあまりにも不憫だ。
「つまり、我が娘が聖女に非礼を働いたと?」
「そうだね。とはいえ、ちょっとした誤解によるものだろう」
「……ほう? 詳細をお聞かせ願えますか?」
男の瞳がきらりと光る。娘の非が思ったより酷くなさそうだと感じたからか。内心で安堵しているのかもしれない。
「ベント子爵領の件で、少々口論になってね。リジーに非があったのは事実だが、あれは言い方が悪かっただけだ」
「言い方が、ですか」
「そうだ。魔獣騒ぎを恐ろしく思うのは当然だろう? ましてや、実際に死者が出たという。恐怖を覚えるのは無理もないさ。
誤解を招く言い方をしたことは悪かったが、言い方さえ違えばシャーロット嬢も怒りはしなかっただろう」
当のシャーロット嬢だって、恐ろしいと言っていたのだから。そう告げる僕に、公爵は口を開いた。
「殿下は、娘の言い方の問題だと?」
「シャーロット嬢を揶揄するように聞こえたことが原因だろう?」
「いいえ、それは違うでしょう」
はっきりと否定する公爵に、目を見開く。僕は何か見落としているのだろうか。
「言い方の問題ではなく、娘の言動そのものに問題があるのです」
恐怖心を抱くことは当然でも、世の中には言っていいことと悪いことがある。そう語る公爵に、僕の胸が締め付けられた。
奇しくもそれは、僕が昨日、聖女の従者へ言い放った言葉だった。
「たしかに、娘の言葉は聖女を揶揄したと聞こえる発言です。死体が転がっていても動ける薄気味悪い人間。そう揶揄したと言われても過言ではない」
公爵の言う通りだ。リジーがそんな酷いことを言うはずがないけれど、彼女をよく知らない人間が聞けば、そう思うのも無理はない。
リジーは幼い頃から妃教育に時間を取られ、特定の人間としか関わりが無かった。
それゆえに、人と上手く接することができず、誤解を招いたのではないか。
「とはいえ、聖女が揶揄されたこと自体に怒ったとは思えません。
殿下。この先は、あなたより長く生きた一人の人間として話をします」
そう告げる公爵の瞳は、今までと異なっていた。彼は僕に関心など無かったはずなのに。
今の彼は、僕という一人の人間をその瞳に映している。
「ベント子爵領の状況は酷かった。領主は病床に臥し、伯爵家から見放され、国の救援もない。そんな中、長年苦しみ抜いた土地です」
滔々と語る声は、厳しくも穏やかだ。突き放すのではなく、諭すように語りかけてくる。
「直近の襲撃は悲惨でした。民は死に、民家が燃やされ、自警団に負傷者が出るほどの被害です」
そうだ。王城でも酷い事件だったと噂になっていた。悲鳴が街に響き渡り、凄惨な光景が広がっていたという。
「それを食い止めたのが、聖女でした。殿下と変わらない歳の少女です。もちろん、従者や騎士は側にいたでしょう。
ですが、十分な数の人員はいなかった。それゆえに、彼女は最前線に立ち、戦った。
自分の背に、無辜の民がいると知っているからこそ。引き下がれぬと立ち続けたのです」
「――、」
公爵の言葉に、僕は息をのむ。言葉を返す余裕すらなかった。勇敢な聖女、漠然とそう思っていたけれど。
それは、どれほどの覚悟が必要だっただろう。彼女が敗れれば、民の命は失われる。人の命を背負うなど、誰にでもできることではない。
凄惨な光景が、彼女を奮い立たせたのか。大の男でも躊躇うような覚悟を、彼女に決めさせたのか。
「さて、先ほどの話に戻りましょう。
なぜ、聖女が怒りを覚えたのか。自身を揶揄したことでないのなら、何を許し難く思ったのか。それは、ただ一つです」
公爵の言葉に、僕の背に冷や汗が滑り落ちる。僕が見落としたもの、その存在に薄々気づき始めていた。
「自身を揶揄するために、あの惨劇を利用した。そう感じたからこそ、怒りを覚えたのでしょう」
公爵の言葉が、ストンと心の中へ落ちていく。
ああ、そうか。それは道理だと腑に落ちた。
彼女が怒るのは当然だった。いや、揶揄された時点で怒っても仕方のないことだけれど。
彼女は自分のためではなく、苦しみ抜いた民を思い、それを利用する醜悪さに怒りを覚えたのか。
そう思わせる振る舞いをしたリジーに、彼女は怒ったのだ。あの惨劇を誰より見ていた彼女が、許せないのは当然だった。
「……それは、怒られても仕方がないな。気づけなかった僕に対しても」
不甲斐ない、そう呟いて前髪をぐしゃりと握った。
シャーロット嬢は、僕をどう思っただろうか。婚約者を御すこともできず、王族として適切な対応もできなかった僕を。
聖女という我が国唯一の重責を担う彼女は、僕よりずっと冷静だ。
きっと、僕が気付かなかっただけで、今までも不快感を覚えていたのかもしれない。僕は人の心情を察する能力に欠けているようだ。そんな視野の狭い僕より、彼女は多くのものが見えていることだろう。
「リジー、一緒に謝りに行こう」
「……ジェイミー?」
僕の言葉に、リジーは目を見開く。僕から提案されると思わなかったのだろうか。驚く彼女に、何とか微笑みかける。
「君だけでなく、僕も同罪だ。あの場で、君の非礼を詫びなかった時点で。だから君一人が謝罪する必要はない。
共にシャーロット嬢へ謝罪をしよう。彼女は冷静な女性だ。誠心誠意謝れば、きっと耳を傾けてくれるさ」
呆れられるかもしれないけどね。そう呟く僕に、彼女は俯いて拳を握る。
リジーは今、混乱の只中にいるのだろう。彼女はとても優しい人だから、誰かと喧嘩などしたことがないはずだ。僕らの輪にいても、いつも穏やかに微笑んでいた。
こんな風に誰かとすれ違うのは、初めての経験に違いない。
だからこそ、一緒に謝りに行こう。彼女の足が竦むなら、支えるのが僕の役目だ。何もかも、一人で頑張る必要はない。
そう考える僕をよそに、公爵が何事か呟く。その内容は聞き取れなかったが、聞き返す気にはならなかった。僕を見る瞳が、穏やかだったから。
「お話をお聞かせいただきありがとうございました。私はこれで失礼するとしましょう」
「え? まだ二つしか話をしていないが?」
腰を上げる公爵に、慌てて声をかける。彼は首を横へ振り、静かに口を開いた。
「いえ、もう十分理解出来ましたから。後は、今後の調査で判明するでしょう」
そう言うと、公爵はリジーへ視線を向ける。その瞳が、再び冷え切ったものへと変化した。僕へ向けていた瞳との大きな差に、一人息をのむ。
「ブリジット。いい加減、現実を見なさい。私がお前に伝える、最初で最後の忠告だ」
殿下に感謝しろ。その言葉は、彼女のために告げたわけではないことを物語っている。僕の顔を立てて、彼女へ忠告したのだろうか。
公爵は僕の父に似ている。我が子へ向ける瞳の冷たさはそっくりだ。
父と同じように、我が子と関わりを持つことがなかったのかもしれない。それならば、今日初めて娘を叱ったと言われても納得がいく。
最後のと付けたのは、何度も忠告を受ける真似をするなという釘刺しだろうか。
リジーは口を開かなかった。俯いたまま、拳を握りしめている。
もしかしたら、混乱ゆえに動けないのかもしれない。自身の言動がどのような誤解を与えたのか、それを知って。
優しい彼女には、衝撃が強すぎたのだろう。
「……では、失礼致します殿下」
「ああ、わざわざ足を運んでくれてありがとう」
そう返す僕に、公爵は一度目を丸めた。すぐに表情は戻ったけれど、今日の彼は驚くほど表情豊かだったと思う。
扉の閉まる音が響く。僕は深く息を吐き、覚悟を決めた。
このままではいけない。取り返しがつかなくなる前に、動かなくては。今ならまだ間に合うはずだ。
リジーは心優しい女性だ、いつか皆の誤解も解けるはず。そんな未来のために、まずは謝罪から始めよう。
俯く彼女の表情は見えないけれど。
僕を救った彼女は、心の美しい女性だから。
きっと二人で正しい道を歩めるはず。そう思い、僕はゆっくりと瞼を閉じた。
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