第1話 旅の騎士

 心地よい風を感じた。

 暖かな日差しが、肌をくすぐるのを感じる。

 そんな優しい陽気の中、街道を一頭の馬に騎乗した少女がいた。

 肩まで伸びた美しい金髪に、青い瞳。

 整った顔立ちをしてはいたが、どことなく幼さを残してもいた為、年齢よりも若く見えた。

 少女の名はライア・エルスリード。

 18歳の少女だ。

 遠征用の甲冑に身を包み、腰にはロングソードを携えている。

 ライアは、これからある場所へと向かっていた。

 目的地は、辺境にある小さな宿場町である。

 その町は、山間にあるため交通の便が悪く、あまり大きな町ではない。

 だが、温泉が有名であり、湯治場として栄えていた。

 そして、その温泉地へ来る理由は一つしかない。

 長旅の癒やし。

 彼女は騎士団に所属する一員だ。

 王都を守る近衛騎士団。

 その第四騎士団に所属している。

 第四騎士団の主な任務は、国境警備や要人の護衛などであった。

 だが、ライアはまだ騎士として任務にはついていなかった。騎士として国を旅する遊歴の身なのだ。

 国を旅することで自身の見聞を広げると共に、魔物や無法者などの危険から人々を守る武者修業の旅でもあるのだ。

 各地に住む騎士を頼り逗留するのが常ではあるが、時には村を訪ねては村人共に仕事を手伝いながら寝泊まりすることもある。

 そんな時は、決まって子供達がライアを取り囲んだ。

 騎士という存在に憧れる子供が多いのか、いつも大歓迎される。

 特に、男の子達は目を輝かせて握手を求めてきたりもした。

 女の子達からも、美しい女騎士の存在に黄色い声援を受けることもある。

 特に子供達が好きなのは武勇伝だ。

 自分が倒した強敵の話をし、危険な場所での冒険譚を語ると子供達は夢中になる。

 時には、ライアの冒険話しを聞いた吟遊詩人が、騎士物語を歌ってくれたこともある。

 ライアにとって、それは嬉しくもあり楽しみの一つでもあった。

 そして、先日もまた、子供達に囲まれてしまったばかりだった。夜もふけ親達が迎えに来ても、子供達はライアの話を聞きたいと駄々をこねる。

 騎士様を疲れさせてはいけません。

 そう言ってくれる母親達に申し訳なく思いながら、帰っていく子供達の後ろ姿を見送る。

 あの子達が安心して暮らしていけるよう、国を守れるようにならなくては……。

 そんな想いを抱きつつ、ライアは馬を歩ませていった。

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