巫女は呪いに好かれている

シエロ* Lv.15

第1話 巫女の少女

すずめの鳴き声に、私は目を覚ました。


布団から出て、窓のカーテンを開けた。


春のあたたかい日の光が、部屋に入り込む。



「私ももう、中学生か……。」


窓から見える桜に向かって、私は小さく呟いた。


もう、入学してから数週間くらい経つんだな……


しずくや、朝ご飯できたから食べなさい。」


「あ、はーい!」



おばあちゃんに呼ばれて、私は朝ご飯を食べることにした。


「ねぇおばあちゃん、ここの神社って、やっぱり私が継がなきゃだよね?」


「そんなの当たり前だよ。母親が入院してるんじゃ、娘の雫が桜葉さくらば神社を継ぐことになるからねぇ。」


「それに、あんたの霊力は生まれつき強い。霊力が強いほど、巫女の仕事にも向いているからねぇ。」


「っ……!」


「おばあちゃん、霊力のことは言わないでって、私前から言ってるでしょ!お願いだから、言わないでよ……」


霊力が強いから、私は巫女の仕事に向いている。

おばあちゃんはよく、私にそう言っていった。


でも、私はそれをよく思っていない。いや、むしろ嫌なのだ。


もちろん、神社を継ぎたくないから、と言う理由ではない。むしろ神社のほうは継ごうと考えている。





霊力が強いのが嫌な理由は……





霊力が強いと、見たくないものが見えたり、聞こえたり、わかってしまうからだ。






桜葉の血を継いでいるから、こういうことが起こってもおかしくない。だからそういった時の対処法は知っている。


まぁ対処法と言っても、「霊力のせいで見たり聞こえたりしていることを、幽霊に気づかせないようにする」みたいなことなんだけどね。


それでも気づかれることは数回あったけど、その時はおばあちゃんが助けてくれた。



でもそのおかげで、私はここまで生きて来れた。



「あぁ、そうだったね、ごめんね雫。」


「……私の方こそごめん、ついカッとなっちゃって……」


「気にしなくていいよ。それよりも、中学校生活、楽しんできなさいよ。」


「でも、もしも怪しい雰囲気の人がいたら気をつけることね。中学生あたりからはそういった人も出てくるからねぇ……」


「……うん。」



玄関で靴を履き、扉に手をかける。


「よし、おばあちゃん、行ってきます!」


「行ってらっしゃい、気をつけるんだよ。」



学校までの通学路を歩いていると、


「おっはよー、雫!」


夢明ゆあちゃん!おはよー。」


入学式の日に仲良くなった夢明ちゃんと会った。


「入学して間もないけど、大丈夫?誰かにいじめられたりしてない?」


「もー、夢明ちゃん過保護すぎだよw」


それからも他愛のない会話をしながら夢明ちゃんと通学路を歩いていた。


だけどさ……


私の勘違いなのかもしれないけど……




背後から、邪気を感じる。



「ん、雫?どうかした?」


「え?あぁ……いや、何でもないよ。」



夢明ちゃんを心配させたくないな。


そうだ、きっと私の勘違いだよ。


私はまた、通学路を歩き始めた。




夢明ちゃんとはクラスは同じだけど、席は離れている。


もうすぐホームルームが始まるから、私たちは席についた。



その時。



一人の少年が、私の隣の席に座った。


私はそれに驚いた。


この席は、入学式の日から今日までずっと空席だったから、いきなり人が座ったことに驚いたのだ。



でも、それだけじゃない。



今、ここではっきりした。


さっきのは勘違いなんかじゃないんだ。


さっきの邪気は、この人から発せられていたんだ。



しばらくして、ホームルームが終わった



どうしよう……



どうすればいいか分からない……



怖い……



さっきからずっと、そればっかり考えている。



私は少し怯えながら、授業を受けた。







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