山が鳴く。 〜プロポーズしようとしたら滑落した……〜

夜月心音

プロローグ

「こんなに、天気が崩れるなんて……」


 俺たちは絶句していた。

 数時間ほど前から、こんな調子でなにからなにまで、希望が見えなくなっていた。それでも、こんなに頑張れるのは——。


「まだ大丈夫です。だから、頑張りましょう……」


 隣にいる奴——真鍋由花まなべゆいかが言う。俺ははあっとため息をつきつつ、少しだけ真鍋が憎らしくなったがそんなこと思ったって仕方ない。あの有名登山家だって言ってたじゃないか。雪山で感情まで乱してはいけないと。ピンチの時こそ人のことを考えて思っていたと。


 そんなこと思いながら、数時間前までいたメンバーのことを考えた。

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