ACT.5 森本ひさ子


 あらすじ

 虎美、覚、ひさ子は麻生北高校に登校する。

 放課後、部活を始めると、ひさ子がチラシを拾ってくる。

 その内容は自動車のスプリントレースであり、3人は参加すると決めた。

 下校後、この部に部長がいないのを見て、箱石峠で部長決定戦を開催することとなった。

 まずは虎美とひさ子が勝負する。



 加藤虎美(Z16A)



 vs



 森本ひさ子(BG8Z)



 コース:箱石峠往路



 最初のロングストレートを抜けて、緩い左からのS字に入る。

 ここで両者ともにオーラを纏う。

 ファミリアが赤色で、GTOが茶色だ。



「<ファイヤー・ボール>!」



「肥後虎ノ矛流<落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>!」



 ファミリアは火の玉のようなドリフトで、GTOはケツ侵入のドリフトで攻めていく!

 ひさちゃんも中々だったが、ここでの勝負はうちが制し、2台の距離は接触寸前になる。



「くッ……!」



 その技で縮められたひさちゃんは、肉食獣に狙われる小動物のような弱々しい顔になっていき、一瞬だけファミリアを失速させる。

 


<落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>は岩属性の技であり、火/雷属性の彼女には有利な技だ。

 そのため、速度は速くなっていると同時に彼女が受けた精神ダメージも大きくなっている。



 これはバトルにすごく影響が出そうだ。



「相手はパワーのあるGTOばってん、こんまま離してやらんと」



「なんか、大竹より弱そうやと感じるばい……」



 接触寸前まで縮めたことでそう感じた。

 8ヶ月前に遭遇した彼よりオーラが弱く見える。



 スタート地点。

 私はかなさんと会話していた。



「ヒサコンはどんな走り屋なんだ?」



「悪くない走り屋ですよ、ただ……」



「何だ?」



「問題点があります……肝心な所で力を発揮できないことです」



 それが起きなければ負けないかもしれないけど。



 視点をバトルに戻そう。

 S字後の直線を通って、緩い左ヘアピンに入る。

 うちはファミリアを狙う。



「ひさちゃんは大した奴ではなか。追い抜いてやるばい!」



 銀のオーラを纏い、技を発動させる。



「肥後虎ノ矛流<片鎌槍>!」



 槍を振り回すようなドリフトで攻めていく!



 しかし!



「いつもより遅か……」

 


 速度が乗らなかった。

 原因はうちとひさちゃんの属性にある。

<片鎌槍>は鉄属性の技であり、彼女の雷/火属性とは相性が良くなく、いつもより遅くなっている。



 一方のファミリアは黄色のオーラを纏う。



「虎ちゃんば離したる! 儀の蛍流<スライディング・ハンマー>!」



 ハンマーを振るうかのようなドリフトで攻めていき、うちとGTOを離していく。



「うわぁ! やるな……ひさちゃん。簡単には抜かさんちゅうこつか……」



 うちには電気のハンマーで叩かれたような痛みを感じる。

 さらに、今のうちは鉄属性なので、雷属性であるこの技の威力が上がっている。



 この後は緩いS字を通る。

 引き離された距離はパワーで縮めた。



 クルマ半分の差となった2台は右ヘアピンに突入する。



「さっき大技ば使ったから、しばらくは使えんばってん。それば使わず抜いたる」



 先に攻めるファミリアよりも内側をつき、その前へ出ようとした。



「行かさんと! 儀の蛍流<儀太夫の装甲>!」



 だが、銀のオーラを纏ったファミリアがうちのGTOに負けないほど、コーナーの内側を猛スピードで走っていく!



「次こそで仕掛けるばい」



 ここを抜けると、直線を通った後に左ヘアピンに遭遇する。

 入った途端、相性で不利だけど<片鎌槍>を使おうとした。



「何、使えん?」



 銀のオーラが発生しなかった。

 なぜだ?



「わしの技、<儀太夫の装甲>は近くにおる後ろの相手に対して、技ば封印する効果ば持つばい!」



 その技の影響だったのか!



「わしをいじめから守ってくれた虎ちゃんに勝ったかも……」


 

 うちの追い抜きを防いだひさちゃんは勝利を確信する。

 しかし、それが命取りになるだろう。



 <片鎌槍>は封印されているから、別の技で攻めることにする。



「ひさちゃんに有利な技で勝負すっばい」


 

 <落ちてくる虎(メテオ・タイガー)>を喰らってファミリアが失速する姿と<片鎌槍>の速度が乗らなかったころを思い出した。



 オレンジのオーラを纏い、コーナーに入る直前にサイドブレーキを使った右ドリフトを披露し、それを維持したまま突入する。

 クルマの向きをコーナーと同じ左へ変える。



「肥後虎ノ矛流<キャノン・ドリフター>!」



 慣性ドリフトを発生させた。



「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」



「何、直ドリからの慣性ドリフト!?」



 ひさちゃんは今のドリフトに驚いているようだ。


 

 土属性であるその技はひさちゃんの覚醒技には有利だったため、速度は速くなっていく。

 異次元の走りをするGTOはファミリアのリードを奪う。



「先行を許してもた!」


 

 同時に技を喰らったファミリアは失速する。

 前へ出たGTOとの差はどんどん広がっていく。 



 その後にある右高速コーナーに入った辺りからひさちゃんの目に写る前のクルマはどんどん小さくなっていく。



「わしゃ、もう無理たい」



 ゴールまで追いつくことはなかった。



勝利:加藤虎美



 バトルが終わり、虎美のGTOと森本さんのファミリアがスタート時点に戻ってきた。

 2台からそれぞれのドライバーが降りてくる。



「2人ともお疲れさま……」



「ひさちゃんに勝ったばい」



「おめでとう、虎美。あなたが一歩リードよ」



 私は親友の勝利を祝う。



「参ったばい……やっぱ虎ちゃんには勝てんかった」



「何を言っているの、森本さん。次は私との勝負よ」



 勝って兜の緒締めよと言われているが、今の森本さんには負けてもそれを締めなければ行けない。


 

 次の勝負はすぐ始まる。

 私のSVXと森本さんのファミリアが並ぶ。



 引き続き、かなさんがスターターを務める。




 道の側に3人の少女がギャラリーしていた。

 それぞれ長い黒髪を1つに束ねた少女、青紫の長い髪をツーサイドアップに束ねた少女、胸まで伸びた金髪を三つ編みのお下げに眼鏡をかけた少女だ。



「バトルの気配がすっばい」



「ルリ子、面白そうばい!」



「けど、クルマはまだ来とらんよ」



 3人の身体からオーラが出る。

 並みの人物ではなさそうだ。



 覚醒技超人なのか?



 彼女たちは一体?



TheNextLap

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