第15話

後ろからの突然の衝撃に俺は前に倒れて床に手と膝をついた。


何事かと思い後ろを振り返ると生前の俺よりもデカそうな男の人が立っていた。


「ちょ、大丈夫か?前見てなくてというよりかは視界に入らなくて…とりあえずすまん」


そう言って男は俺の腕を引っ張りあげてひょいと立ち上がらせた。


この人の顔を見てハッとした。こいつは高木裕一郎(たかぎ ゆういちろう)、南城高校バスケ部の副部長だ。あんたはほんとに良い奴だよ~!!と妹が泣きながらゲーム画面のこいつに向かって叫んでたのを見た記憶がある。


画面の中では平面だったので気にもしてなかったが、俺が今小さいということもあって実際に会うとこんなにでかいのかとたまげてしまった。


「で、デカいなあんた」


「え?まあな、これだけが取り柄なんだ」


すると高木の後ろからひょこっと見知った顔が出てくる。その顔を見て俺は表情を歪ませた。


「やっほ~秋穂ちゃん。あからさま嫌そうな顔しないの~」


紫音だ。間にいる高木がこちらと紫音を交互にみて知り合いなのかと聞いてる。


「ほら高木も知ってるでしょ。この間の入学式の後の体育館練習が始まる前に、俺と陽華が話してた女の子」


「ああ、あの時の。なんでここにいるんだ?」


「あ、それはちょっと事情がありまして僕達がここに連れてきたんです」


かくかくしかじかと周りの女子達に噂されてることを手短に彼らに説明をした。すると俺の苦労を察してくれたのか高木は俺の肩に手をポンと置き、いつでもここで飯食って良いからなと涙ながらに言ってくれた。


「とまぁ、それじゃ俺はこれで。邪魔して悪かったな」


「ほな、また部活の時間に」


「ああ二人ともちょっと待って」


部室を出ていこうとすると陽華に呼び止められた。


「金本は次の練習試合出てもらうからそのつもりでいて、部室も今日からこっちを使ってもらって構わないよ」


「まじっすか」


「うん。そして秋穂も早めに入部届けを書いて顧問に提出してね」


「はいはいわかって…………はい?」


言ってる意味がわからずに顔がひきつる。


「ん?なるよね、男バスのマネージャー」


な、な、な、なにーーーー!!?!?!


思いがけないことを言われて俺は動揺しまくった。


「な、なるわけねぇだろ!!!!!」


陽華の有無を言わせないオーラに圧倒されつつも、負けじと大声で叫んで部室を飛び出した。



「あ、秋穂ちゃん~!」


「うるせぇ!!!!!」


「なんで?!!?!」



部室を出てすぐのところで海遠と会い声をかけられたがつい勢いでこんなことを言ってしまった。


金本と教室に戻り自分の席に座った。


「マネージャーやらんの?」


「やんねーよ」


金本の問いに即答した。


「そらぁ、残念」


他人にあまり興味なさそうな金本がわりと残念そうな声のトーンでそう言ってきたので少し申し訳なく感じた。







「い、今すぐそこで秋穂ちゃん達に会ったから声かけたんだけど、そしたらうるせぇってキレられた…どういうこと…」


「お前キメェし嫌われてんじゃねぇか」


「やっぱり相当海遠君のことがタイプじゃないんだと思います」


「彼女は相当苦労してるんだ、それくらい許してやれ」


「そういうのが秋穂ちゃんのいいところだよね~」


「そうだね、彼女はほんとに面白い」




「みんなもしかして俺のこと嫌い…???」






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