第9話

体育館に到着した途端、俺はすぐ帰ろうと思った。



体育館の入口にはびっちりと並んだ女子の群れ。マネージャー希望なのかただのギャラリーなのかわからないがとりあえず人が凄かった。もしこれが全員マネージャー希望なのだとしたらこれはもう選手一人一人にマンツーマンでマネージャーがつけるレベルだと思う。


別に部活なんていつでも見にこれるし、今日はもう帰ろうと決め来た道を戻ろうと振り返るとそこに陽華が立っていた。


「ひっ」


「やあ秋穂。先程ぶりだね」


突然の陽華の登場に反射的に悲鳴をあげてしまった。


「バスケ部見に来てくれたの?」


「あ、いや、その、今日は帰ろうかなと」


今朝の保健室の出来事があるのでやはり目を合わせずらいというか気まずい。


陽華の登場に入口にいた女子の大群が気づかない訳もなく色々なところから歓喜の声が聞こえてくる。それと同時になにあの女、紅君とどういう関係?というヒソヒソ声も聞こえてくる。


女って怖ぇと内心冷や汗ダラダラだった。極力目立つのは良くないと思い早くこの場を逃げ切る方法を頭をフル回転させて考えた。すると追い討ちをかけるように体育館の中から知ってる人の声が聞こえてくる。


「陽華~準備終わってるよ。あ、秋穂ちゃん見に来てくれたんだね~!」



終わったと思った。


「あれ、紫音とも知り合いなの?」


「い、いや全然知らないけど」


「え~酷いなぁ、一緒に登校した仲じゃない」


とりあえずお前は黙れと顔で訴えた。


先程の歓喜の声は消え、確実に全て俺へのヒソヒソ話に変わっていた。


「と、とりあえず今日は帰るんで!じゃ!」


俺は光の速さでその場から逃げた。




「紫音はあの子といつ知り合ったの?」


「今朝電車の中で痴漢されてたから助けたんだ~遅刻しそうだったからそのまま近道教えてあげたの。陽華はいつ知り合ったの?」


「俺は今朝保健室で彼女に会ったよ」


「「…」」


お互い目を合わせて察したのかその話をするのをやめることにした。




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