第8話
入学式が終わり、俺達はクラスに戻った。
俺の座席は一番廊下側の列の後ろから二番目、その後ろは先程の金本が座っている。
「なあなあ金本、前に俺とどこかで会ったことないか?」
「…自分一人称俺なん?まあええけど。いや、初対面やと思うけど。新しい口説き文句か」
「誰が口説くかばか」
そう言って金本の頭に軽くチョップをいれた。今日出会ったイケメンに共通して思うことはなんかどこかで会ったことがある気がするということなんだが、俺の気のせいなんだろうか。南城高校という名前もなんか違和感がある。
「冗談やて。てか俺高校からこっちに越してきたから絶対初対面やと思うで」
それを聞いて全ての違和感は俺の勘違いなんだと思った。だがそれにしてもなんで俺の体は女なんだとまた新たな疑問が浮かんできた。
そんなこんなで話をしていると先生が来たため前を向いた。
「それにしても小田さんちっちゃいから全然俺が寝るときの壁になれへんな」
その言葉にもう一度後ろを向いて先程よりも強く金本の頭にチョップをいれて前を向き直した。
「今日はこれで終わるぞ。明日からの時間割はプリントを見るように。今日から部活動の体験入部が始まっているので興味があれば各自行くように。入部届けも各自でその部活の顧問に渡しに行ってくれ、以上解散」
担任の先生は一節話し終わる度に鼻からズレる眼鏡をスチャっとあげるもんだからそれが気になって話が入って来なかった。眼鏡のサイズが合ってないのなら早く直しにいってほしいと思った。
「ほな小田さん、また明日」
「おー。あ、一応確認なんだが何部に入る予定なんだ?」
「俺?バスケ部やけど。なんなら今からいくつもりやし」
金本もバスケ部。やはりイケメンはバスケ部というのが相場なのだろうか。
「ふーんそっか、頑張って」
「おう」
今日はもう帰ろうと昇降口に向かってる途中自販機のある場所を見つけた。
「へーこんなところに自販機あんだ、知れて良かった」
小銭をいれていちご牛乳を押そうとした瞬間、後ろからピッとその隣の普通の牛乳を押されてしまった。違うボタンを押されてギョッとしていると聞いた事ある声ではいと牛乳を渡される。
「…し、紫音」
「あはは、また会ったね~」
今朝会った時と同じようににこにことしている。今朝と違うとこがあるとすれば服装が制服じゃなくなっていた。俺はその服装によく見覚えがあった。
「なあ、お前ってバスケ部?」
「朝は教えなかったもんね~、そうだよ」
紫音は自販機で水を買っていた。これで今日出会ったイケメンが全員バスケ部ということになる。たまたまだとは思うが。
「ほら今日入学式で体育館使えなかったからさっきまで筋トレと外周してたんだ~。もうすぐ体育館が片付くからこれから室内練習なんだよね」
「ふーん、つか俺いちご牛乳が飲みたかったんだけど」
仕方なく牛乳パックにストローを刺して飲んだ。
「じゃあ俺そろそろ戻るから、よければこの後バスケ部の練習見てってよ。部活終わったらその牛乳のお詫びさせて」
「…、気が向いたらな」
つれないな~またね~と言って紫音は行ってしまった。
バスケは好きだが内心少し複雑だ。悪いのは自分だとわかっているが、今またバスケを見たら虚しくなってしまいそうな気がした。
「うーん、どーすっかなぁ」
牛乳を飲み終えた俺は重い足取りだったがここの学校のバスケ部の実力を見たかったこともあり体育館に向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます