自衛隊に関するあれやこれや(短編集)

みかん

自衛隊の人手不足

自衛隊の人手不足が叫ばれるようになった昨今。職業としての自衛官のメリット・デメリットについて語るとともに今後について紹介していこうと思います。


まず初めに触れていきたいのが充足率です。

令和4年度防衛白書を紐解くと2022.3.31現在陸海空全自衛隊の充足率は定員247,154人に対して現員230,754人であり93.4%となっています。これは幹部から曹士まですべてひっくるめた数字です。

ではそれぞれはどうなのか。まず幹部ですが充足率は93.7%、准尉が95.1%、曹が98.4%で最後に士が79.8%となっています。

極端に士の充足率が低いように思えます。


これに関して私なりの考察をしていきます。なお、海上自衛隊ベースになります

まず幹部について。幹部へ至る道はいくつかあります。まずは一般幹部候補生課程、いわゆるA幹と言って防大や一般大卒の人たちが幹部として入隊する道です。(防大は正しくないかもしれませんがここではあえて入隊としています。)

次に飛行幹部候補生課程、いわゆる飛幹と言ったりします。この飛幹は入隊時は士ですが確実に幹部になることができます。次に部内課程、若手の海曹が部内選抜試験を経て入校する課程です。いわゆるB幹です。そして最後に予定者課程、ベテランの曹長などが入校する課程です。いわゆるC幹です。

上記のようにいくつもの経路で幹部になることができます。ここで注目したいのが一般幹部候補生課程以外の課程です。彼らは准尉または曹から幹部になる、つまりは繰り上がります。

その結果、准尉や曹の数が少なくなっていきます。

では次に准尉についてです。

そもそも准尉とはどういった階級なのか。ご存知でない方もいると思います。なのでまずはその役割についてお話したいと思います。

公式がシンプルに説明していたので引用します。防衛省・自衛隊「自衛官の階級」より引用。3尉以上の幹部自衛官と曹の間の階級で、曹士隊員をまとめて指導し、幹部の補佐を行います。先任伍長・先任海曹が士官室と曹士のつなぎ役という感じですが准尉はさらに幹部としての勤務も求められるようになったという形です。具体的には副直士官も行いますし、部隊によっては分隊士も務めます。准尉の役割としては以上になります。

ではその准尉になるのはどういう人達かというと、まず誰もが望めばなれるものではありません。おそらくですが大体の准尉の人たちは先任伍長経験者やそれに準じるような優秀な海曹たちです。少なくとも曹長まで昇任することが必要と言えます。准尉の充足率は95.1%となっていますがその割合は定員4,927人に対して現員4,687人となっています。幹部の定員46,357人に対して現員43,421人と比較するとそもそも母数が違います。これは曹士を主体とする組織構成のピラミッドでは准尉が頂点に来ると考えれば自然なことと理解することができます。求められる役割はあれどそこまで多くの配置で求められているというわけではないということでしょう。少々脱線しましたが結論から言うと准尉は海曹から選抜されるということです。

次に海曹。

海曹になるには主に2つの経路があります。一般曹候補生と自衛官候補生です。その他にもありますがメインとしてはこの2つで厳密には一般曹候補生だけとも言えます。理由についてはこの場では割愛します。

そしてその一般曹候補生ですが入隊時の階級は士になります。士として勤務を続け最短で2年9ヶ月で3曹に昇任できるようになります。昇任についてはよほど不真面目に働くか服務事故を起こさなければ大丈夫でしょう。このような形で海曹に関しても准尉と同様に下の階級つまりは士から繰り上がります。

もう私が何を言いたいかなんとなく察している人もいると思いますが次は士についてです。

士になる方法は主に2つ。一般曹候補生と自衛官候補生です。海曹のときにも言及しましたが一般曹候補生であればよほどのことがなければ海曹に昇任できます。では自衛官候補生はどうなのか。任期制自衛官と言ったりしますが意味はそのまま自衛官としての任期が決まっている制度のことです。おおよそ一任期2年となっており任期満了のタイミングで退職か継続か選択します。継続を選択すればそのまま任期制自衛官として勤務し続けられますが、いつまでもとは行きません。それでも自衛隊で働き続けたい、というのであれば海曹への選抜試験を受験するか対象年齢のうちに幹部候補生の試験を受験する必要が出てきます。

このようにして士という階級にずっと居続けることは制度上できなくなっているのです。

長くなりましたが士が極端に充足率が低い理由として上記のように流動性が高い階級であるからだと言えます。海曹や准尉は言葉は悪いですが士がいる限りある程度の補充は見込めます。幹部に関しても部内の選抜や幹部候補生の受験者がいるのと、比較的定数が少ないので人手不足は表面化していません。

しかし士は違います。流動性の高さと定数の多さ、更には受験者の減少などにより問題が表面化しており今後も続いていくことが予想されます。

これらのことから自衛隊の人手不足は士をメインに対応していく必要があると考えます。

近年テレビなどのメディアでも取り上げられることの増えた自衛隊ですが、いかんせん幹部候補生学校や艦艇や航空部隊が特集されがちです。幹部の志望者を増やすのも重要ですが現場の要となる士についても焦点を当てたアピールが必要になってくると言えるのではないでしょうか。


自衛隊の充足率に関する話は以上にしたいと思います。

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