月曜15時、タイムリープ
夜道
「疲れた……」
帰宅。
時計を見れば、既に夜、22時前。
アレから色々片付けたり、色々してから電車に乗って帰って――家に着いて。
□
詩織『ごめんなさい、遅くなりましたよね 大丈夫ですか?』
東町一『今帰ったところだよ そっちこそ色々あったのに大丈夫?』
詩織『全然平気です』
東町一『そうなんだ……』
□
「そうなんだ……(恐怖)」
これが全く嘘じゃないのが凄い。
聞いてると、俺が森林浴で寝ている時はずっと本を読んでいたらしいし。
片付けも俺の3倍ぐらいテキパキ動いてたからね。
自分が遅すぎるだけなんて言ってはいけない。
……あれだ、童話で出てくるめちゃくちゃ働き者の小人を思い出した(失礼)。
俺と別れるまで疲れる素振りを見せなかったが、実際全く疲れていないんだろう。
自分も体力を付けないと駄目だなと思いました(小並感)。
……最近サボってた鉄棒ガチるか……。
明日の初音さんとの集合時間は15時だからね。早起きする必要はないんだ。
思う存分回れるぞ (不審者情報)。
☆
「こわっ」
時刻は22時、夜の公園。
ポツンとある外灯が照らすその場所は、ホラーゲームでよくありそうな光景だ。
そしてまた、誰も居ないのがよりホラゲー感を増大させる。
徒歩3分だから最悪
まあこの髪色じゃお化けなんて出てこないだろうけど(フラグ)。
鉄棒してる奴に近付いたら危ないし来ないだろ蹴り飛ばすぞ(フラグ)。
……ヤバい、マジで怖くなってきた。
誰だよホラーゲームとか最初に考えたの……なんで金払って怖い経験してるんだ。
楽しいからだね(解決)。
「——っと」
もはや逆上がりは余裕になってしまった。
つまり別の技に挑戦の時。
まずは、手を交差させた状態で、足を鉄棒に掛けてぶら下がる。
そのまま足を抜き——
「……でき、た」
グルン。
半回転したら、『地球回り』の完成である。
……お、おいおい。1発で出来ちゃったぞ(興奮)。
俺天才かもしれない(逆上がりに1時間掛かった男)。
「……」
今なら。
《——「○○くんすごーい!!」——》
小学生の頃。
ウンドース・ゴクデキル君(名前忘却の為仮名)がやっていた技がある。
『グライダー』。またの名を『飛行機飛び』。
その名の通り鉄棒から飛び立つ技。
とにかく目立って、クラスメイトから注目されていたのを覚えている。
そんなテツボーメッチ・ャスゴイ君(
「……ふー」
息を整える。
動画で見たとおり、まずは鉄棒を腰の辺り持ってきて。
グルン――グルン。
勢いを付け、足裏を鉄棒の上へ!
……ヤバイ、めっちゃ怖い。
目線を下にやったまま固まる。
「…………」
そのまま多分三十秒ぐらい経った。
飛び込むだけだがそれが怖い。逆上がりの比ではない。
視界には、やけに高い地面。
「……いや……いける——っ」
今の俺は過去の俺じゃない!
そのまま、上から下にグルンと回って——飛び立つ!!
「お、おおっ……がっ!」
思っていたより飛んだ。
そして、迫る地面。
衝突。ゴロゴロと転がり、何とか受け身を取って――
「……君。あの時の鉄棒少年だね?」
その、背筋が冷えるような声。
あの時。
初めて、逆上がりを成功した時も聞こえたそれ。
「お勤めご苦労様です……」
目の前。
何時ぞやのお巡りさんが、すぐそこに立っていた。
……はい終わった(逮捕)。
「髪色変えた?」
「アッハイ」
☆
「はははっ学生の頃を思い出すなぁ!!」
「えぇ……(唖然)」
目の前。
その一番高い鉄棒にて、お巡りさんがグルングルン回っている。
「よっ——」
そして今。
なんと、鉄棒の上で倒立している。
……同じ人間かこの人。きかい人間(解説:器械と機械をかけた激ウマギャグ)かな。
「まっこんなもんだ。23時になる前には帰ること。良いね?」
「は、はい」
「言っておくが無茶な技はするなよ、こんな時間じゃ怪我しても誰も助けてくれないからな」
「分かりました……」
「じゃ、頑張れよ少年!」
「どうも……」
そしてそのまま帰っていった。
仕事中だよね? あの人。
……でも、悔しいがカッコ良かった。
子供の時、クラスで目立っていたのは間違いなくああいうタイプだった。
心の底では羨ましく思っていたんだろう。
そして早々に諦めて、自分には出来る訳ないと信じ込んだ。
「もうちょっと頑張ってればよかったな……」
逃げ込んだネットの海。
そこで掴んだ、よくある教訓。
『記憶は無いが、今貴方は人生をやり直す為に未来からやってきた。さあどうする?』。
そんなの答えは決まってる。
でも出来ないのが人間だ。いや――俺か。
「……帰ろ」
空を見上げて呟いて。
そんな台詞は、夜の公園に消えていく。
――前に。
「……じー……」
「!?」
「あはは。びっくりしすぎ〜」
スポーツウェアに見を包んだ彼女。
公園。あの日と同じように――初音さんが、俺の傍で立っていた。
☆
「……いやぁ、前みたいにおまわりさんから詰められると思ったら~」
「ははは……」
二人で、外灯が照らす夜道を歩く。
ちょっと距離離れてるけど。どうしたんだろうか。
「い、今汗かいてるから……。あんまり、近くこないで」
「了解です(こうそくいどう)」
どうも拙者はデリカシーゼロ男。
失敬!(ドヒューン)。
服装から察せよバカか?
「で、でもこんな遅くまで走ってるんだね」
「……明日試合でさ。居ても立っても居られない……みたいな?」
「なるほど」
そういえば彼女はバスケ部だったな。
部活……部活か。
そういえばそんなのあったね(生涯帰宅部)。
というか、だから集合時間遅めだったのか。
「うん。ごめんね、試合のせいで遊べる時間少なくなっちゃって」
「いやいや、誘ったのは俺だし」
「――ね。もし、良かったら、なんだけど……」
「?」
「あ、あの、さっきのおまわりさんみたいに……凄いことは、出来ないけど」
「え」
珍しくモジモジしてる初音さん。
何だ? やっぱり明日は駄目とか(絶望)。
諦めてアリさん捕まえに行きます……。
「よ、良かったら! 試合見に来ませんか……なんちゃって」
夜道、立ち止まる彼女に俺は振り返った。
次の返事は――もちろん決まっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます