『第三代星閃隊 総隊長』



「またのご来店をお待ちしております」

「は、はい……(疲労)」


「……もうちょっとだけ目に焼き付けていいですか」

「ど、どうぞ(助けてくれ)」


「ああ。月の灯に照らされるのもまた良い――」

「はいそこまで☆ バイバイー!」

「助かった」



流石魔王強い。

お洒落空間から抜け出し、柊さんと夜道を歩く。



「リオ、電車だけどとーまちは?」

「俺もです。駅まで一緒させて頂きます(敬語)」

「なんか堅いなぁ☆」

「モデルやってるなんて知らなかったんで……」

「とーまちもバイトしてるんじゃないの?」

「……うん。昔はやってたね」

「じゃあ一緒! 結局お金稼いでるのはお互い一緒でしょ☆」

「そういうものなのかな……」



ま、あのバイト(六時間延々とキュウリを機械にぶっこむ作業)の苦労はあるけど。

モデル様と比較すると……なんて。



「——ね。とーまちってさ」

「は、はい」



と思ったら、急に語気が強くなる。

珍しい——そう思った。



「あの日、なんでクラブに居たの」

「……っ、えっと。行きたくなって……」


「急になんで七色に髪染めたの」

「それは、まあ。染めたくなって……」


「この5月で、急に変わったね。とーまちって☆」

「……色々とあってね」



夜道。唐突なそれ。

いつもの軽い口調なのに、まるで拷問されているようだった。



「リオ、色んな人見てきたんだけどー☆ とーまちみたいなのは初めて見たなぁ☆」

「……それはどうも……」


「明らかに常人の変貌っぷりじゃないんだー☆」

「う、うん」


「なんか、言葉で表すの難しいんだけど——」



それは本当に。

全てを見透かされる様な。



「——いっぱいの人が、とーまちの中に居るみたい、的な?」

「!」



言葉が出ない。

そりゃ、俺が安価で色々してきた事は知らないだろうけど。


的を得ている。間違いなく。


「なんて! そんな心霊現象みたいな事ないか☆」

「……うん。俺はオカルトは信じない。理系だから(確固たる意思)」


「ふはははは! 確かにその髪じゃ幽霊は寄ってこないね☆」

「ははは、確かに」


「そーいや、とーまちご飯まだだよね?」

「まだですけど……」


「一緒に食べようよ☆」

「えっ」


「とーまちって家に家族居ないでしょ?」

「は、はい……(恐怖)」



【怖報】さっきから柊さんが怖すぎる件について(スレタイ)。







夜中21時、ファミレスにて。

柊さんと二人に席につき、紙に注文を書いて店員さんに渡して。


携帯画面を開いて、彼女から明日の集合場所を聞いていた。


「とーまちのプロ画デフォルトのままじゃん! ウける☆」

「……ま、まあね」


プロフィールのアイコンを見て笑う彼女。

だって変に画像入れると変な奴みたいになるし。友達との画像なんてないし(号泣)。


初期アイコンは開発者が考え抜いてデザインしたんだ、だからきっとソレは素晴らしいものなんだ。

きっとそうなんだ(逃避)。


んで、この柊さんのLIMEアイコン……自分の写真だよな? 眩しい(陰)。


「これが集合場所、あと一応お店ね!」

「ど……どうも」


「さっきから緊張しすぎじゃないー?」

「い、いや。合コンとか行った事ないから……」


この生涯で参加するモノとは思わなかったからな、合コンなんて。

そりゃあ心の準備ってものがあるよね(陰キャ)。



「——ま、明日のメンバーは全員高校生だから☆ みんな慣れてないよー」

「あっそうなんだ」

「ちょっと癖強いけど☆ 写真見る?」

「……お願いします」



可愛くデコられたその携帯。

その液晶に映し出されたのは——



「えっ」



……気のせいか?

この服、『唯我独尊』とか『一期一会』とか『卍最強卍』とか書いてるんだけど。

全員後ろ向いているから背中しか見えないし。マントみたいに長いこれ、一応学ランだよな。


変形してるんだけど。制服。ハリガネ? 明らかに構造がおかしい。

というか色も全部おかしくない? 真っ白なんだけど。


俺、ツッコミマシーンかよ(超越進化)。



「……いや、これ(理解)」

「バキバキのヤンキーだね☆」


「いやいやいや」

「大丈夫だよ、これ中学生の卒業写真だし☆ 今はみんな全然! ヤバいヤツらはしっかり“除外”にしたから」


「……(思考停止中)」

「ちなみに女の子も——」



ああ、嫌だ。見たくない。

でも目が勝手に——



『友へ捧ぐこの命 一生一度の人生を』

『我が行く道に 悔いは無し』

『令和最後の晴れ姿 今夜だけは騒ぎます』



……いやぁ良い詩だ。

できれば学ランにじゃなくて、紙の上に書いてほしかったですね(絶望)。


あれ? というか。



「夢咲さんは?」

「えっ苺? 居るじゃんここに☆」


「はい? ……あっ(発見)」

「どまんなか☆」



『第三代星閃隊 総隊長』

『夢咲 苺』



……真っ赤な学ランを身に纏った、今よりも少し背丈が小さい彼女。

紛れもなく——夢咲さんだった。背中しか見えないけど。


その風格は凄い。

俺より百倍ぐらい漢らしいんだけど何これ?

俺は女の子だった……?(吐)。



「昔の苺のチーム員? の合コンなんだよね☆ リオと苺は幹事!」

「……(未だに理解が追いつかない)」


「ふはははは、ごめんね? 実は結構リオも辛くてさ。とーまちが居てくれると心強いから☆」

「え」


「でも無理は言わないよ☆ 嫌なら行かなくても——」

「がんばります(単純)」


そんな事言われたら、ね? 

というか約束したのは俺だし。


やっぱり行きませんは通じない(行きたくないけど)。


「やたー☆」

「はは……(心配)」


「大丈夫大丈夫。とーまちがモテすぎたりしない限りは平気!」

「……じゃあ大丈夫か(安心)」


「後はまぁ、ナヨナヨしてたりすると突っ込みが入るかも」


突っ込み(パンチorキック)ではないですよね。

……最悪ニット帽被って……とか考えたけど。やめておこう。バレたらヤバい。


いや、そりゃ俺がこんな人達にモテるとかはありえないけど。

万が一、万が一だ。

仮にこの女の子の一人から少し好意を持たれたりして。

もし、同席してる男ヤンキーさんがその女の子を狙っていたりしていたら。


俺——死ぬんじゃないか……?



「……」

「まっリオ達は高みの見物といきましょー☆」

「そ、そうだね……」



とにかく。

帰ったら作戦会議だ(必死)。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る