私が不治の病だからって婚約破棄していいわけじゃないよ?最後に復讐するってきめたの。

皐月ふう

第1話 不治の病の私を妻にしてよ?

「これは復讐なの。


 伯爵様はおわかり?」




「全くもって


 わからないですね。


 姫様。」





ダンスパーティーが終わった


深夜2時。



J国の第二王女ジェシカは


伯爵のカーリィを部屋に呼び出していた。





部屋に入るな否や、


カーリィにキスしたジェシカを


カーリィは動じずに受け止めた。






ジェシカのキスを


避けることもできたはずだが、


カーリィはジェシカのキスを


拒まなかった。





「さすが鉄仮面。


 本当に冷静ね。」




ジェシカは、


ゆっくり唇を離すと


顔をしかめた。





「人は皆、


 慣れるものなのですよ。」



と、カーリィは真顔で言う。




「姫様と口づけをするのは


 初めてではないですから。」 





確かにそうかもしれないが、


だが、恐らく2年ぶりの


本当に久しぶりのキスだったのだから




「もう少し


 驚いてほしかったわ。」



ジェシカは、


悔しかった。





「姫様に久しぶりに


 呼び出された時点で


 このようなことは


 予期しておりました。」




と言うとカーリィは


ふわりと笑った。





そして、


ジェシカを軽々と持ち上げると



ベットにゆっくりとおろした。




「このような時間まで無理されると


 お体にたたりますよ。」



「ありがと、、」




実際、そろそろ立っているのが


苦しいと感じていた頃だ。



ジェシカはカーリィに


素直にお礼を言った。





ジェシカは御年18歳。




小さい頃から体が弱く、


長くは生きられないだろう、


と医者に言われてきた。




そして一月前、


ついに余命を宣告された。



それと同時期に、


婚約者の家から


婚約破棄の申し出があった。




いくら王女でも


いつまで生きるか分からず


子も為せるか分からない女と




結婚はしたくないという


事らしい。





「婚約のこと、


 残念でしたね。」





カーリィが、


ジェシカの頭を撫でながら


ささやくように言った。



カーリィはJ国の貴族で、


年は28歳である。




ジェシカの目に


じわりと涙が滲んだ。




ジェシカの婚約が


破談になったことは



ごく近しい人間しか知らないはずだが


流石の地獄耳である。




カーリィは10歳から16歳まで、


ジェシカの家庭教師だった。



 


初めてキスをしたきっかけは


なんだっただろうか。



もう忘れてしまったけど、


とにかく14歳の時初めて


カーリィにキスをした。




それ以来、


悲しいことがあったときに、


カーリィにキスしていいか尋ねると


  

「良いですよ」



と言って簡単にキスをさせてくれた。







カーリィは間違いなく


ジェシカの初恋だった。




大好きで、


本当に大好きで


だからこそ


ジェシカはカーリィの秘密を知ってしまった。






「さて、復讐とはどういうことですか、、?」




「私が、大好きな人と


 最後まで幸せにいること。



 

 それがこんな運命に対する



 復讐だと思うの。」




カーリィは、


首をかしげた。



「つまり、、、?」





「カーリィ、貴方は


 K国のスパイよね。」





ジェシカは


カーリィの目を見て言った。


 


カーリィが誰にも


知られてはいけないはずの秘密。




カーリィが、

 

右手にナイフを持って


戦闘準備をしたのがわかった。 





「私の他には、


 誰も知らないわ。 



 こんな余命短い女を


 殺してどうするの?」





王女の家庭教師という身分を利用して


J国の機密情報を集めるのが


恐らくカーリィの仕事だ。




最新の注意を払っていたカーリィだが、



よく寝込む


病気がちな王女の前では


油断をしたのだと思う。




「姫様、貴方の狙いはなんですか?」




ジェシカはにっこりと笑った。




「貴方の妻になりたいの、カーリィ。




 スパイであることを



 秘密にしてあげるから。




 私の復讐を手伝ってよ?」






------------------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る