クラクション検定

 かなりマイナーだが、クラクション検定というのがある


 クラクションというのは自動車のアレである。プーッ!!って音出すやつ。普通に免許を取った人にとっては周囲に音を出して注意を促すだけの機能だろう。


 ならクラクション検定も楽勝?とんでもない!合格するにはとても高いクラクショナー(クラクション検定合格者)としての質が求められる。実際にテストで使われる審査基準を見ていこう。



1:適切なタイミングで鳴らしているか? 0~40点


 一番重要視される。ここで低い点を取ると挽回は難しい。


 対象からの距離、角度、歩行者であれば年代も加味して最適なタイミングで鳴らすことが求められる。10cm単位で評価が変わる。


 相手に危険を知らせることがクラクションの存在意義とはいえ、音にびっくりした結果、別の事故が起こっては本末転倒である。かといって遠すぎても聞こえないし、誰に向けているかわからなくなる。絶妙なバランス感覚を要求される極めて高度な審査基準である。


 世界レベルになると、時には見えない場所から飛び出してくる存在を事前に察知し、自分の存在をアピールできるのだとか。



2:手の位置が適切か? 0~20点


 ハンドルから手を放す以上、流れるような手捌きと、素早い重心移動が求められる。プロは人間の目で捉えられない程の動きができるらしい


 手のどの部分で押すかも重要で、指やグーは減点対象。掌の固い部分とバネ部分の芯を正確に捉え、素早く且つ力強く押す。テスト車には意図的にバネを固くしている物もあり、素人をふるいにかけてくる。


 直進中であれば手の動きはほぼ変わらないだろうが、審査ではバック中、ドリフト中、F1レースで先頭争い中、峠を攻めている間、途切れた橋と橋の間を跳んでいる間、と様々なシチュエーションでハンドリングに支障なくクラクションを鳴らせるかを試される。



3:鳴らし終わるまでの時間が適切か? 0~10点


 当然長すぎても短すぎても駄目。かといって時間が決められているわけではなく、あくまでも周囲の状況によって変わるため、審査基準や審査員のジャッジに対して、しばしば論争が起きる。


 そういった背景があって、以前は15点満点だったが、10点満点にすることで、合格点に対する比重が下げられた。



4:対象との意思疎通ができているか? 0~30点


 なにせ一音階しかないクラクションである。それを何も知らない子供や、言葉の通じない外国人だろうと相手にしなければいけない。


 1~3の技術も含め、時には目線、ジェスチャー、ランプも駆使して事故を未然に防げるかどうか、突発的な事態に対し、冷静なクラクションを鳴らせるかどうかを総合的に判断される。


 ちなみにモールス信号や337拍子は即失格なので注意。




 こうした厳しい審査基準をくぐり抜けて90点以上を取れば晴れて一級クラクショナーの資格を得られる。70点以上だと二級になり、資格は得られないが一級資格取得の為の合宿が割引になるという特典がある。


 ただその合宿の内容はかなり過酷と定評があり、毎回3割の希望者が途中で脱落し、2割が精神を病んでしまうのだとか。詳細はまた次の機会があれば説明しよう。

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