【ある工員の備忘録】


悲しい出来事ばかりが続いた工場がありまして


夜になると幽霊工員たちがせっせか、せっせか働き出すんだと


「定時まで帰らないと、見えちゃうよ♪」


なんて笑いながら僕にだけ残業命令を出す親切な工場長さんに、(十七回も自殺未遂したくせに……)と、舌を出して、僕は夜の工場内を一人見回りした


高度経済成長の残骸


いたるところが錆びてやたらと足音が響く


機械から漏れる水蒸気と天井から滴る雨水で工場内は湿気だらけ


どこからともなく幽霊工員たちが突然顔を出した


「君、青丹は作れる?」

「君、赤丹は作れる?」


作れません、作れません


「一人前になる気はある?」

「身を粉にして働く気はある?」


ありません、ありません


「お金は欲しい?」

「いくら欲しい?」


もちろんたくさん欲しいです


幽霊工員たちとの作業は朝方まで続くとのこと


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