1月27日三題小噺【童話】
お題:【砂】 【パズル】 【無敵のカエル】
ジャンル:童話
むかし、むかし。
カエルの王国に無敵のカエルという称号を持ったカエルがいました。
そのカエルは、王の無茶な命令、例えば攻めてきたヘビの王国の軍隊を一人で追い払うなど、
ですから、王からの信頼と評価が特に高く、王から実の息子のように可愛がられていました。
どれくらいと言いますと、無敵のカエルの老いた母が亡くなった際は王国中を上げて盛大なお別れの会を行うほどでした。
そんな状況を王の実の息子の王子は、面白くないように見ていました。
なにせ、王から毎日事あるごとに、無敵のカエルだったらもっとうまくやった見習いなさいと小言を言われ。家臣からは、次の王は王子ではなく強い無敵のカエルだなと陰口をたたかれていました。
そして婚約者の誕生日に王子が、婚約者に高価な宝石を沢山プレゼントすると婚約者は、少し不満そうな表情で言いました。
「こんなに沢山の綺麗な石よりも、無敵のカエルがプレゼントしてくれた大量の砂漠トビバッタの方がエキゾチックで魅力的だったわ」
王子は、「そっ…そうか今度は君が魅力的だと思うプレゼントを贈るよ。アハハハハ……」と軽く笑いながら婚約者の元を後にしました。
そして自室のベッドに倒れ込むようにうつ伏せになると、憤慨しました。
「どいつもこいつも、無敵のカエル、無敵のカエルと! なぜ王子である私が、家臣の無敵のカエルと比べられなければいけないのだ!」
一晩たって、しわ一つもなかった綺麗なベッドは、あっという間にグチャグチャのビショビショになっています。
「許さんぞ‼無敵のカエル‼」
と、目を真っ赤にした王子は叫び、ある
無敵のカエルの前に王子が魔女に作らせたパズルが一つ。
王子は、そのパズルを無敵のカエルに完成させるように言いました。
もちろん魔女が作った者だとは言わず。
なにせ、このパズルには完成させた者をパズルの中に吸い込んで閉じ込めてしまうという、恐ろしい呪いのパズルだったのですから。
無敵のカエルは、そんなことはつゆ知らず黙々と、小さなピースの呪いのパズルを組み立てていきます。
ニコニコと、不気味な笑みを浮かべながら見つめる王子。
ふいに、王子の方を見た無敵のカエルは「今日は大変機嫌が良いのですね。何か良い事でもありましたか」と尋ねました。
すると、王子は慌てて仏頂面になって「そんなことないぞ‼」と否定しました。
普段と違う表情でいると、無敵のカエルに謀略を見抜かれてしまうと思っての行動でした。
無敵のカエルは「そうですか…」静かに言って独り言を言い始めました。
「他者の心と言うものは分からないものですな。まるでこのパズルのようだ。
一つのピースをじっくり見てもそれが全体を構成している一部にしか過ぎず。
他者の言動一つだけを注意深く観察しても他者を理解することはできない……」
それを、聞いた王子はふと思いふけりました。
今まで父の王や家臣たちや婚約者が、無敵のカエルと私を比べる言葉ばかりが気になって、比べるのは、王子である私に対する期待があったのではないのか……。
そう思った王子は、無敵のカエルが組み立てていたパズルを崩して言いました。
「無敵のカエル!どうか、私も貴方のように強いカエルになれるよう特訓を付けてくれ」
月日がたち、王と無敵のカエルが天国に旅立った頃。
ヘビの王国がカエルの王国に軍隊を送り戦争を仕掛けてきました。
ヘビたちは、無敵のカエルがいないカエルの王国なんてあっという間にたいらげてしまうだろうと考えていました。
しかし、ヘビたちは王となったあの王子が率いる軍隊によってコテンパンにやっつけられてしまうのでした。
こうして王子は、無敵のカエルをパズルの中に閉じ込めずに、特訓を付けてもらうことで、立派な強い王に成り大切なモノを守ることが出来たのでしたとさ。
めでたし、めでたし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます