第49話
何がともあれ、ビーチバレーが始まった。
ビーチバレーをやったことは無いが、普通のバレーと違い屋外の砂の上であること、ブロックもタッチとして扱われることだけ意識しておけば何とかなるだろう。
「じゃあ、私からサーブをするぞ」
「うん」
じゃんけんに勝利し、サーブ権を得たので私からサーブをすることにした。
「頑張って!!!」
「勝ってください!!!」
「勿論勝つぞ!」
「任せて」
サーブをするためにサービスゾーンに立った私と前で構えている冴木に対し、次葉とサキがコートの外から応援してくれている。
その期待に応えるためにも絶対に勝たなければな。
さて、普通のバレーなら助走をつけてサーブをしたいところだが、砂の上でやってもあまり意味は無さそうだな……
どうなるか分からないが、バレーの要領でとりあえず全力でサーブをしてみるか。
私は全力で飛び上がり、出来る限りの力を込めてサーブを行った。
勢いよく飛び出したボールはネットに引っ掛かって威力を落とし、コートの一番後ろの線ギリギリに落ちた。
「危なかったな」
ネットに引っ掛からなかったら完全にオーバーだった。ネットに引っかける気は無かったのでかなりラッキーだったな。
だが感覚は分かった。次は丁度良いサーブを打てるだろう。
「化け物並みに早くないか……?」
「アタックはあれ以上に強くなるって考えると……」
なんてことを考えると相手の二人は完全にビビっていた。
確かにアタックの時はもう少しスピードが上がるだろうが、ビビるほどに差は無いぞ。
まあ、お陰で楽になるから良いがな。
威力の感覚を完全につかんだ私はそれからサービスエースを連発した。
しかし、マッチポイントまであと3点のタイミングでサーブを初めて返されてしまった。
だが、威力はそこまでなく、ふんわりと浮いた返しやすそうなボールだった。
しかしアタックでそのまま返すというのは難しいので冴木に回した。
「冴木!」
「分かったよ」
どんなボールが返ってくるかがかなり不安だったものの、奇跡的にボールはアタックがしやすいネットの前に上がった。
「良し!!!」
綺麗に上がったボールを決めきれない私ではない。そのままブロックも貫通して得点を決めることに成功した。
「綺麗なボールだった。ナイスだ冴木」
「あんな簡単なボールが来たら返せない方がおかしいよ」
「そ、そうか」
冴木の運動神経をかなり心配していたが、完全に杞憂だったらしい。
舐めていて悪かった。
「だって中高はバレー部だったしね。それも結構強豪の所ね」
「……先に言ってくれ」
私の心配を返してくれ。だったらサーブだけで無理に点を取ろうとせずにバレーとしてのやり取りで勝てただろ。
「だってほぼベンチだったし……」
「そうなのか」
「うん。基本ピンチサーバー要員だったね」
「ならもっと先に言ってくれ」
強豪のバレー部でピンチサーバーになれるんだったらサーブをやってくれ。
「普通にサーブ権回ってくるだろうし良いかなって」
「良くないだろ」
先にサーブやる方がサーブ回数は自然と多くなるんだが。
「そんなことはどうでも良いから、早くサーブをやってよ」
「……そうだな」
その後私は威力やコースよりも入ることを優先したサーブに変更したが、普通に点を落とすことなくセットを取れた。
そして続くセットでは相手サーブから始まったものの、
「優斗さん!!!」
「ああ!!!」
「21-8、よってセット数2-0で優斗、冴木ペアの勝利!!!!!」
特に何事もなく勝利した。
「そんな……」
「こんなことがあって良いのか……」
そして負けた二人は膝から崩れ落ちていた。
明らかに素人っぽい二人に負けるならともかく、私とどう見てもバレー経験者の冴木
が相手だったのだから割と普通な敗北じゃないか?
そこまで悔しがる理由もないと思うが。
「私たちが勝利したから大人しく引いてもらおうか」
とにかく私たちが勝ったのは事実だ。さっさと帰ってもらおう。
「そ、そんなわけには……」
完敗だったから大人しく引き下がってくれるかと思ったが、黒髪はまだ諦めきれないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます