第39話

『では、続いて1回戦第2試合。戦艦とサキ&優斗ペアの対決です。どうぞ!!!』


 会場から聞こえてくる山本の合図に従い会場に上がった。


 俺たちの登場でコメント欄は大いに盛り上がっていると思われるが、コメント欄は見られない上に生で見ているのはスタッフだけなのでかなり静かだった。


「さて、この二組はオープニングで散々話していた気もしますが、一応対戦が始まる前に一言ずつ貰うことにしましょうか。では戦艦のお二人から」


「そうね。意気込みはオープニングで話してしまったから別の話にしましょうか。対戦前に一緒だったから裏で聞いたのだけれど、あの二人、この配信には仲の良さを見せつけるために来たって言ってたわ。ちなみにこの配信の優勝景品がペア旅行券になったのはこの二人のせいらしいわ」


「普通に配信者の男女が旅行をすると燃えるけど、景品だったら仕方ないよねって言い訳が出来るからって理由らしいです。裏でやれば良いのに見せつけたがりなんですね」


 と玲子と海斗は真っ赤な嘘をさも真実かのようにでっち上げてきた。悪い顔していた理由はこれか……


「なんと、これは凄い暴露ですね……そんな秘話があったなんて僕も知らなかったですね。そんな暴露が出てきたサキ&優斗ペア、意気込みをどうぞ」


 真意のほどは分からないが、山本は二人の妄言を信じているような振る舞いをしてきた。


「おい山本、弁明の機会を与えずに勝手に嘘を真実にしようとするな。こいつらの暴露は1から100まで嘘だから信じるなよ。んで意気込みだな。当然勝利だ。私とサキが組んで敗北などありえない。以上だ」


「優斗さんがペアなので私の目標も当然優勝ですね。戦艦ペアの狂言については優斗さんの言った通りで私たちには何もないです。ちなみになんですけど、優斗さんにはちゃんとお付き合いしている女性が居ますからね」


「は?私に彼女?」


「うん。あの高身長ハイスぺな女性が彼女でしょ?」


「あれはただの幼馴染だが」


「っと、滅茶苦茶気になる話をされている最中ですが、後日お二人の配信でしていただけますか?微力ながら僕もやるので」


 唐突に刺してきたサキへの弁明をしていたのだが、山本に遮られてしまった。


 まあ、弁明すれば全員納得してくれるだろうから良いか。


「分かった」


「はい、と話している間に準備も出来ましたので、早速対戦を始めてもらいましょうか」



「「「「モンスター、解放!!!」」」」


 とこのゲーム独自の開始の合図で対戦が始まった。


「じゃあ私のターンから。『悪意ある妖精』を召喚。ターン終了だよ」


 今回サキが持ってきたデッキは一般的には青単速攻と呼ばれるデッキだ。赤単よりもスピードは低く、緑単よりも攻撃力が低い代わりに継続的に手札を増やす手段を豊富に持っており速攻どころかデッキ全体の中でもトップクラスの安定感を誇る。


 とはいっても今回は私とペアを組むために妨害系の呪文は青単速攻だと一般的な時間稼ぎ用ではなく、本格的な妨害用のものになっている。


 そんなサキと組む私のデッキは速攻とは程遠い重量級デッキだ。序盤はひたすらMPを貯め、終盤に重量級のクリーチャーを召喚するか即死コンボを決めて勝利する。


 私も活躍させたいサキと、サキを活躍させたい私の意見がぶつかった結果行きついた結論である。


 序盤はサキが活躍し、終盤は私が活躍する。ただサキが序盤で勝負を決めることが多いので私が試合で活躍する確率は3割程度、全体の比率で言えば2割にすら届かないことをサキは気付いていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る