第37話
「ああ、甘楽も?俺もこの二人には絶対に負けられないって思った。理由はさっきのアレだよね」
「勿論。大事な配信開始直前に二人の世界を作ってイチャイチャするようなペアに負けられないわ」
「だよね。同じ気持ちで安心したよ」
なんと『戦艦』の二人からド直球に敵意を向けられてしまった。初対面の筈なんだがな。
流石人気配信者なだけはあって度胸はあるみたいだ。
「おおっと、かなり挑戦的な意気込みが飛んできましたね。確かに優斗さんとサキさんは分かりやすくイチャイチャしてましたものね。ではどうでしょう。そのイチャイチャしていたお二人」
「じゃあ私からいいか?」
「うん」
「では。私たちは決してイチャイチャ等していない。ただ初の案件で緊張していないかと心配しただけだ。で、そこの二人。配信開始直前にイチャイチャするカップルには負けられないと言うが、リハーサルも終わった配信開始10分前頃にやってくる方が大問題だ」
やたらと喧嘩腰で飛び掛かってきた二人だが、こいつらが今回の参加者の中で一番遅れてやってきた大問題ペアである。
「それは前の仕事があったからよ!仕方ないわ!」
すると、玲子がそれに反論してきた。
「なるほど。確かにそれが事実なら仕方ないな」
「そうよ!」
「ただ、メン限で映画を見ることは遅刻が許される仕事なのか?」
メン限配信も立派な仕事である。ファンを喜ばせるのが配信者の役目だからな。
しかし、メン限の配信時間は基本的に個人の裁量でずらせるはずである。特に今日は案件配信があると分かっているからな。
「なっ、何故それを!!!メン限なんだけど!?!?」
私がそう指摘すると、分かりやすく驚く玲子。そりゃあそうだ。私が玲子のメン限配信の内容を理解しているなんて普通ありえないからな。
「そりゃあ先に来たマネージャーが全力で謝罪していたからな。案件配信があるのに二人が映画を見るメン限を始めてしまいましたとな」
「マネージャー!!どうして言っちゃうのよ!!」
「まあまあ、隠しててもいずれバレる話だから仕方ないよ。にしても一本取られましたね。すみませんねえ。あの映画が余りにも面白すぎて時間を忘れて感想を語り合ってたら遅れちゃいました」
あっさりと負けを認めて謝罪する海斗に対し、未だ犯行を続ける玲子。
「すまん、話しすぎた。サキ、何かあるか?」
「凄く楽な仕事で羨ましいですね。1回戦で負けて帰宅なんでしょ?解説も出来なさそうだし」
完全に私と『戦艦』の会話になってしまっていたため、サキに振ったところあまりにも辛辣な言葉で二人を刺していた。
完全に敗北していた二人は反論も出来ないようで、玲子はどこからか取り出したハンカチを口と手で引っ張り分かりやすく悔しさを表していた。
まあ、この2人の発言は遅刻に対する謝罪も兼ねた配信用のネタだろうな。でなければ遅刻した側が配信者失格のレッテルを貼りに来るなんてしないからな。
「え!?!?どうしました絵馬さん!?」
決着もついた所で山本の進行に戻るはずだったが、何故か絵馬が思いっきり音を立てて倒れた。
「サキ様カッコいい……」
突然受け身を取りながら倒れた絵馬に困惑する山本に対し、絵馬はそんな事を言った。
「ええ……」
「すみませんね。この人元々ファンであることを隠す予定だったらしいんですが、許容量を超えちゃったみたいです。無視してください」
「なんなんだこの人たち。まともな人に感想を聞かないと。すみません『ダブルエー』のお二人、意気込みをお願いします」
どうやら山本は崩れた場を元に戻すべくアサヒとアッシュに助け船を求めたらしい。
「せーの、」
「「優勝したら全参加者に歌ってみたを投稿させます!」」
しかし、こいつらは歌ってみた狂いで狙いは大きく外れたらしい。
「ゲームに関係することを話してくれ!!!ったく。公式の配信なんだから真面目にやってくれよ。というわけでおかしな配信者共を間引くためにさっさとトーナメント始めます、許してくれ」
丁寧な口調で話すのも馬鹿らしくなったのか、流れを完全にぶった切ってオープニングを終了させた。
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