第20話

 それから10日後、収録とMIXが終了し、次葉に頼んでいたイラストが届いたのでそれを使用して動画にして歌ってみたとオリジナル曲の動画作成が完了した。


 すぐさまサキに報告し、完成したものを送るとサキは大絶賛してくれた。


 というわけで歌ってみたを三日後に歌ってみたを、そのさらに二日後にオリジナル曲を投稿することとなった。



 結果は、どちらも大好評だった。


 オリジナル曲を投稿して2日がたった時点で歌ってみたの方が50万再生、オリジナル曲が10万再生だった。


 一応歌ってみたの方が圧倒的に再生数が多かったが、サキ曰く今まで曲を作ってこなかった人のオリジナル曲でここまで再生されるのが異例なことらしい。


 サキの予想では、1年、2年と長いスパンで見れば歌ってみた動画よりもオリジナル曲の方が再生数が大きくなるとのこと。



 そして肝心のサキのチャンネル登録者数は私とコラボする前から2万人増えて12万人になっていた。私個人としては100万人、200万人と増えて然るべきだと思うが、現時点の私の知名度でここまで貢献できたのなら上出来であろう。




 歌ってみたとオリジナル曲の大成功のお陰で私とサキの組み合わせが世に浸透したこともあり、結構な頻度でコラボするようになった。


 一応男女コラボなので最初はファンの事を考えて適度な回数に抑えていたのだが、途中からファンの方から私たちのコラボを要求するようになってきたから気にすることを止めた。


 一応男女コラボだぞ?とサキのファンに聞いたのだが、ファンは『ファンとしてのレベルが高すぎて信用が出来る』『そもそもあなたには次葉さんが居るでしょ』という理由で全く心配していないらしい。


 結果的にお互いにチャンネル登録者数は順調に増加し、サキは15万、私が10万人に到達した。




 さて、私はチャンネル登録者数が10万人を突破した。となると、OurTubeから届くものがある。そう、銀の盾である。


 当然私は申請したのだが、このアカウントを作成したのは私ではなく次葉。


 となると届く場所は私の家ではなくて次葉の家だった。


 やりようによっては私の家に送らせることも出来たのだろうが、気付くのが遅かった。


 100万人に到達した際はちゃんとしようと決心しつつ、次葉に連絡した。


 すると、『久々に優斗君の家に行きたいから持っていく』との連絡があったので、素直に受け入れることにした。



「やあ、銀の盾持ってきたよ」


「本当に助かった。で、なんだそのキャリーケースは」


 私の家にやってきた次葉は、銀の盾とは別に何故かキャリーケースを持参してきた。


「そりゃあ久々に優斗君の家に遊びに来たんだから。お泊りくらいはさせてもらうよ」


「別に泊まること自体は構わないが、そんなに荷物が必要か?」


 OurTubeを始める前は次葉が私の家に来るのがほとんどだったので、次葉に必要な生活用品は基本的に全て揃えてある。加えて仕事道具も次葉用のものがあるので、この家に泊まるときは着替えだけで十分だ。


 なのに次葉が持ってきたのは海外旅行に行くのかと言わんばかりの巨大なキャリーケース。


 記憶が確かであればプチ旅行用の小さなものも持っているので、次葉は意図的にこのサイズを選んだのだ。


 次葉は一体何を持ってきたというのだ……?


「そりゃあ当然。泊まるんだから着替えは十分に用意しておかないと」


「まさか……そのキャリーケース一杯に着替えが入っているのか?」


「そうだよ。見るかい?」


「玄関でキャリーケースを開けようとするな。とりあえず中に入ってくれ」


 玄関でキャリーケースを開けられると流石に困るので次葉を家に入れた。


 そしてリビングに案内すると、


「相変わらず凄い家だよね。かなり広い家なのに内装はかなり庶民的というか、実家感があるよね」


 次葉はリビングに入るなり部屋を見まわし、そんな感想を述べた。


「別に成金仕様にする必要なんて無いしな。それを言うなら次葉の家だって普通の家じゃないか」


 次葉もタワマンに住んでいるが、床が大理石だったりシャンデリアがあるわけではない。


「私の家は家族連れが住む一軒家には届かないくらいの広さだからね。そりゃあ普通の家だよ。でも、優斗君の家は違うでしょ。何LDKなのさ」


「確か7LDKだったか?」


「なんで本人が分かってないのかな」


「とにかく広い家を頼むと丸投げしてしまったからな。正直ここまで広いとどれがリビングか分からん。ただ、用途的には7LDKと認識している」


 そもそもリビングも部屋も部屋に変わりはないだろう。一体何が違うんだ。


「なるほどね。とりあえず次の家を借りることになったらちゃんと覚えようね」


「そうだな」


「じゃあいつも通りあの部屋を借りてもいい?」


「問題ない、好きに使ってくれ」


「オッケー」


 そう言うと次葉は次葉専用になってしまった元来客用の部屋に向かっていった。

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