第15話
そして9時手前になり、サキと会話を繋いだのち、配信ボタンを押した。
今回の配信タイトルはそのまま『素晴らしい女性を連れてきた』。今回の出来事をストレートに述べた分かりやすいタイトルだ。
「今日も私の配信に集まってくれてどうもありがとう!優斗だ!今日はお題の通り、素晴らしい女性を配信に連れてきた!」
私が視聴者に向かってそう話すと、コメント欄ではそれが次葉ではないかという予想が大半を占めていた。
「コメント欄で予想している所悪いが、今回来るのは次葉ではない。あいつが来るのなら事前に公表するか、『幼馴染を呼んできた』と誰がどう見ても分かるタイトルにする」
まあ、次葉は顔出しをしていないから気になるのも分かるのだがな。
「というわけで早速来てもらおうか!今日私が連れてきた素晴らしい女性、それは配信者のサキだ!」
『皆、初めまして。サキです』
私の呼びかけに答えてサキはカメラをオンにして、清楚な自己紹介を済ませた。配信者としての経験が長いだけあって、かなり冷静で手慣れていた。
「自己紹介ありがとう、というわけでこのチャンネルに招いた最初のゲストはサキだ。おそらく予想できた人は誰一人として居ないだろうな」
コメント欄をのぞいてみると、このゲストを予測できた人は誰もいなかった。かろうじてサキの事を知っている人が1割くらい居るみたいだが、残りは誰だこの人?という反応だ。
『関わり薄そうに見えるだろうからね。まあ実際に薄いんだけど』
「実際に初めて会話したのが昨日だものな」
『なんか面白いことしている人が居るなって思ってDMで話しかけたらまさかこういう事態になるとは思わなかったよ』
いざとなれば私が話しかけた事にする予定だったのだが、サキは正直に自分から話しかけたと言っていた。
「サキの魅力は素晴らしいからな。視聴者の皆も見て分かるだろうが、サキは美人だろう?」
と視聴者に問いかけてみると、コメント欄では『わかる』、『可愛い』、『ファンになりました』等、まずは容姿を気に入ってくれたようだ。
『本人の前でそれ言います?』
「ファンなら普通だろ?サキの配信でも似たようなことを言っている同志はいくらでも居るじゃないか」
『あれはコメント欄で完全匿名だからだよ。こうやってお互い顔を出して直接会話している時に言えることじゃないよ』
と私に文句を言いつつも、カメラに写っているサキ顔は真っ赤だった。
「可愛い、綺麗なんて言葉はコメント欄でいくらでも聞いてきたはずなのに、直接面とあって言われたら照れてしまうのも良いだろ?別に私が直接言わなくとも、ファンイベント等で直接顔を合わせられる場で視聴者が同じことを言ってもこの反応をするらしいんだ。だから今後オフラインイベントが開催されたら行くことをお勧めする。オンラインライブの方も当然お勧めだがな。私は購入した。同時視聴配信を開くから、そこでともに見て涙を流そうではないか」
『えっと……』
「というわけで今日の配信はひたすら彼女の魅力を語り続ける会だ。昨日からファンになったため、そこまで配信を鑑賞できているわけではないが、出来る限り彼女の魅力を伝えようと思う」
それから、私はサキの照れる反応を見つつ、良かったら逐次ファンに伝えて注目させながら魅力をひたすらに伝えていっていた。
そのお陰もあり、サキの登録者数は10万人から11万人まで増加していた。
「よし、サキの登録者が1万人増えた。皆魅力がわかってくれたようだな!」
『もう!もう!!!』
サキは照れるあまりそれしか言えなくなっていたが、反応的に喜んでいるようだ。
「というわけで11万人記念で私から何かしないとな。私が出来ることで、配信者サキにとって最も価値があるもの……やはり歌か?」
絵をプレゼントするという選択肢も浮かびはしたのだが、いくら素晴らしい絵を受け取ったとしてもその絵を見て感動し、人生が変わるだけで具体的なメリット自体は薄い。
特に配信者サキにとっては。それで増えるのは私のフォロワーだけだ。
しかし、歌をサキのチャンネルで投稿したならば視聴回数が増え、登録者数も爆増するだろう。私の歌は相当な需要があるみたいだからな。
「そうだな、ここで宣言する。私とサキは11万人を記念してコラボの歌ってみたを作成する!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます