第10話

「これですべて終了です!こんなに長時間ありがとうございました!」


「こちらこそありがとう。非常に楽しかった」


 13時から初めて19時に終了するという初回にしてはなかなかハードな収録だったが、水筒箱があまりにも誉め上手で楽しくなってしまったので本当にあっという間だった。


「本当に依頼した甲斐がありました。これなら確実に1万は売れますよ!!」


「1万ってどの程度だ?」


「販売サイトで日間1位が普通に狙えるレベルですね」


「なるほど、それは凄いな。それもこれも水筒箱の台本と応援のお陰だな」


 いくら私でも水筒箱がいなければここまでよい収録を成し遂げられることはなかった。


「いえいえ、優斗さんが素晴らしかったですよ。特に終盤とか、もともと私が書いていた台本から数段グレードアップしていますし」


「そういわれると嬉しいな」


 本当に水筒箱は誉め上手だな。


「で思ったんですが優斗さん、台本書いてみませんか?」


「台本?私がか?」


「はい。あれだけの改良や追加ができるなら単独で素晴らしい台本を書きあげられると思うんです」


「そうか?」


「はい、優斗さんは天才ですから!」


「なるほど、一理あるな。で、私は一体何の台本を書けば良いんだ?」


「そうですね、元々私の仕事なのですが、彼女の台本を書いていただけると嬉しいですね」


 と言われて見せられたのは企画書だった。


 声優の名前は『陽月ルナ』で、クール系の演技に長けているようだ。今回は生徒会長役で、庶務として活動している聞き手を労うASMR音声作品とのこと。


 そして肝心のASMRの内容は耳かき、囁き、マッサージらしい。


「なるほどな」


「いけますか?」


「もちろんだ」


 私は天才だからな。できない事なんて無い。



 そのまま4時間ほど台本制作に取り組み、完成したのでそのまま渡して帰宅した。



 その翌日、『メルヘンソード』から大々的に宣伝が行われた後、一週間後に私自身の音声作品が、さらにその一週間後に私が台本を担当した音声作品が公表された。


 発売される前は、『ただのOurTuberが音声作品出しやがったよwwww』とか、『メルヘンソードも金の誘惑に堕ちたか……』など、私が音声作品にかかわることに否定的な意見が多かった。


 しかし、作品が発売されてからは意見がガラッと変わった。


 私が演じた方も私が書いた方も『メルヘンソード』の作品としてかなりの出来だったようで、ネット上で結構な話題となっているようだった。


 水筒箱による報告によると、『メルヘンソード』の作品の中でトップ5に入る初速とのこと。


 流石は私、と言いたいところだが、ここまで売れた理由は『メルヘンソード』が人気サークルだったこと、そして長年培ってきた音声編集やサムネイルの画像の作成、人目を惹くタイトルと概要を書く技術の影響が大きい。


 それもあって今回の出演料に関しては遠慮しておくことにした。当然水筒箱は受け取るように言ってきたが、今後の設備の利用料として今回は受け取ってくれと言ったら引き下がってくれた。




 ちなみに今回の音声作品の影響で、ツリッターのフォロワーが800人ほど増えた。ただし、音声作品ファンが多いからか絵に対する反応自体はそこまで増えなかった。


 まあ今回に関しては狙っていたわけではないからな。増えただけありがたいと思うことにしよう。



 OurTubeチャンネル登録者数 約23000人

 ツリッターフォロワー数 約5800人





「よし、やるか」


 私は満を持して、例の配信をやる決意をした。


「となれば早速宣伝をしないとな」


 私は他の配信者のサムネを参考にしつつ、自分なりのサムネイルを作り、ツリッターに張った。


 視聴者は、『ついにやるのか』、『つまり神回か』等ど、配信を楽しみにしている様子。


「そうだよな。一番視聴者が求めていることだものな」


 反応を見て、私は再び決意を固めた。


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