第4話

 私と同様に次葉はOurTubeに触れた経験はなかったはず。


「やったことないとはいっても簡単な動作だからね。こんなものだよ」


「そうなのか……?」


 私がやったら今の動作を行うだけで倍の時間はかかる自信があるぞ。


「ほら、私は複数のサイトを使用しているから耐性があるんだよ」


「なるほど」


 確かに次葉は色んなサイトで創作物を発表している。どれも大体絵なのだが、mixivというイラスト投稿サイトとツリッターしか使っていない私よりは手慣れていても変ではないのか。


「ってわけで7時に予約投稿が済んだから、告知をしないとね」


「そうだな。URLが分からないから送ってくれ」


「大丈夫、私がするから」


 と言って次葉は自身のPCから私のツリッターを開き、事前に用意されていたらしい文面にURLを貼り付けて告知をしていた。


「何故私のアカウントにログインできるんだ……?」


 ツリッターのアカウントは一緒に作ったが、パスワードを教えた記憶は無いのだが。


「だってパスワードが分かりやすいんだもん。YutoHaTensa1でしょ?」


「そんなに分かりやすいか……?」


「幼馴染だからね。優斗の思考をある程度読めるのは当然さ」


「……まあ良い。別に次葉にバレていた所で困る事は一切無いしな」


 むしろこうやって告知を手伝ってくれるのだからありがたいかもしれない。




 投稿時刻を19時にしてしまった都合上、3時間程暇になってしまったので時間が来るまではゲームをして過ごした。



 そして気付いたら19時になっていた。


「今ネット上に私の歌声が公開されたようだな」


「だね。告知ツリートをしないと」


 そう言って次葉は目の前で動画の告知ツリートをしていた。次葉のアカウントで。


「ちょっと待て。どうして私のアカウントではないんだ?」


「だって私が歌ってみた動画のイラストを担当したから」


「は?」


 あの歌ってみた動画は本家のPVをそのまま使用したのではないのか?歌ってみたってそういうものだろ?


「じゃないと見てもらえるきっかけが無いから。存在すらしないチャンネルから動画が投稿されても気付ける人は中々いないよ。どれだけ素晴らしい出来だったとしてもね」


「確かに事実だが……」


「それに、今回の歌ってみたは私がやらせたようなものだし、せめてこれくらいはしないといけないでしょ」


「悪いな、ありがとう」


「良いんだよ。それよりもコメント見てみようよ」


「そうだな」


 私の歌の反応はどうだろうか……


『この人歌うめえな』


『神歌い手誕生だよ』


『ここから伝説が始まるのか……今の内に古参面しとこ』


『次葉さんがイラスト担当したって聞いたから来たけど何この化け物。どこにいたんだよこんな人』


 まだ投稿直後で、好意的な印象を持っている人しか来ていないのもあるのだろうが、コメント欄は賞賛の嵐だった。


「流石は優斗君だね」


「ああ、そうだな」


「この調子だとどこまで行くかな?」


「どうだろうな、いくら上手いと言っても初投稿だからそこまで行くとは思わないが」


 ボカロPならともかく、歌い手の方で最初の歌ってみたを広告無しで伸ばしきるのは中々に難しいという話は聞いている。


「まあ、ご飯でも食べながら見ていようよ」


「だな」


 19時と飯に丁度良い時間だったので、今日は出前を取って豪勢にやることにした。





「じゃあまたね」


「ああ、今日はありがとうな」


「こちらこそ」


 飯を食べ終わった後そのまま私たちは解散し、私は自宅に帰った。




 その後風呂に入り、寝る直前に自身のチャンネルを確認した所、動画の再生回数は10万再生、チャンネル登録者数は1万人に到達しており、ツリッターのフォロワー数も1000人から2000人に増えていた。


 まさか歌ってみた動画を一つあげるだけでこうも成長するとは思わなかったな。本当に次葉には感謝しかない。

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