17.他の人から見るとこれはわかりにくい行動かもしれない。
修学旅行三日目、俺は竜太、江藤、磯部の三人とテーマパーク内にいた。
俺が竜太と江藤に声をかけた後、竜太が磯部に声をかけたことによって、この四人で今日は一日過ごすことになったのである。
しかし俺は、このメンバーに違和感を覚えていた。どう考えても、一人足りないのである。
「……磯部、新見はどうしたんだ?」
「……それがさ。なんか今日は他の人と回るらしくてさぁ。まあ、誰と回るかは聞いてないんだけど、多分臼井京香さんなんじゃないかって、俺は睨んでる」
「臼井と……」
磯部の言葉に、俺は少し驚いていた。
どうやら江藤は、想い人とこのテーマパークを巡るらしい。
状況から考えて、江藤が誘ったのだろうか。それを臼井が受け入れたのだとしたら、脈があるということなのかもしれない。
「というか、それを言ったら藤崎君こそ今日はどうしたのさ。由佳と一緒に巡るんじゃないの?」
「まあ、それについては色々とあったんだ。由佳は今日、四条達と一緒だ」
「はあ、そういうこともあるのか……俺だったら、彼女と一緒に行きたいけどねぇ」
磯部は、ゆっくりとため息をついてそんなことを言ってきた。
俺としては色々と考えた結果である訳なのだが、他の人から見ると確かにこれはわかりにくい行動かもしれない。
ただ事情を詳しく説明するのも面倒なので、ここは省かせてもらうことにする。
「まあ、藤崎君のことは置いておいて、京香のことが気になるよね?」
「うん?」
そんな感じで磯部と話していた俺は、突然聞こえてきた聞き覚えがない女子の声に少し驚いてしまった。
よく見てみると、俺達四人の輪に一人の女子生徒がいる。その女子生徒には、一応見覚えがある。なぜなら彼女は、クラスメイトであるからだ。
「確か……高坂日々菜さん、だったか?」
「あ、藤崎君ひどい。クラスメイトの名前を覚えていないなんて」
「いや、覚えているだろう。今、ちゃんとフルネームを言ったはずだ」
「あ、そっか……」
俺達の輪に入ってきたのは、同じクラスの高坂日々菜だった。
確か彼女は、臼井と仲が良いはずだ。クラスなどで話しているのを、よく見かける。
臼井が新見と行動をしている以上、彼女も一人という訳だ。故に、同じくメンバーがかけている俺達の元に来たといった所か。
「……それで高坂は、どうして俺達の方に来たんだ?」
「いやあ、京香を新見君と一緒に行くように誘導したまではよかったんだけど、そうしたら私は一人になっちゃって、困ってたんだよね。でも丁度京香の話を藤崎君達がしていたから、せっかくなら混ざるかって思って……」
「なるほど、やはりそういうことだったのか……」
どうやら俺の予想は、概ね当たっていたらしい。
しかしなんだろうか。高坂と話しながら、俺は違和感を覚えていた。
俺は彼女と話すのは、今日が初めてであるはずだ。だが、彼女とは話したことがあるような気がするのだ。
その既視感は、一体何なのだろうか。俺はそれを考えるのだった。
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