7.親戚に彼女を紹介するのは少々照れ臭い。
「それにしても、びっくりしたよ。九郎が彼女を連れて来るなんて」
「ふふ、九郎君ももうそんな時期なのね」
「ああ、えっと……」
俺は由佳とともに、お祖母ちゃんの家からそんなに離れていない所にある親戚の家に来ていた。
徒歩五分くらいでつけるその家には、俺のお祖父ちゃんの兄弟の子供や孫にあたる人達が暮らしている。皆俺にとっては、幼い頃から知っている人達だ。
今話しているのは、俺より少し年上のお兄さんである
「まあでも、聞いたことはあったなぁ。仲の良い幼馴染がいるって」
「ああ、そうだったの?」
「うん。転校してから疎遠になったとかだったよね?」
「ああ……まあ、そんな感じかな」
「ええ? ということは、その子と数年振りに再会して付き合ったの?」
明理さんは、なんだかすごく楽しそうにそう聞いてきた。
まあ確かに、その部分だけ切り取ると俺と由佳の再会はロマンチックかもしれない。
ただ実際は、俺がくだくだしていた訳で、あまり誇れるものではないというのが、実態である。
「実は私もろーくんも、ずっとお互いのことが好きだったんです」
「うわあ! それってすごいね!」
「はい。本当にすごいことだと思います」
由佳の説明に、明理さんは楽しそうに声をあげた。隣の健人さんも、にこにこしている。
由佳が俺のことをずっと好きでいてくれたのは、本当にすごいことだ。幼少期の印象だけでずっと想ってもらえていたなんて、俺はなんて幸せなのだろうか。
「そういえば、健人さんと明理さんも高校から付き合い始めたんでしたっけ?」
「うん? ああ、そうだよ」
少し気まずかったから、俺は強引に話題を転換することにした。
ただ、これは純粋に聞きたかったことでもある。二人の出会いは、今の俺にとっては以前よりも興味深いものなのだ。
しかし、なんというかこれは選択を誤ったかもしれない。健人さんの反応が、物凄く悪いのだ。
「えっと……」
「ああ、その……ごめん。なんだか、恥ずかしくってさ」
「ああ、そうですよね……」
健人さんは、単純に恥ずかしがっているようである。
よく考えてみれば、それは当たり前だ。馴れ初めの話なんて、早々話したいことではないだろう。俺だって、さっきは恥ずかしかった。
「別に特別なことなんてなかったのよ。同じクラスで、お互いになんとなく気になって、そのまま結婚したって感じ」
「それは、すごく素敵だと思います」
「そう?」
少し照れながら話してくれた明理さんに対して、由佳は強く食いついた。やはり彼女も、恋愛関係の話は好きであるようだ。
そんな彼女の言い分には、俺も同意できる。二人の馴れ初めは、すごくいいものではないだろうか。
「山も谷も、そんなになかったんだけどな……」
「私は、その方がいいって思います。好きな人とは、ずっと平和に一緒にいたいですから」
「まあ……言われてみれば、確かにそうかもしれないね?」
由佳の言葉に、明理さんは笑顔を浮かべていた。彼女もまた、由佳の理論に納得することができたのだろう。
「私とろーくんも、健人さんと明理さんみたいに慣れたらいいなって思います」
「二人ならきっとなれると思うよ。だってすごく仲良しさんみたいだし」
「ああ、それはそうだね。見ていたたらわかるよ。というか、僕達以上じゃないかな?」
「ふふ、そうかも」
そこで二人は、俺達を見てそんなことを言ってきた。
それはもちろん、嬉しいことではある。しかし、そんな力説をされると思っていなかったため、少し驚きだ。
ただこれは、お世辞という面もあるだろう。わざわざうまくいかないなんて言う訳がないのだし。
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