ウエストサイドストリート

グリーナ達はクマと別れ、西へ進路を進めた。

海沿いを首都サクラギ方面へ向かう街道である。

ウエストサイドストリートと呼ばれ、観光客や異種民族、サクラギから地方へ向かう城の侍女や兵士など

多種多様である。


「この通りがサクラギから東へ向かうメインストリートになります。フィールドヘアー地区内のグリーナさんの森からは真北になりますね」

見たことのない爬虫類族や高貴な貴族など、森をあまり出ないグリーナには全てが新鮮であった。


「首都サクラギや地方街の武器防具屋さんは確かに良い品なんです。上級者が使う物や、ビンテージ品やら。道具屋さんもなんでも揃ってますし。しかしギャンが高いんですよ」

先導を飛んでいるチャンドラが振り返って言った。


グリーナはポケットを漁ったが、ガムの紙とレストランドングリ屋の割引き券しかなかった。


「魔物を倒したら、ギャンもらえればいいのにね」

「拾ったアイテム売るしか方法ないですものね」


★注ギャンとはこの世界の通貨です


小さな港にグリーナ達は着いた。

チャンドラは辺りを見回す。

「困りましたね」

「どうしたの?」

「船がいないんです。いつもなら無料送迎船が2、3艘。漁船なども待機しているのですが」

「もしかして、海を渡るの?」

「そうなんです、見てくださいあの先を」


チャンドラが指差す先には島が浮かんでいた。


「あの島の村に、コミュニティがあり、まぁ屋台や商店の集まりと言いましょうか。最初は若者達が観光客相手に服など売り出して、激安で島ブランド化されたんです。次第に武器防具屋さんやスイーツ屋さんなどが集まり、島全体が盛り上がっていったんですね」

「おぉ!楽しそうじゃないか」

グリーナは目をキラキラさせて島を見た。


「ファッションセンター島の村と呼ばれています」



「チャンドラは飛べるけど、オイラとグリーナだよな」と3人が途方に暮れていると、一匹のウミガメが海から上がってきた。

「ねーちゃん達、島の村いくんかい?」

「うん、船がないんだよ」

グリーナはウミガメの前にしゃがんだ。


「今は無理だ、いやしばらくは」

ウミガメの話だと、ある日から島に行った船が戻ってこなくなったと。不審に思った漁師達が島にむかったがそれすら帰って来なくなった。その後民間の組織が何回も調査しにいくも、やはり誰1人戻ってこなかった。通報を受け海上警備部隊調査局のウミガメ達が偵察に行っていたと言った。


「で、どうだったの?」

「それが、人の気配がしねんだよ。でも中央の村の方でなんか綺麗な歌声が聴こえてよ。あれ、教会とかで歌うやつ」

「讃美歌でしょうか」

ウミガメはチャンドラを見上げそうそうと言った。

「それ聞いていたら、なんか頭がボーッとしてきてよぉ。なんか危ねぇと思って、部隊で急いで引き返したんだよ」


そこまで話し、ウミガメがグリーナとチャンドラの顔を何か思い出すかのように見比べた。

「あれエルフのねーちゃんと、ちびっこお嬢ちゃんなんかどっかで見た事あるような」

「気のせいでしょう。あは、ただのポスト局員ですよ、よくある顔ですので」

チャンドラは動揺したように、笑いながらとぼける。


「わたしは、セクシーアイドルのグリーナです」

くるリンと回り、口元に指をあてウィンクした。

「嘘つくんじゃねえ」とムジナは首元を掴む。

「ちなみにデビュー曲は★ザリガニ温泉★です」

「その二つ切り離せよ!マサトちゃんグレるぞ」


ウミガメはとにかく島へ行かない事を約束させ

「じゃあな、面白いねぇちゃん達」と去って行った。


グリーナ達は行くか、止めるかで意見が分かれた。

ムジナはリスクが高く、行く方法が無いと言う理由から反対した。チャンドラはそこまでして行くほど、良い武器防具があるわけでなく、事件性や島民の調査は海上警備部隊が動いたと言うことは国が動いているので任せた方が良いとの意見だった。


一方でグリーナの意見はこうであった。

「わたしはスイーツ食いながら、讃美歌フェスティバルに絶対参加する」

である。


「やれやれ、困りましたね。またグリーナさんのご病気が発動されてしまいました」

「言ったら聞かないぞ、参ったなぁ」

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