喋れさえすれば、勝つ!

シィムラは荷車で移動し、ポラッタの肩を借り立ち上がった。

「良いかグリーナ。今から召喚獣を出すぞ。なかなか手強いぞ。しかしこの程度を倒せぬようでは暗黒城などたどり着けぬ。良いか」

「うん、おばあちゃん。いつでも良いよ」

グリーナはフードを被り直し身構えた。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

シィムラのターン

→【シィムラは杖を地面に向け呪文を唱えた】

「すげ、ばあさん。なんだよこの魔法陣」

マグニチュード5以上の振動にクマとムジナは地面にしがみついた。

ポラッタは支えているのか支えられているのかわからない状態で、シィムラの腰に手をまわす。

「みんな下がって。おばあちゃんの魔法陣はわたしの何倍あるかわからない」

グリーナはムジナ達の前に立つ。

→【グリーナは呪文営業時間前を唱え軽い結界を貼った】

吹き飛ぶ小石や風などを防ぐ。

→【シィムラは杖を回転させると、そこに渦潮の海流ができた】

→シィムラは叫んだ【「いでよ!危険なアバンチュール」】


海流から角が出る。その角はみるみる上昇しその時点でクマの身長を凌駕した。さらにその角から両サイドに同じような角が現れ、さらに上昇すると下の足部分にもその角が生えている。


→【巨大ヒトデ 危険なアバンチュールが現れた】


シィムラ「これぞ、我が召喚獣巨大ヒトデ、危険なアバンチュールじゃ」

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

グリーナ達の5倍以上はある生物を見上げた。

「さぁ来い、賢者の子よ。殺しはせぬシィムラ様の弟子であるからな。全員でかかってこい」

グリーナは全員を杖で後ろに制した。

「みんな下がって。わたし一人でやる」

「ばか言うなよ、全員でもまるで勝ち目ないんだぞ」

しかし、グリーナはニヤリと笑う。


「わたしは絶対勝つ。喋れさえすれば絶対に」

グリーナの碧眼の瞳孔が開いた。


ローブはグリーナ自身からでる波動により捲れ上がり、あたりの草木を吹っ飛ばした。


シィムラは横にいた、ポラッタの目を見て「ほぅ」と口元だけで微笑した。

「ま、まさか。シィムラ様。あいつの眼」

「まぁ、見ておれ。どんな足掻こうが戦闘力ではライオンと蟻レベルの差。見ものじゃないか」

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

グリーナのターン

→【グリーナは呪文を唱え天に杖をかざした】

天に魔法陣が出来る。


「いでよ召喚獣、ザリガニのマサトちゃーーん」

→【ザリガニのマサトちゃんが現れた】

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

「だよな、だよな。あれくらいだよな。あとクワガタとか巻貝とかリスとか、、」

ムジナは頭を抱えた。


「おい、サッカーボールの黒い部分」

グリーナは杖をヒトデに向けた。

「誰が、サッカーボールの黒い部分だ。わたしは浜辺の最強召喚獣である」

「条件がある」

「なんだ言ってみろ、賢者の子よ」

「これは召喚獣同士、一対一の戦いにしたい」

「よかろう、もし負けても貴様のプライドが保たれるってわけだな」

「そして、ルールだ。一回のみとする。もちろん知識や知能でなく身体を使った勝負だ。その勝負法もわたしに決めさせてもらう。もちろん怖かったら断ってもらってかまわない」

「何?断るだと。そのザリガニが鳥だとしたら空の戦いならば勝負にならん、飛べんからな。しかしわたしの最下位互換モードなザリガニくんに、万が一でも勝つ要素はない」

「では、受けるんだな。浜辺の最強さんよ」

「あぁ、よかろう。いつでも始めろ」


グリーナはザリガニの顔を見た。

ザリガニはしばし目が合うと身体の震えが止まらなくなった。このトンチンカンな賢者に召喚されてばかりいるうちに、考えてる事がわかる様になったと。そしてこうも思った、この人頭がおかしいのか天才なのか?と。


「ではいくぞ!マサトちゃん用意しろ」

「はい、グリーナさん」


巨大ヒトデはにやけながら見下ろしている。


「じゃーーん けーーん」

グリーナの掛け声と共にマサトちゃんはハサミを振りかぶる。


巨大ヒトデは一瞬思考が止まる。

じゃんけん?なんだじゃんけんって。先攻後攻か。

だとしたら、先攻後攻チーケッタだろ?いや元カノ曰く先攻後攻じゃす、であった。

そんな事はどうでも良い。先攻いやターン制の野球的な勝負なら後攻のがよいのか?とりあえずチョキを出しあいこで様子を見るか?

その前にわたしは指がない、じゃんけんなど出来ぬ。

元カノにかつて言われた事がある、パーみたいな身体してじゃんけんも出来ないの?って。

パー?


巨大ヒトデ気づいた時にはグリーナの掛け声が辺りを支配していた。


「ほーーーーい!」

マサトちゃんはハサミを巨大ヒトデに向かい突き出した。

その突き出したハサミから、グリーナの言霊「ほ」と「い」が乗り発射され巨大ヒトデの頭腕のサイドを切り裂いた。

「じゃ、じゃんけん?」鋭利に切り裂かれた頭部からじわりと液体が流れ落ちた。


何が起きたか、思考が停止しているムジナ達も口を開けて固まっている。


「グリーナ卑怯だぞ。こんなのただのゲームだ。遊びだ。ルール違反だ。しかもわたしはパーみたいだが、自分の意志でパーを出していない」


グリーナは親指を立て空中のコマンド枠を刺した。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

→【グリーナ達は勝利した】

→【経験120を獲得した】

→【グリーナはレベル3になった】

→【グリーナとマサトちゃんはスキルじゃんけんを覚えた】

→【巨大ヒトデ危険なアバンチュールが召喚獣になった】

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

巨大ヒトデは最後まで抵抗したが、グリーナの魔法陣へ吸い込まれていった。

「すごいです。グリーナさん!おめでとう」

「ヴゥゥ、ヴゥゥ」

ムジナ達が拍手喝采でバンザイをしている。


「しかし、シィムラ様。こんな勝ち方ありなんですかね?聞いたことないもない」

ポラッタはシィムラの腰を砂場に下ろしながら問う。

「勝ちは勝ちじゃ、コマンド枠がこの世の全てのジャッジじゃからのう」


シィムラはグリーナを呼び寄せアタマを撫でた。

「グリーナよ、この勝負わしにも勝った事になる。お前は今日から見習いでなく、一人前の賢者じゃ、この杖も託そう」


→【グリーナは賢者の杖を獲得した】


「グリーナ、そのローブとこの杖はわしがりゅんぱと戦った時のものじゃ。魔物なんてイチコロよ」


グリーナは嬉しそうに杖を天に掲げた


「おばあちゃん。このローブクワガタに切られたんだけど、いつの間にか修復してる。今気づいた」

「このローブも杖もとある木から出来ておる、持ち主はもちろん選ぶし、持つ者によって能力も違ってくる。これからはグリーナの身体の一部にするんじゃ、よいな」

グリーナは不思議そうに、ローブと杖が共鳴しているのを見ていた。そして、自分の身体とも、、、


「グリーナさん、遅くなるのでそろそろ出発しましょう」チャンドラはハチミツドリンクの水筒をグリーナの首にかけた。

「では、気をつけてな」

「こっちは少しまかせろ。あと道具もなんか作っとくからな」

シィムラとポラッタに見送られ、グリーナ達は出発した。

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