大賢者シィムラ
シィムラの家はグリーナの館と同じく質素な古屋であった。グリーナの館は住んでいたシィムラがグリーナを後継者にした時譲り渡したものだ。
シィムラ曰くあの古屋は特殊な木で出来ていて、代々の賢者があの館をアジトにしていたと言う。
ただその木の秘密は、決してシィムラは話すことはなかった。
暗闇を抜けグリーナ達はようやく星空の下へたどり着いた。
古屋の入り口にはランタンが吊るされ火が灯っていた。そのランタンの上でミミズクがほーほー鳴いている。
「シィムラ様お待ちかねだよ」
「こいつシィムラ様の召喚獣、オルーガって言うんだよ」
グリーナが頭を撫でると
「大賢者とセクシー見習いがんばれよ」と答えた。
チャンドラを見て「彼氏いますか?今度サクラギまで遊びに行きませんか?」と羽を羽ばたかせた。
「いえ、忙しいので。彼氏もサクラギもちょっと」
と苦いをする。
「エロフクロウかよ」と言うムジナに「お前カッコ悪いのに、カッコばかりつけてモテない症候群をこじらせている奴な」と一瞥した。
グリーナは笑いながら「お前とは仲良くなれそうだ」とオルーガに親指を立てウインクすると、オルーガも右足を上げ応えた。
ポラッタはノックをして「シィムラ様、ご容態はと中に入った」
「うむ、よく来た」
老婆はベッドの上から顔だけこちらに向けた。
グリーナは畳に布団を敷き横たわるシィムラの枕元に行って「ごめんなさい。全然これなくて」と泣いた。
シィムラは寝たまま、グリーナの頭を撫でた。
「グリーナよ、わしに会いに来れんと言う事はしっかり森を守ってると言う事じゃ。立派じゃぞ」
グリーナは頭を振って「あんまりちゃんとしてない」
「わかった、わかった。全部ムジナが悪いんじゃな。ムジナちょっと来い」
シィムラはムジナの頭を強めに殴った。
「いってぇ。なんでオイラなんだよ。ババアは本当えこひいきだよな」
「さて、今日は何で来たんじゃ。なんとくは
わかっているが」
チャンドラがグリーナの肩を軽く叩く。
「あっ、そうそう見て欲しい物があるの」
グリーナはシィムラに手紙の全てを見せた。
シィムラはしばしの沈黙の後
「あやつめ、何をたくらんでおる」と眉間に皺をよせる。
「シィムラ様、まさか100年前の魔王でしょうか」
「あぁ、チャンドラよアダーチクの中央図書館にて
【賢者のはちゃめちゃ大作戦】は読んだ事あるか?」
「ええ、勇者の泣く泣く逃避行のスピンオフですよね。シィムラ様が魔王を封印した」
「そうじゃ、その時の魔王の名前は?」
「えっと、確か。んーりゆう?りん?
あっりゅんぱです!」
チャンドラのその一言に全員は固まった。
「おそらくグリーナに着た手紙は本物じゃろう。
ただやつが未だに世界を混乱させる悪事を考えているなら、決してわしの封印は解けぬはず」
「おばあちゃん、このりゅんぱって魔王何をやらかしたの?」
「グリーナよ、正式にはりゅんぱは魔王の娘じゃ。
その娘がこの国に魔界との契約を破り勝手にやって来た。それはそれは、、
人の家のベランダに勝手に猫の餌を撒き、猫屋敷にしてしまったり。
アパートの部屋番号プレートをすり替えて、ピサの注文をこなくしたり。
恋人の初デートのレストランにたがいの元彼と元彼女を金で呼び出し、気まずい雰囲気にさせたり。
まぁ言い出したらきりはない」
「なんかその思考と行動が誰かに似てるんだよな、、」とムジナな流し目でグリーナを見た。
「な、何を言う。失礼しちゃうわね。ねえみんな」
だれも、何も言うことは無かった。
「で、実際りゅんぱってどんだけ強いんだよ」
「まぁ、都市一つくらいならおそらく即壊滅じゃろうな」
グリーナ達は固唾を飲んだ。
「でも、封印されてんの間違いないんだろ?」
「あぁ、もし封印を解いていたらグリーナにこのような手紙は渡さん」
「で、いったいその封印ってどんなんだよ」
「それまでの経緯はチャンドラにでも聞いてくれ。
封印の名は オシオキベヤ
とある空間に閉じ込めた
そして、オシオキベヤの封印は
封印された者が懺悔し改心し良い子になる事じゃ
それ以外の解除は絶対ありえん」
「わかったわ!魔王の娘りゅんぱが良い子になっていたらこんな手紙送らないって事ね。罠って事でしょうか」
「かもしれぬ、しかし何か腑に落ちないのじゃ
何かが」
「あー!おばあちゃん、もう面倒くさいからわたし見に行ってくるよ。どうせ招待されてんだし」
「でも、グリーナさん。魔王の娘ですよ。全盛期のシィムラさんでさえやっと封印出来た」
「だって、封印されてんなら怖くないし。封印解かれてんなら良い子なんでしょ。なんも問題ないじゃん」
「たしかにグリーナの言う事はもっともかもしれんのぅ」
その後グリーナ達は偵察隊を誰にするかメンバーを決める会議になった。
まず偵察隊はグリーナそしてポーター(荷物持ち)のムジナ、道案内役のチャンドラになった。
クマは図体がでかいので目立ちすぎるのと、森を守る役割の為待機。
ポラッタも四次元道具箱の古屋にいなければならず、シィムラは腰痛とクマだけでは守れない森の管理を。
その夜は暗くなったのでシィムラの古屋に全員で泊まり、翌朝出発することになった。
次の朝、チャンドラが作った朝食を全員で食べ、
身支度がはじまる。
「グリーナすまんのぅ。わしが動ければ」
「いいよ、おばあちゃん。旅してみたかったから」
チャンドラはふと気づいたような顔して
「そういえば、、」クマとムジナを見た
「クマさんとムジナさん職業まだですよね
これを機に職につかれては?レベルも上がるし、スキルも得られますから」
クマとムジナは素直に頷いた。
「あと、防具や武器なんかも一応買っときましょう。暗黒城の途中なんで、クマさんのは次回になりますが」
「でもさ、うちらが出ちゃえば森の守り不在になるよ」
「グリーナ、そんな短時間だったらオレ1人でも大丈夫だ。最悪その荷車でシィムラ様お連れしちゃうから」とポラッタは笑った。
「そうじゃ、遠慮するなグリーナ」
グリーナわかったと頷いた。
「あともう一つ、、わしからのプレゼント兼最終試験じゃ」
グリーナ達は近くの広い野原まで移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます