第113話火竜豚の豚骨ラーメン

 豚骨ラーメン 

 

 今まで家系や背油たっぷりの背油ちゃっちゃ系、塩などやってきたが、今回は家系の様な醬油豚骨ではなく豚骨に焦点を当てていきたい。 

 

 豚骨ラーメン、それは九州の博多を代表する。 

 

 豚骨ラーメンと言えば博多、博多と言えば豚骨ラーメンと言うほど代表的で長く人々に愛され、なんといっても美味い!博多ラーメンこそが豚骨を深く熟知し極めたラーメンの一つと言っても過言ではない、日本人のラーメン愛が詰まった極致の一つの到達点といってもいい程、洗練されているのである。 

 

 豚骨と言えば濃厚!味が凝縮されている!と思いがちだが、博多のラーメンは豚の旨味を強烈に感じるものの、実はとてもさっぱりとしていて食べやすく、その為に酒を飲んだ後の〆にも選ばれ、そして細麺故に食べやすく替え玉と言うシステムで何度でも食べたくなる一杯なのである。 

 

 店内の強烈な豚骨臭を苦手と断じる人もいれば、これこそが豚骨と食欲そそられる人もいて、臭さ故にラーメンを苦手とする人もいるが一度憑りつかれるともうこの豚骨のにおい!味!が魅惑的で忘れられず、引き寄せられるように毎日でも通ってしまう様になってしまう程中毒性もある。 

 

 関東ではバリカタの名で呼ばれているが、お店によってはべた生と呼び、べた生とは脂たっぷりで面硬めを意味する。 

 

 お店によっては乾麺を使う店も存在していて、乾麺をしようしているからこその硬めの茹で方は芯が残っていてパリパリぽきぽきといった食感も楽しく、また元々は仕事で忙しい人達が調理時間をまっていられないからこそ素早く提供するために細麺が始まり、バリカタといった茹で時間の短い硬めが好まれていたのである。 

 

 古くから愛される元祖長浜屋はべた生で注文すれば、来店して2分で提供される素早さと長い間値段を変えていない500円と言う驚きの安さで、これぞ博多ラーメンと言う至高の一杯を頂ける。 

 

 ラーメンにいれられるきくらげなどは元々材料が少ない時代の試行錯誤の名残であり、紅しょうがは豚骨の悪臭を少しでも和らげるためにいれられていると言われている。 

 

 以前斗真は家系ラーメンを黄金豚でスープを作ったが、果たしてそれが正解であったのか? 

 

 黄金豚は栄養を黄金に変える特殊な豚で死後、素早く解体しないと体内の栄養が骨や表皮に変換される為黄金が目的の場合は死後放置され、肉が目的の場合はスピード勝負で解体しないと肉に回るはずの栄養が骨や表皮を黄金に変え、肉はパサパサと味気の無いとてもうまいとは言えない肉に変ってしまう。 

 

 だからこそ、黄金に変る前の肉や骨は爆発的に美味く、他の豚とは一線が違う程肉の食感や匂い味なども抜群に高貴な匂いや味を放つ。 

 

 濃厚な家系の醬油豚骨には抜群に合う出汁がとれる黄金豚だが、豚の旨味満点でありながらも軽く何度も替え玉したいと思わせる博多ラーメンとは違うと思えた。 

 

 そうそこが博多ラーメンの素晴らしさでもあり難しさでもあるのだ。 

 

 豚の旨味満点なのに濃厚なはずなのに、その中身は替え玉せずにはいられない軽さのある軽快なスープ。 

 

 一種の矛盾を抱えているこのスープを九州の職人達は当たり前の様に作る!同じ日本人でありながらも、その豚骨に拘る九州人のその職人気質たるや、簡単に真似出来るものではない。 

 

 だからこそ斗真は何種類もある異世界の豚を吟味する。 

 

 腕が平凡なら素材だけでも的確な素材を使い、少しでも技術面の穴をふさがなくてはいけない。 

 

 鳥ガラをまぜる事も考えたが、その先はライト豚骨と言われる別ジャンルだ。 

 

 豚骨!あくまでも豚の骨で勝負しないといけないのだ。 

 

 ここで手に入ったのが、火竜豚!珍しい地龍豚の上位版であり、ダンジョン内で火竜が飼育した事により火竜の性質やマナを色濃く受け継いだ豚である!! 

 

 火竜豚の骨は普通に茹でても出汁が出ずらい、超超高温と圧力をガンガン使って旨味を抽出する。 

 

 野菜なども投入せず、また灰汁取りをする事もなく、火竜豚の骨が持ち上げて崩れる程煮込む。 

 

 その匂いの強烈さに、いつも何ものをも恐れない八百万の常連たちは戦慄し列が作れないでいた。 

 

 そんな中真っ先に並んだ二人の猛者、そうラーメンクィーン事豚骨狂いで知られるハイリューン・ヒルデガルドとオルレアン国の将軍ドティが誰よりも先に列に並んだのである。 

 

 他にもウェールズの曲者達、豚骨好きの奴らは吸い込まれる様に列に並び始めた。 

 

 リリが店先で説明を始める。 

 

 「今日は豚骨ラーメン!火竜豚の旨味たっぷりラーメンだよ!注文の仕方はナマは麺硬め、べたは脂たっぷり、普通は麺も脂も普通、やわは柔らかめだよ!銀貨一枚で替え玉といって麺がお替わりできる事と各テーブルにタレがあるから濃い味にしたかったら、そのタレで調整してね!お肉もお替わりできるし、ライスもあるよ!」 

 

 ヒルデガルド  

 

 「べた生とライスお願いしますわ!!!」 

 

 ドティ 

 

 「べた生!肉大盛で!ヤーーーーー!!!」 

 

 他の客も続々と店内に入ると、軽快に注文していく。  

 

 ヒルデガルドとドティの前に素早く運ばれてくる火竜豚の豚骨ラーメン。 

 

 まずはスープを飲む。 

 

 脂のこってり感を感じながらも火竜豚の骨が凝縮された、その味はまさに超新星爆発!脳内に豚骨と言う名のガンマ線バーストが駆け巡る! 

 

 具はネギに肉のみとシンプルでありながら、細麺をリフトアップしてすする! 

 

 スープと小麦の一体感にネギの青さが交わる!美味い!踊り出したくなる程美味い!だが!だが!まだここで負けるわけには!!! 

 

 目の前でドティがフォーエバーラブ(なんの歌かわからないが)歌いながら服を脱ぎ始めるが、そんなもんもうどうでもいい! 

 

 一口二口三口!濃い!濃いのに簡単に入る!重い所かステップ踏めそうなくらい軽い!そして肉!やはりとろける程美味い!肉を食い米をかっこみ!スープを飲む! 

 

 「替え玉!お願いしますわ!!」 

 

 肉にニンニクを少し乗せ、米を行く!よっしゃあああああああああああああ!そしてこのスープがかえしと言われるラーメンタレに邪魔される事なく豚骨旨味をどっしりと放つ。 

 

 運ばれてきた替え玉とサビまで始まったドティはねねに殴られやっとドティは静止してラーメンを食べ始める。 

 

 替え玉を入れ、タレを少しいれ麺をすする!濃厚さと食べやすいと言う軽さの矛盾した完璧超人が目の前で絶技を披露するかの如く喉を駆け巡る! 

 

 最初こそはちょっと軽すぎじゃない?なんて思ったスープもなんのその!飲めば飲むほど喉を通るその味は変化を伴い、またその味に米大好きなヒルデガルドは米と肉とニンニクを味わう!時折まぜるゴマがまた香ばしくていい! 

 

 麺で米が食える!スープで米が!肉で米が!そこにクセの強いニンニクを合わせると脳内麻薬がもうドバドバ出る!! 

 

 豚骨!豚の骨!それがどうしてこうも気高い開花をみせるのか!? 

 

 豚の骨を極めた人達、きっと連綿と流れる職人の血によって積み上げられた味の極致は、まさに人類の宝と言える! 

 

 ラーメン、それはいったいどれだけの顔、どれだけの種類が存在るのか?どうしてこうも人を魅了してやまないのか!? 

 

 愛ゆえに研究され、受け継がれ、知れ渡り、進化し、人々の生活に寄り添う。 

 

 私のラーメン、否!それ以外の食事に対しても美味な食事を探求すると言う道はまだまだ続く! 

 

 替え玉を三玉ぺろりと完食した私は店を出て風に当たる。 

 

 八百万でまた新しい味に出あい、世界また新生されたかのように輝いて見える! 

 

 ああっ!今日も自分が眩しいわ!!!

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