第99話十二星座団 アテナ 家系ラーメンを食らう

 ここは八百万 

 

 そして今回は寒いからこそのラーメン回、家系ラーメンの日。 

 

 八百万では毎日できるだけ違う物をとの理由で、同じメニューが何度も定期的に出るようになるには、ある程度お客様からの人気や食いたくて我慢できない!などの切羽詰まったお願いから、了承して作っているのだが、店主の八意斗真も、元々専門の料理人というほどでもなく、まぁよくて自炊で料理する人間って程度である。 

 

 そんな斗真でも、というか一般的な自炊で頻繁に作る料理もあれば、家系ラーメンなどのラーメンシリーズは現代日本の自炊という範囲から大きく逸脱したものだと理解してもらえると思う。 

 

 そう店もやらずに本格的なラーメンを作ろうなんて、何かのイベントか動画に投降する以外では中々に作ろうなどと考える料理ではないのだ。 

 

 現代日本の豚を使っても、お店によって深く味が変わる家系豚骨ラーメン、それを異世界の何万種類とある豚、肉ですら味わいが深く物によっては肉は美味いいが骨の出汁はいまいちなど、そう豚によって味ががらりと変わってしまうのだ。 

 

 ラーメン屋にとって桃源郷の様な世界がこの異世界である、何せ豚だけでも何万種類、鳥も併せても更に何万種類とあるのだから、絶対に他の店では出せない味の、その究極を目指す事ができるのだから、間違っても、家系?そんなん何処も似たような味だろ?なんて言葉!そんな鈍感な舌のセリフなど出て来る余地もない豚出汁、鳥出汁の世界!それがこの異世界なのである。 

 

 そもそも数ある日本の家系の名店、名が売れている店は確実に他の店では簡単に真似できない、まさに唯一無二の味を表現して、それでいて700~900円で食べれるのだから、唯一無二の味を持ちながらも、更に店主の経営の天才的手腕が見えるというもの。 

 

 斗真の異世界の豚を使った家系ラーメンは確かに異世界人には珍しく味も濃厚だが、現代人の舌に肥えた人間が食べたら別の名店の方が遥かに美味いと頭では考えてしまう。 

 

 そう斗真もまた家系ラーメンの入口、ラーメン道のほんの入り口で足踏みしている程度のまだまだひよっこなのである。 

 

 異世界の食材をふんだんに使っても、そう簡単に安安と超える事ができない味の頂が、現代家系の名店達なのである。 

 

 そして家系だけを語っているが、その頂の名店が塩、豚骨、醬油豚骨、味噌、二郎系、スタミナ系、にぼし系、背油系、どろ系、他にも各地方独特に広がり切磋琢磨しながらも独自の世界観のラーメンの美味さを広げている。 

 

 中国から伝わったラーメン!その味に憑りつかれた日本人の飽くなき探求心、ラーメンと言う麺料理を知ってからの歴史時代は浅く、まだまだ若いものだろう。  

 

 中国4000年の歴史からすれば赤子かもしれない、日本ラーメンの歴史!その歴史の一年一年はそれこそ血の様に濃く!そして日本料理や懐石料理といった伝統料理では出せない密度の人間の男たち女性たちの熱き血脈の流れ!これが今の日本のラーメン界なのである! 

 

 異世界の食材が使えるからとあなどるなかれ、極められた頂点の味と進化の歴史の味、そして今この時も進化していくラーメン達を、食材の美味さだけで簡単に覆す事はそうそう出来ないのである。 

 

 だがこの男!八意斗真も日本男児である!日本男児である以上!自らが求める味!理想の味!目標の味!目指すべき頂がある!「絶対!唯一無二!!」この言葉を目標に、一杯目よりも二杯目の方が美味く!二杯目よりも三杯目の方が濃厚で!三杯目より四杯目の方がまろやかで!病みつきになりと!この男も負けっぱなしで黙っているほど、こんなもんでいいやと投げ捨てる程、男を腐らせちゃいない!!! 

 

 進化!!そう八百万のラーメンから他の料理に至る、その一切すべては一度目の調理よりも二度目と格段に料理人として進化しているのだあああああ!ぶるぅううあああああああああああああああああああああああああああ!!!!! 

 

 そして今回その更に進化した一杯を食べるのは!この女!ラーメンクィーン・・・・・・ではないく。 

 

 十二星座団の頭領!可憐な少女戦闘集団の戦女神!アテナ! 

 

 ウナギのあまりの美味さに、世界の彩を、命の迸る生命を感じ!この世の夜明けという洗礼を受けた少女が家系ラーメンに立ち向かう!クィーンから作法は十分に教わり、今日この日を待ちに待った少女の感想は如何に!!! 

 

 十二星座団 戦女神 アテナ 

 

 震える様な寒さが続く今日この頃、八百万の方でも席を拡大して、並ぶお客さんをなるべく出さない方針で、どんどん店にお客が雪崩れ込む。 

 

 クィーン直伝の濃いめ硬め多めで注文して、席に座ると迅速にその麺は運ばれてきた。 

 

 煮込まれた濃い動物達の匂いが鼻をつく、でもそれは濃厚な証、凝縮された匂いにその温もりに頬が赤くなるのを感じつつも、まずはスープを飲む! 

 

 くぅぅぅぅ!これが!これが家系のスープ!必殺技を食らい、脳天から地面に叩きつけられたかの様な強い衝撃を受ける。 

 

 初撃からフルスロットルで舌を刺激し、濃厚さ、旨味の暴力を直撃させるその姿はまさに黄金の闘士!光速で動くその動きを止められる者はいなく、舌を蹂躙する。 

 

 がくんと崩れ落ちそうになる、あまりの美味さに膝と腰にダメージがきてガクガクになっている。 

 

 まだ序盤も序盤!味を確認しただけなのに、この威力!やられはせん!やられはせんぞ!!と意気込み、麺と絡まるスープを食らう! 

 

 ぐわわ!!!唐突に広がるアナザーディメンション!!!くぅ!まだ異世界に飛ばされる訳には・・・・・まだ敗北する訳にいかないんだ!!! 

 

 ここでまたクィーン直伝のテーブル調味料、ニンニクを取り出すと四角に海苔を広げ、思うがままニンニクのすりおろしを乗せる!これでもかと乗せる!そして麺の上に自分の適量のニンニクを乗せ、ほうれんそうをのせ、最後にのりを掴んで、一まとめに箸で掴んだら一気にすする!!! 

 

 うぉぉぉぉぉん!!!ギャラクシアン!エクスプロージュン!!星が!星が砕ける様が見える!!!ガツン!とした旨味!その旨味が一段階にも二段階にも膨れ上がり、ニンニクのパンチもあい途方もない中毒性が口と喉で暴れまわり、あまりの美味さに思わず顔がにっこりと笑顔になる! 

 

 喜んでしまう!味の暴力に喜んでしまう!こんな笑顔他の人に見られたら!何わろてんねん!って突っ込まれてしまう!でもこんなもん無条件に美味いのだ!ニンニクのにおいが気になる!?てやんでぃ!匂いを気にして家系が食えるか!ばぇかやろうめ!!!ニンニク如きで文句言う金玉も穴もちいせぇ男なんざこっちからごめんだね!雑草でもくってろ!こんちくしょーめ!!! 

 

 スマートな男性は女性の嫌な臭いなど指摘しなければ気にもしない紳士である。

 

 そして次に繰り出すのは、クィーン直伝のライスにニンニクを乗せ、ほうれん草をのせ、そしてラーメンのスープを少しかけ、そのご飯を海苔で巻いて食う!!! 

 

 うわあああああああああああ!!!!!ライトニングな!プラズマが!スターダストな!レボリューションが!スカーレッドな!ニードルが!体を駆け巡る!! 

 

 優勝!優勝してしまいました!おめでとうございます!!ありがとうございます!!!私は今優勝している!! 

 

 象に乗り、あえて日本の下町をパレードする事に意味があるかのように、家系ラーメンと言うスターロードは体を駆け巡り脳を占拠する。 

 

 それからはもう暴食の宴だ! 

 

 麺を食う!チャーシューを食う!麺を食う!スープを!麺!ニンニクと米!ニンニクと麺!スープ!麺!チャーシュー!麺!麺!スープ!麺!!! 

 

 うおおおおおお体が目覚める!!阿頼耶識に目覚める!!!血肉へと変わっていく栄養たち!漲る力! 

 

 おっと、完飲はご法度だと清々しく額の汗をぬぐい、最後に水をぐっぐと飲み干し、器をカウンターに戻し店を出る。 

 

 夢にまで見た甘くとろけるような食事の時間、ふはははははははっ!!強くなりたければ食らえ!!! 

 

 今の私を止められる者は誰一人としていない!!!邪っっっッッツ!!! 

 

 こうしてラーメン狂いは日に日に個性を増して増えていく。 

 

 作る事に進化する斗真のラーメン達とその味の虜になったお客さん達の戦いは続く!

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