第85話超常の存在、神獣
この世界は人類の物か?人類はこの世界の事を知り尽くしているのか?
そう聞かれると人類は繁栄してはいるが、一部地域につきという言葉を付けるのが正しいだろう。
魔物だけの大陸、魔物だけの国、修羅界がこの世に現れたかの様な弱肉強食の大陸、自然のみが存在する事を許された暗黒大陸や海底都市、空中都市に地下帝国、わたる事の出来ない海や空からの侵入を拒む大地、強力な磁場と重力変動に守られた大陸や毒の世界または忘れ去られ何もない土地や、移動大陸など様々な大地があり、その大陸で覇権を争っている種族達もいれば、すでに大陸を自らの種族のみで制覇している種族なども存在する。
地球よりも遥かに巨大な惑星。
人類の生存権はその一部も一部でしかない。
そしてこの世界でもっとも尊い種族、神獣種、この広い世界の均衡を保つ為に神が作り出した種族であり、彼らは代替わりを続け、永遠にこの世界を守る種族でもある。
狼のフェンリル、龍のアルビオン、蛇のケツアルコアトル、猿のハヌマン、兎のアルミラージ、狐のクラマ、猫のキャスパリーグ、鳥のガルダ、馬のスレイプニル、牛のアステリオス、鹿のアクリス、獅子のネメア、猪のカリュドーンと他にも様々な神獣が今この時も生まれては死んでを繰り返し、世界を見守ってきた。
人類にとって邪神との戦争は、自らの生存をかけた戦いだったが、神獣達にとっては預かり知らぬ事、人間同士が戦争でこの星からいなくなっても、邪神によって滅ぼされても、神獣達には関係がない、また神にとって、その世界が邪神によって壊されても、何万何億とある銀河の一つが果物の様に腐ってしまった。
神獣と言う抑止力を置いたが、うまくさどうしなかったか?じゃあこの世界はもう一度リセットして初めからやろう程度の感覚でしかない。
神獣達は神に遣わされたと同時に、自分達で自由に生きてもまたいいのである。
自らの血を分けた血族で大地を支配しようとも、世界のどこかに隠れ輪廻を繰り返しても、人間に力を貸すも、邪神に力を貸すも、自由にしていいのである。
そんな超イレギュラーな存在が、神獣種なのである。
神獣は記憶を引き継ぐが、前の自分を自分とは思わず、物語の一つとして記憶している。
だから前の自分は、自分であって自分ではないので、輪廻を繰り返しているという感覚がほとんどない、毎回毎回新鮮な性を実感しているので、その代によって信念も心の変化も違うので、悪に染まる事もあれば、正しく生きようとする事もある、だがよっぽどの事がない限り世界を滅ぼそうなどとする存在にはならないし、そう作られている。
神が何の為にこの世界に神獣を作ったのか?それがわからない、後任の女神も対邪神や世界の均衡を保つ為に作った存在じゃないのなら?何故この世界の創始者の神は神獣を作ったのか?もう今最初にこの世界を見守っていた神はいなくなり、後任の女神が観察しているが、神獣達の存在理由は、そんな女神でも知らないのであった。
そんなこの世界を超越した、超存在として居続ける、神獣達、彼らは彼らで心の何処かにほしい物があった。
-???-
そう、懐かしい、とても懐かしい香りがした。
だから私はまだ生まれたばかりの体で、過酷な大地を駆け抜けここまできた。
私が、私であるずっとずっとずう~と前から、ほしくてほしくて、羨ましくて羨ましくてたまらなかったもの、それがそうもう目の前に。
「ああ、やっぱりにーにー声が聞こえるとおもったら、子猫だ」
子龍を肩に乗せた男、人間の男が私の近くにきて、私の事をその両の手で包みこんだ。
「お前の親はいなくなっちゃったのか?連れてってもいいもんなのかなぁ?親が探してたり、ここら辺が活動範囲でほおっておいてるのかな?動物用のミルクあったかな?」
暖かい手で優しく優しく、私を大切なもの、宝ものの様に慎重にあつかってくれる。
「みるく飲むかな?てか差し入れにまざってたけど、こっちの世界のかな?日本産っぽくないし、アリス大丈夫だと思う?」
「くぁ~!!!」
「なんでお前ちょっと怒ってんの?お前の弟か妹になるかもしれんのだぞ。どっちだ?妹っぽいな」
「くわぁぁぁぁ!くわわわ!」
「叩くな!髪もひっぱるなよぉ~、おぉ飲んでる飲んでる、かわゆいのぅ~」
私は見た目は子猫だが、なんでも飲めるし食べれるのだが、差し出されるがまま哺乳瓶でミルクを飲む、美味しい。
懐かしい匂い、父母の香、主様の温もり、そう私がほしかったもの。
愛されたかった。
ただそばに共にいて、一緒に寝て、食べて、笑い、怒り、安らぎ、そこにいるだけでよかったもの。
もう離れない、今度はなくさない、私がしっかり守ってあげるのだ。
主様と共に一緒にいるのだ。
今度こそずっと一緒に。
種として命の長さが違くとも、何度生まれ変わりの度にすれ違ったとしても、遠いいつかに必ず交わる時がくる。
また一緒に過ごせる時が来たのだ。
だからまた今回の生が終わるまで、また主の側に、温もりを。
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