第62話十二星座団の帰還
ウェールズ冒険者ギルド
ウェールズ近郊にあるダンジョン、中は異空間化しており、森林地帯や砂漠、湖に海、氷河に溶岩など過酷な環境のゾーンが存在するが、それ故に手に入る魔物の素材の幅は広く、また宝箱を誰が設置しているのかもわかっていないが、高級な武具や過去の文明で栄えたアーティファクトなどが様々に配置されている。
また鉱石や薬草、霊薬など貴重な品が自生していたり、また魔物から採取できる皮や肉、爪など武具や薬になるものも多く魔物を倒しに行くだけでかなりの高額報酬が約束されるダンジョンである。
このダンジョンがあるから、ウェールズには冒険者が集まる、都市で念入りに準備をして探索するのだが、長い時は一か月二か月の長期探索となり、複数のマジックバックが満タンになるほど、素材の回収、お宝の回収をする。
一か月二か月潜るだけあって、報酬はかなり高い、ただの荷物持ちですら、年収分うまくいけば一年と半年分の給料を得る事もある。
このうまくいけばとは、通常の魔物を狩り続けていけばと言う意味であって、中にはレアな魔物が出たりアーティファクトがでたりなどのお宝分は別会計なので、実際の給料では2年分3年分と行く事もある。
それだけ肉や魔石の質がいい魔物は強く、もちろん命の危険度は跳ね上がるが、それなりに上がりも多いので人気のダンジョンである。
ダンジョンに長期潜っていて、街に新しい店が出来ているなんて事はよくある事で、八百万が出来てこれからの飯に期待していた中、ダンジョンに潜る事になって何日も食べ損ねた冒険者はかなりの数帰ってくる事になる。
生きて帰ってあの店に・・・・・・あの店でまた飯を食うんだ!!
材料が豊富にある序盤の飯は全然いいのだが、問題は帰りの飯だ。
後半になればなるほど、飯は質素になっていく。
まともな飯を食っていないと思い出す料理の数々に夢を見る。
この世界の人間、普通の人間もあわせて、非常に食事を食べるし、それだけの量を食べてもそう簡単には体系に出ない。
一か月かそこらは水と干し肉だけで生活できる程、エネルギーを蓄える事が出来る。
だがこの間の大会の様に一回の試合にフルカロリーを消費しての全力戦闘などする事もある。
これが異世界の人間である。
「十二星座団がダンジョンから帰ってくるらしいぞ!」
「ばっかおせーよ、もうすぐそこまできてるつーの、アリエスの旗がもう門の前まできてたぞ」
「今回は長かったな、何階層までいったんだろ?」
「目標は80階層って話だったらしいけど、他階層でもゲットしときたい霊薬や薬草類はあるからなぁ、順調にいけば80階層の何階かはクリアしてるんじゃないか?」
「この前は火竜5頭に黄龍も3匹くらい狩ってきたからなぁ、今回はどんな魔物が市場に流れるか楽しみだな」
冒険者ギルド内 十二星座団 団長 ユピテル
「今回の遠征も疲れたわ~・・・・・帰ってきて風呂入って寝て、やっと落ち着いたわ。他の団員も続々帰ってきてるし」
「相変わらず、自分だけ抜け駆けして先に帰ってくる癖ぬけてないっすね」
「だってうちら帰ってくるたびにパレードなんかしてたら、そりゃ息もつまるってもんでしょ?ところでさあたしのいない間、あの店ではどんな料理がでたの?ほら遠征いく一日前によったんだけど、ニーアねぇがご執心の店」
「八百万でしょ?ユピテルさんがいない間も人気はうなぎのぼり、中つ国の十二天が八百万の店主奪還に国境付近に集結してたらしいですよ」
「一料理店の店主奪還にあいつらが動くなんて!?」
「メニューだけならギルドでも保管してありますよ。見ます?」
「見る見る!!」
「やっぱ八百万と言えば、一番人気の家系ラーメンとライスは外せないっしょ!あのクリーミーなスープに抜群の動物性の味!旨味で舌がどうにかなりそうなくらい口の中で膨れ上がる味の濁流は一度飲んだらやめられない味っす!」
「俺は天丼と蕎麦だな!風味がいいよ、もちろん香りもな、風情っつうか、んでもって揚げてある野菜たちと甘いタレこれがなんとも雅でなぁ、米とも相性がいい!揚げたてのザクザクサクサクなのがいいんだよなぁ」
「嫌々、八百万といったらイール!うな重っしょ!レシピが出回ってるのに美味いのは八百万だけなんだから!あの邪魔者のイールがご馳走になるんだよ!あの安さであの美味さははっきりいって反則だって!他の店のはいまいちなんだよなぁ」
「地龍だって美味いぞ!他の高級店と比べても八百万の方がうまいと思うね!確かに店にはそれぞれ伝統だの、秘伝だのタレがあったりするが、八百万の本能を揺さぶる調理は唯一無二といってもいいんじゃないか?それなりに高級店にもいくけどよぉ、八百万の方が衝撃つ~か、なんつうか、やられた!って感じがしたりする味だったり、かと思えば虜にする味だったりで予測がつかないんだよな」
「そうだな、美味いからって魔物の舌を出す店なんか八百万くらいしか知らないな、内臓料理もだ。内臓だがらそりゃあくせぇもんだけど、食ってみると臭みなんか感じないんだよな、ありゃあどうやってんのかしらねぇけど、手間は相当かかってるはずだぜ、魔物なんか腹開く前から独特の獣臭がするもんだし、戦闘で腹かっさばいちまったら、血と内臓の匂いで獣や魔物が寄ってきちまう、それぐらい強い匂いなのに、食うとこれが不思議と香りもいいんだよなぁ。ありゃどう考えても店主の斗真の旦那の腕がいいからだと思うぜ」
「昔の戦争時代なんかは内臓も食ったって話だけど、今じゃ内臓食ってる間に本命の肉の消費が追っつかないから、内臓は捨てられるようになったって文献で見た事あるな」
「他にも八百万でしか食えないもんもあるだろ?生の魚に生の肉!嫌、俺も生肉なんか食っても美味いとはおもわねぇだろと思ったけどよ、八百万て食ったユッケ?だっけ?あれとか薄く切った刺身なんかタレつけて食ってみると、これが悪くないんだよなぁ、んでもって炙る奴な、半分火が入ってるあの焼き加減、生に見えて中心にもじんわり火が入っていたりと中々技術もいるようだったぞ、生の時の赤身具合と、ほんのり火が入ったレアで見比べさせてもらった事がある」
「内臓に抵抗なきゃ夜の部も楽しいぞ、美味い安い早いの三拍子に酒も極上!んでもって記念日なんかは斗真の旦那からたっかい酒ご馳走になったりよぅ、おらぁ八百万ができてから毎日が楽しくて仕方ねぇよ、昔みたいに一人でギルドで飲んでるのなんて思い出したくもねぇな」
「そうそう冒険者同士の間の溝?っつうか結束が強くなったよな!下の奴の面倒もみるし、困ってたら誰かに相談すれば話に乗ってくれる奴も手を貸してくれる奴も増えた。そういうのってPT内だけとか、クラン内部同士でしか助け合いなんかなかったもんな、この街はソロにも優しいし、ソロ同士で臨時PTなんかも組む様になった。それもこれも八百万で集まって酒飲む様になってからだ。斗真の旦那は俺達に誰かに頼らなきゃいけない時は誰もいなかったらここにこいって、そうすれば誰かしら話聞いてくれる奴はいるもんだって、飯で困ってるなら俺が奢ってやる、酒も飲みたいなら夜にくればいいって、金ない俺らでも受け止めてやるから頑張れっていってくれた」
「金もなくて歳をとっちまった爺さんや婆さんの料理の監修してんのも八百万だって話だし、ギムレッドさんを通して結構な額寄付してるって話だ。今度アーサーさんと話して冒険者が怪我や病気の時の金や面倒見てくれるサービスも始めるかって話だしな、まぁ金は積み立て式で取るらしいが、魔動義手や義足なんかで第一線に戻れる様になんなら考えてるとか」
「なんかあの人俺らより俺らの事考えてくれてるもんなぁ」
自分の知らないうちに街には活気と八百万の話をすると、人が次々と集まってくる状況が出来上がっていた。
へぇ~面白そう、星団のみんなを連れてぜひ店にいかなきゃいけないわね!!
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