第30話店を閉めるか?やり続けるか?

 ほどなくしてアーサーさんにガウェインさん、グラナダさんに加えてギムレッドさん、ルーカスさん、クリスタさんも八百万にやってきた、お昼の営業は今日の所は一旦休業と言う事で、お客さんには申し訳ないが、並んでいる人達には夜の部一杯サービスすると言う事で解散してもらった。 

 

 アーサーさん達は何が起こっているかわかっていない、クラウスさんが一番最初に口を開いた。 

 

 「まず初めに私は国王様の命でこの場にいます。もちろんランドルフ様から呪いの情報をもらった後国王様に謁見しこの街にきました。街に入った時点で主なSSS級の戦力の持ち主の居場所を把握、ギムレッドが一番近い事から、斗真様の護衛はギムレットだと勝手に思っていました。ニーア達が入店したドアが開いた瞬間に闘気を解放、この辺り一面は私の闘気で覆われました。それに気づきいち早くギムレッドが登場しようなら私は、斗真様に仕えたいなどと言う事はなく、王都に戻り、従者部隊に復帰していた事でしょう。SSS級が5人もいて、その内三人はついさっき来たばかりという愚鈍な者ばかり、この様な環境に斗真様を置いておく事はできません。それ故これからは私がお仕えすると言う話になったのです」 

 

 「なるほど、行動が遅かったから殺気に怒気に闘気までこの辺りには充満しているのですね。おかげで並んでいた客が少なくなって助かりましたが、クラウス殿怒りを治めてほしい。他に誰か言う事はあるのか?」 

 

 ギムレッドもクリスタも俺がどういう人間か知っている、よく落ち人や稀人などといわれているが、どうにも聖人扱いといい価値ある扱いをしてくれていた、俺は自分が重要な人間には思えないし、基本八百万から外に出る事はほとんどなかったので問題ないと思っていた。 

 

 「稀人、それだけでも彼の命は王族並みに重くなる!!更にはクリスタ君が聖人認定した事で、その価値は更には値上がり!毒無効に解呪の力により、更には世界が彼を欲しがる程に強大な人物となった、もうSSSが5人程度街で守っているぐらいでは抑止力にすらならんのだ!弱い国は交渉で、強い国は状況をみて力づくで動く局面まで事は動いていた。中つ国の十二天を相手に従者部隊序列1位が奴らの侵攻を止め、序列2位が妨害の兵を送り、この国は何事もなく運営されているかのようにみえていた、王都にはラウンズもいてウェールズにはSSSが5人いるから王家は・・・・お前達に任せたのだ、私が刺客なら斗真殿はすでに死んでいるか、攫われ自国の者と迎撃準備が整い逃走経路を確保していた事だろう、何か申し開きはあるか?」 

 

 誰も何も言えない、強い沈黙の空間が流れる。 

 

 「私は何も急に来て、お前たちの対応に怒りを抱いているわけではない・・・・・私は街の外で一度、門をくぐり二度、店で3度目の闘気を解放した、一度目の闘気開放に反応して私に警戒したのは、この街に潜伏する王家直属の影たちだけで、お前たちの気配は警戒すらしなかった挙句異変に気付く事もなかった!!」 

 

 闘気でどうのって、そんなに気づくものなのかな?俺もねねも普通にお爺ちゃんだと思って対応したんだけど、それも危機管理ないって怒られる事にならないでしょうか? 

 

 「気づかなかったら、それも仕方あるまいですむレベルの話ではなく、中には異変に気付いてそれでも動かなかった奴等、そいつらが一番質が悪い、その点ではニーアとフィガロはいち早く店まで現れた、私と気づいて逃げたけれどな」 

 

 「流石にあれだけ闘気振りまいてたら、とんでもねぇのが来てるってわかるもんだよ、フィガロも殺気がないから大丈夫だと思うって言ったし」 

 

 「殺気がないから大丈夫だと・・・・てめぇらどいつもこいつも本気でそんな事いってんだったらマジで俺が皆殺しにするぞ、餓鬼共・・・・・・・・・」 

 

 冷たい空気が流れる、自然と呼吸が出来なくなっていく、猛スピードで体に何かがかすめているかの様な感覚、当たらないで安心している感覚と当たったら確実に死ぬ事がわかってしまう謎の感覚により、その場を動くどころか呼吸が鈍くなる。 

 

 「おっと失礼、殺気とはどんなものか理解いただけたでしょうか」

 

 「ハァハァハァ・・・・」 

 

 俺は汗が体から自然と溢れ出ていた、そしてクラウスの言葉にただ頷くしかできなかった。 

 

 沈黙を破る様に、一人の女の子が店に入ってきた。 

 

 「もぅ!クラウスさん!お説教で殺気だすのやめてください!!誰も近づきませんし、興味本位で近くに来た人が、臨死体験しちゃうじゃないですか!!まったく」 

 

 「ぬぐっすまん、呪いが解けたのとこいつらの不甲斐なさにな・・・・挨拶しなさい」 

 

 「王家直属従者部隊!序列6位!ルーナ!ただいまより稀人、八意斗真様の守護に入ります!よろしくお願いします!ねね様!リリ様!なんなりとお申しつけください!」 

 

 「これより、八百万亭はもちろん斗真様、リリ様、ねね様は我ら従者部隊がお守りいたします。常にナンバーズの誰かが御側に仕えさせていただきます」 

 

 ニーアとフィガロさんは苦虫潰した様な顔をしている、クリスタさんもルーカスさんもギムレッドさんも自分が失った信頼や色々な思いがあるのだろうけど、大失態を犯して怒られる子供の様な顔をしている様に見えた。 

 

 「本気でその小娘で、私達より斗真を守れるって、本気で思ってるのか?クラウスにい!!」 

 

 「私の実力を測りたいのなら、お相手になりましょうか?かつての災害様達・・・・元SSSランクの皆様?」 

 

 ルーナのこの一言に5人はカチンときたのか、目の色が変わる。 

 

 「どうぞお一人と言わず、お二人と言わず、皆様で力を合わせて向かってきてください」 

 

 この一言の後、5人は猛獣が如く飛びかかるも。 

 

 ナンバー6のルーナの前に寸止めと言う形で、静止したかの様に動きが止まる。 

 

 「馬鹿者共が、店はもちろん街まで破壊する気か?」 

 

 5人全員が無数の糸によって、その場に縫い止められた様な形で静止している。 

 

 それにしても物凄い音と衝撃が舞った様に感じたけど? 

 

 「誰お一人の攻撃も・・・・私の結界を貫く事叶いませんでしたか、まさかクラウス様が止めたからだと思っていませんよね?ご自身が一番わかっているはずです、最高の攻撃を防がれたと・・・・矛盾せず、鉾からは血が・・・・」 

 

 ニーアもフィガロさんもクリスタさんも手から血が流れていた、まるで硬い物を思いっきり殴って傷がついてしまったかの様に。 

 

 「ニーア、フィガロ、ルーカス、クリスタ、もう帰るがいい、もちろん客として来るなら歓迎する、ギムレッドは残れ、宿については商業ギルドの手を離れ、公爵家のアーサー様、牽いては王家が引き継ぐ、以上だ」 

 

 ニーアさんフィガロさんルーカスさんクリスタさんギムレッドさん、みんなが協力してくれて、この五人に後押しされて、俺は店を開いた、むしろ護衛までまかせるなんてそんなの酷すぎる、みんなで一緒になってここまで来たのに。 

 

 「クラウスさんが護衛してくれるのはありがたいです。でもニーアさん達は常連客以上に大切な人達なんです。みなさん仕事がある中、それでも俺達の事気にかけて、気にしすぎなくらい気にかけて、親切にしてくれていました。解毒や解呪の力は確かに凄いんでしょうね、でもそんな能力ない時からの付き合いなんです。彼らにとって兄であり、きっと鍛えてもらったりした中なのかもしれませんが、彼らなくてこの店は開けませんでした。これからも特別な友人としてお店にはきてもらいます!それはかまいませんよね?」 

 

 兄だからかなにか知らないけど、ちょっとの事でこんなに怒るなんてって俺が守ってもらってる立場でありながら口出すのはおかしいけど、言わずにはいられなかった。 

 

 「関係を絶てというなら、店は閉めさせてもらいます。もう会う事もないでしょう。それが望みですか?」 

 

 「友人が叱られて頭にきたのはわかります。ですがこいつらは稀人の価値、偉大さ、過去の英雄を知りながらもミスを犯しました。その結果、斗真様ご自身が死ぬ事になっても、ねね様もしくはリリ様が死ぬ事になっても後悔はないと?」 

 

 「もちろん、ねねとリリの事は最優先で守ってほしいです。でも間違って俺が死ぬ事になってもそれを彼らのせいだとは思いません。俺がいる事でねねやリリが危険になるなら俺はもうこの世界にはきません」 

 

 「嫌!やだよう!お兄ちゃんともう会えなくなるなんて!お父さんもお母さんもいなくなったのに!お兄ちゃんもいなくなっちゃうなんて嫌だよぅ」 

 

 「私も嫌!手を伸ばしてくれた人はいっぱいいたけど、お兄ちゃんは私達がいて当たり前みたいに接してくれた!いきなりあっただけなのに家族みたいに!!」 

 

 リリとねねは俺にしがみ付いて泣いている、でも俺の能力が問題で命の危険に会うのなら一緒にはいれない。 

 

 「斗真様も怒りを静めてください、ねね様もリリ様もこれからは私達がお守りします。斗真様はいつも通りお好きに振舞ってもらって構いません。兄貴分とは言え、斗真様にとっては大切な友人達を叱り飛ばしてしまい申し訳ありませんでした。もちろんこれからも交友を温めてもらって構いません。今回は一つのけじめとして叱ったのです」 

 

 「そうだ・・・・・斗真、俺達が悪い・・・・・実力があり、お前がどれだけ大切な人間か知りながら、どこか気が抜けていた、油断してた俺達5人が一番悪い、すまなかった」 

 

 「この世界にはクラウス兄様の様な強者もまたいます。私達の備えでは斗真さんを守るのには全然足りてなかった、力も知恵も・・・・」 

 

 「情けない話、私が一番の大失態です。一番近くにいながらこの体たらく・・・・」 

 

 ルーカスさんもクリスタさんもギムレッドさんも悲しそうに謝罪する。 

 

 「斗真、お前の家部屋あまってるか?」 

 

 ニーアさんが急になんか聞いていた。 

 

 「余ってますけど・・・・」 

 

 「じゃあ私も八百万に住む!斗真の家に住む!文句ないよな!!クラウスにい!」 

 

 「否、ニーアさんはギルドの仕事があるでしょ」 

 

 「もちろん、ギルマスの仕事も辞めない、辞めたらお前さっきから泣きそうな顔してんのにガチ泣きするかもしれないからな、ただ仕事以外では一番にお前を守ってやる、リリもねねも・・・・」 

 

 「斗真様がいいなら私に否はない、好きにすればいい」 

 

 「だとよ、これならお前も安心して飯屋できるし、私も食いっばぐれる事もないって訳よ!」 

 

 「はぁ・・・・」 

 

 「俺もルーカスも店があるし、叱られたが、クラウス兄貴の言う事はもっともだ。むしろ一緒に反省して素直に守ってもらおうぜ、もちろん俺達5人も鍛え直しだな・・・・・情けねぇ」 

 

 え?何?結局ニーアさんは一緒に住む事になったの?クラウスさんとルーナさんはどうすればいいの?この二人も八百万に住む訳じゃないよね?深刻な空気は段々と和らいでいった。

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