第17話夜の部に串焼きはいかが? 中級冒険者レオン
フィガロさんの所で俺が内臓を食えると言ってから、フィガロさん達は内臓を保管し続けてくれていた、日に入ってくる肉が大量にあるので、1日分の動物の内臓でも相当な量である、それが数日分かなりの量が保管されている。
マジックバッグに受け取って、リリから貸してもらったマジックボックスに内臓は保管されている、休みの日にでもまとめて下処理をしてカットして使いやすい状態で保存しよう、その次に串焼きの様にして焼いて熱々の状態で保管すれば、注文をもらって焼くのではなく、直ぐにマジックボックスから熱々の串焼きのモツが出せる、これはかなり便利だ。
しかも内臓はまとめて銀貨1枚、タダでもいいと言われたのだけど流石に申し訳ないのでお金を払った、色んな種類の牛型の魔物や豚型の魔物、鳥型の魔物の新鮮で、しかも種族によっては滅茶苦茶美味い内臓がタダ!これは使わない手はない!しかも骨までもらってしまっているのだ!出汁なんかとるのに丁度いい。
魚屋のルーカスからはイール、うなぎがタダでもらえるのだ、しかもタートルもどきが入ってきたらこれもタダでいいって言われている、これにも申し訳ないので少しだけお金を払わせてもらった、他にも大型魚の頭や身のついた中骨、肝に心臓、胃なども保管してまとめてくれるらしい、これは嬉しい。
内臓の日やイールの日を決めて、うなぎを安値で大量放出したり、モツの日って事でちまちまと仕込んで焼いた串焼きをまとめて放出したりするのもいいだろう。
もつ焼きや串を出すとなると、問題はやっぱりアルコールだろうなぁ~なんて思っている、否別にアルコールを出すのはいいんだけど、店主は酒が飲めないので、作法などを知らない、名前ぐらいは知っているけど、日本酒に熱燗、ぬる燗とか、ビールは缶の物を大量買いすればいいだろう、日本酒やウィスキーなんかは、俺がネットで良さそうなの注文して適当に出すって事でいいかな?。
夜と言うか夕方と言うか、6時くらいから8時くらいまでの営業でもいいかな?もっと長い方がいいのかこれも話し合わないとな
と言う事で、仕事終わりのニーアさんに来てもらったら、何故かクリスタさんとギムレッドさんも話を聞きつけて遊びにきてくれた。
「はい、もつの串焼き右がタレで左が塩ね、それと俺が出そうとしているビール、こっちの世界でエールだっけ?になります。あと枝豆、これも美味いよ」
「串焼き一本銅貨1枚ですか!?安いですね!しかも美味い!ゲテモノってイメージもありますけど、実際食べてみると本当に美味しいんですよね!」
「このエールも美味いなぁ!串焼きによく合うよ!これ一本銅貨二枚ってのも安いな!今日は気持ちよくねれそうだ~~!」
「確かに夜営業してくれるのは嬉しいですね!しかもこのエール他のと違って、喉に引っかかることもなく、ごくごくと飲めてしまいます!すっきりと透き通った味が凄いですね」
お酒の美味さを理解できないので、俺はなんとも言えない、だけど串焼きの方は問題ないみたいだ、銅貨一枚と安いけど、その分量でカバーかな、タダじゃなきゃ出来ない商売だ。
「ハツ、心臓は血なまぐさくなくこりさくのむっちりとしていて、レバーはねっとりとろける様な味、フワ、肺のもっちりとした触感!ミノはむっちりとしてじゅわっと脂が出る!」
「センマイとハチノスのこりこりの噛み応えもいい!シマチョウマルチョウも脂じゅんわりで美味いし!タン!さっぱりしてるくせにサクサクと喜ばせやがる!シビレ!脂が甘くでうめぇえこれで米も食えるって味だ!」
「ウルテにネクタイ、ザックザクコリコリと音がなるほどの触感!タチギモ!ツラミ!コブクロ!にチチカブどれも普通の肉屋では出ない部分ですね!どれも風味や美味さが違って美味しいです!タレがまた味や臭みを消すのに一役買ってますね!アキレスのプルプルした触感もいい!」
ねねとリリいなくても今なら俺だけでも回せるな。
あんまりお客さんが入る様ならヘルプが必要になるけど、何より仕込んで焼いて、保管すればすぐ出せるってのはいい事だ、他の料理達も保管してすぐ出せる様にすれば、回転率がちょっとでもあがるかな?それに俺もホール手伝える様になるし、いいこと尽くめかも。
と話ながら明日出す、ウナギを蒲焼きにしていく。
「ちょっと!滅茶苦茶いい匂いすんだけど!それあたしにも頂戴よ!」
「これ明日のウナギなんだけど・・・・いいんすか?今食っちゃって、明日の楽しみ半減しちゃいますよ」
「そう言われると・・・でも匂いがぁ!?ハツにマルチョウ!シビレにタン頂戴!あとエールも追加で!?」
「はいよ!」
「ああっ私も!チチカブにアキレス!ハチノスとツラミお願いします!あとエールも」
「どっちもタレでいいね?あいよ!」
「フワとシビレとハラミを塩とタレで一本ずつお願いします。あとエールも」
「あいよ!」
今お客さんが三人だけだから問題なけど、やっぱり人がきたら俺だけじゃ無理だな、リリにでも手伝ってもらわないと
中級冒険者レオン
俺は中級の冒険者レオン、冒険者なんて聞こえのいい事言ってるけど、要は個人で成果をあげる何でも屋だ。
子供の頃、両親は農家で自分は農家だけにはなりたくないと思っていた、朝から晩まで畑に心血注いで、丹精込めて作ったものが安値で買い叩かれていく日々を送っていれば、先祖の土地がなんて言って貧乏な生活をしていくなんて馬鹿らしいと思った。
子供の頃からゴブリンと戦って、なんとなく自分は冒険者になるんだろうな、なんて思っていた。
だが冒険者は冒険者で大変な職業だ、魔物に合わせた狩り方をしないといけない、皮をあまり傷つけるなや綺麗に捌けとか、現地で血抜きしろとか、薬草採取だってそうだ、この薬草は葉を使う、こっちの薬草は根を使う、そんなんは当たり前で、それでも近くに手ごろなダンジョンがあるので、数こなしていくとそれなりに金になってはしゃいだ。
大金貨を手にする様になって、生活が華やか?になり始めてやっと自分にはなんの楽しみもない事に気が付いた、日に日に溜まっていく金に執着しなくなり、仕送りもそれなりにやって、いっちょ前に酒なんか飲み始める様になっても、心はどこか空のままだった。
「おい!レオン!今日もつまんなそうな顔してんな!」
「ほっといてくれ」
「そんな事言うなって!例の店一緒にいこうぜ!なんでも夜営業始めたんだってよ!早速マスターが入り浸ってるって話だ!他の奴らが押し掛ける前に食いに行こうぜ!」
なんでもない顔なじみに引っ張られて、ふらふらと最近色々と噂になってる店まできた。
どいつもこいつも飯や酒ぐらいでガタガタ言いやがって、腹に溜まればなんでもいいじゃないか、飢えた事がないから味や質なんかを求める事になるんだ。
「いらっしゃい」
「うぃっす!斗真さん夜始めたって言うから、早速きちゃいました!夜はどんなメニューなんですか?」
「主に串物を出しています。串の盛り合わせなんか色々味わえていいですよ。それとエールもはじめましたんで、よかったらどうぞ」
「じゃあ串盛りとエール二つお願いします!」
「はい!いつもありがとうございます!」
可愛らしい狐人族の子が注文を取ったと思ったら、すぐに串盛りとエールは運ばれてきた。
随分と早いな、手を抜いているんじゃないだろうか?
「じゃあ乾杯すっか!んこれ、ああっこうやって開けんのか。それにしても随分冷えてるエールだな」
俺も同じ様にエールを開けると、とりあえず飲む。
「おお!なんだこれ!」
「くぅううう美味いなこれ!冷えてるのがまたいい!」
喉を駆け抜ける爽快感!味わいのある苦味!こんなにエールって美味かったか?
「どれ串を一つ・・・おお!こりこりしてやがる!タレの甘味と何とも言えない旨味!なるほど!ここでエールをんぐんぐんぐっったは~!!!うめぇ!!」
一々美味そうに食いやがって、俺も遅れながら串を食う。
見た目じゃなんの肉かわかんねぇ、けどこいつはうめぇ!よく焼けて香ばしいのに甘味あるタレと脂の美味さがかけ合わさり何とも言えない美味さだ!次は?ねっとりこってりとしたうま味のある串!こりこりの食感が気持ちいい串!どいつもこいつも食感がまず違う!それでいてどいつもこいつも独特の風味を放ちやがる!嫌な臭いはねぇ・・・これは丁寧な仕事してんな。
そんでもってまたエールが美味い!組み合わせがいいのかわからねぇけど美味い!。
「なぁ店主さん!これなんの肉なんだ!?ってすまねぇ答える訳ねぇよな商売のネタだもんな」
「これは肉屋で廃棄される予定だった、内臓達ですよ」
あっさり答えてくれたのと、普段は食わない内臓と聞いて二重に驚いた。
「これが内臓!?美味い肉ならいくらでも売ってるのに、なんで内臓?」
「だって手間暇かけてやれば、こんなに美味くなるのにもったいないじゃないですか。下処理さえちゃんとやってやれば、物によっては肉より内臓が好きなんて人もいるくらいですよ?」
確かにと思った、事実この人の出す串物は全部うめぇ、手を抜いてこんな味が出るわけもない、確かに手間暇かけた味だ。
「そんな簡単に教えていいんですか?真似する奴でるかも」
「真似する人が出るくらいで丁度いいんですよ。それにね普通に肉出すより手間も暇もかかるから、最初は挫折するでしょうね。それでも店に並ぶって事は自信があるって事です。お客さんに出して満足してもらえる品ってわけですよ」
なんかわからんが、心の空洞が埋まった感じがした。
じんわりと腹や胸が熱くなるのを感じる。
毎日どこか機械的で、ただ金稼いで、食って寝て、を繰り返していた俺の心に熱が入るのを感じる。
そうか、飯屋も客と勝負してんだな、自分の自信あるもんを客に出して美味いって言わせたら勝みたいな、そう考えると商売してるやつらは、みんな客と勝負してんだなと思った。
「それにお客さん、こんなにいい内臓他に中々ないですよ。きっと狩ってきた人が丁寧に扱ったんだろうね。血抜きもしっかりしてある、肉屋の中には肉にまで血が回って駄目な肉売ってる所もあるから、命がけで狩りしてきてくれた人の為にも、美味く料理してやんなきゃ可哀そうだってなもんだ」
俺達が狩ってきた獲物がこんなにも美味くなんのか?血抜きにも意味はあったんだな。
「なぁ大将!俺が獲物を狩ってきたら、ここで料理してくれるかい?」
そう言うと、斗真って大将は困った顔しながらも。
「俺なんかで良ければ精一杯やるよ」
そう言うと店内の客達もおぉ~と声が沸いた。
「おい!レオン!急に変な事言うから驚いたぞ!それにしてもお前、なんか楽しそうだな」
「酒も飯も、こんなに楽しいのは小僧だった時以来だ」
妙な感覚だった、周りの景色に色が付いた様な、そんな気持ちのいい風を浴びながら、宿に帰り、心地の良いまま眠りについた日だった
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