東京での日常(4)

 推察するに、カウンターで店員さんにナイフを突きつけて現金を出すように要求した男の様子を先日のガキどもがたまたま見つけ、店に飛び込んで犯人を抑え込んだのではないかというところか。


 一人のガキは二の腕から軽く出血してハンカチのようなもので止血されている、あれは恐らく店員さんのハンカチだろう。そして一人は犯人の上半身を締め上げるように床に抑え込み、もう一人は下半身を自らの体重で抑え込んでいた。


「オ、オス! 先輩お疲れ様です」


 練習したのか? 


 というくらいピッタリの呼吸で発せられたその声に店員さんは微笑んでいる、という事は僕の推察もあながち間違っていなかったという事か。


「お疲れ、ご苦労さん」


 コンビニの外についている赤色灯がクルクル光っていたので、緊急通報ボタンが押されて警察官が駆け付けてくるであろうことは走りながら見えていたのだが、コイツラが活躍していたとは考えもしなかった。


「ケガは大したことねえな、礼儀正しくできるならこれからこの店に入ることを許す。だが未成年だからオツカイでもタバコはダメだ、それから警察来るまでそのまま締め上げておけ」


 警察が到着して犯人と思われる男は拘束されてパトカーに押し込まれ、ケガをしたガキは一緒に駆け付けた救急隊員によって消毒などの処置を受けた後、解放となった。


 詳しい事情聴取はお嬢さんが受ける事になるのだが、何とも清々しい表情でテキパキと彼らの大立ち回りを警察官に話し、僕はそれら一連の事が終わるまで店内で待機した。


 コンビニが普段と変わらない状態になってからいつも通りのお弁当とお茶を購入して、帰ろうと釣銭を受け取る時に、レシートと合わせてもう一枚別のメモを彼女から受け取った。


「あの、ありがとうございました! 私の携帯番号が書いてありますので、お休みの日でご都合のいい時で結構ですからご馳走させてください。大したものは作れませんが・・・」


笑顔で渡してくれたのでこちらも笑顔で受け取って家路に就く。


(携帯番号教えてくれたなぁ。ご馳走してくれるんだ、今回のお礼がしたいって事なんだろうな。大したものは作れませんが・・・って? )

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