第29話

「あら〜緒方おがたさんありがとう」


「資料お待たせしました」


頼まれていたものを、個人経営で動物病院をしている吉越先生のところへ持って行った。


「守の嫁なんだけどさ、めちゃくちゃ金持ちだから、守も会社の人にしたんだって!」


「え…」


それって、どういうこと?


「だから、獣医辞めるって」


「そ、そうなんですか?」


そんなことありえる?個人経営しないってこと?


「もう会えないと思うよ。まーせいぜい仕事しろって話よね」


「足助先生…もう辞めたんですか?」


「たぶん明日だったかな?退職するの」


「そ、うなんですね…」


どうしよう、このままじゃ二度と会えない。


話し終えてその後、電車に乗って東京へ移動していた。給料日まだだから、お金カツカツになるけど…。足助先生の子供を妊娠したら、うちの農家が隣の家の美月みつきの農家の、血のつながらない拾ったどこぞの人が継ぐより全然いい。私の子供が後継ぐんだから。そしたら、美月は協同なんて言ってらんないでしょ?吸収してやるんだから、美月の農家なんて。

それに、見ず知らずの人の子を妊娠してもなんの意味もない、足助先生は有能だから。だから、子供もきっと有能。間違いない。

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