第3話・剣の稽古

 朝ごはんを食べ終わり俺は父上と共に外に出た。もちろんリムも俺達についてきた。


「グレイ、倉庫から自分に合う木剣をとってこい」

「うん、わかった!」


 父上の指示で倉庫にある木剣を取ってくる。リムも一緒に取りに行きたそうだったが父上が止めていたので俺は使いやすそうな木剣を手に持つ。


(これがいいかな)


 サイズ的には刀身が50センチくらいの小さめの片手剣。俺はこの木剣を手にして父上とリムが待っている庭に戻る。


「父上ー」

「おっ、取ってきたか」


 リムへの対処をしていた父上が若干汗をかいているが、俺はそれを見ないようにしながら戻る。


(リムはお転婆になりそうだな)


 リムは俺が手に持っている木剣から目を離さない。このままだと剣にのめり込みそうなので俺は口を開く。


「あ、あの! とりあえず何をやればいいの?」

「そうだな……。とりあえずオレに打ち込んでこい!」

「え?」

(いや最初は素振りとかじゃないの!?)


 ニッコリした笑顔で木剣を構えた父上。俺は内心でドン引きながらも木剣を構える。


「オレもこうやって父上に剣を学んだからな」

「そ、そうですか」


 なんか釈然としない気持ちになるが、俺は木剣を両手に持って父上に向かって振り上げる。


「おっ!」


 上段から振り下ろされる俺の木剣を父上は軽々受け流す。そこで体勢が崩れそうになるがなんとか立て直して追撃を始める。


「うーん、初めてにしては悪くないか」


 カンカンと木剣から音が鳴る中、リムは目を輝かせながらコチラを見ていた。ただリムを見る余裕はほとんどないので俺はチラッと見た後に木剣を振るう。


ーーーー


 父上と稽古を始めてから30分くらいで俺はダウンした。父上は余裕そうに笑っていたので少しムカついたが、これも年季の差だろう。


(つ、疲れた)


 クレールには身体強化(レベル1)がついているので楽に素振り出来たが稽古では木剣なので使えない。そのため体力がもたないのは仕方ないかもな。


「さて、少し休憩するか?」

「そ、そうする!」


 父上が井戸から汲んできた水が入ったコップを渡してくれたので俺は一気に飲み干す。リムは俺と父上の稽古を見てキラキラと目を輝かせていた。


「ちちうえ! リムもやりたい!」

「リ、リムは来年からな」

「えぇ!? いまからやりたい!」


 ヤダヤダとリムはまた駄々をこね始めた。父上も困った表情を浮かべていたので俺もどうするか悩む。


「リム、父上もこれから狩りがあると思うし難しいと思うよ」

「!? ならあにうえがおしえて」

「……母上に聞いてみるのはどうかな?」

「わかった!」


 リムは立ち上がってテテテッと家の中に走っていく。父上はリムが家の中に入った後に安心したように口から息を吐いた。


「かなり活発な子になりそうだな」

「そ、そうだね」

「もう少し落ち着いてくれたらありがたいんだが」


 若干頭を抱えている父上をよそに俺は立ち上がる。


「そういえば父上は誰かに剣を習ったの?」

「今は居ないが父上から習ったな」


 話を聞いていると理論的にではなく体育会的に習っているらしい。俺は苦笑いしか浮かべられないが父上はため息を吐いた。


「最初からぶつかり稽古で疲れた思い出しかないな」

「そうなんだね」

「まあ、オレもやり方的には父上とおんなじだ」


 カラカラと笑う父上に俺も気持ち良くなる。それからまた立ち上がって父上との稽古を再開。何回か倒れたが充実していると感じた。


 ーー


 午前の間の稽古が終わり昼ごはんを食べ後、俺は屋敷の近くにある村に向かって歩く。


「確かカシャ村の外には魔物がいるんだよな」


 魔物と言ってもこの辺は雑魚が多い。ランク的には星2までらしくて『調律の勇者と戦少女』の中では序盤のフィールドのレベルみたいだ。


(雑魚敵しかいないのはありがたいな)


 ただ流石に5歳児が村の外に出る事は出来ないので俺は村の中を適当に歩く。するとテテテッと知り合いの子供達がコチラを見て笑った。


「あ、グレイだ!」


 俺の方を見てニッコリ笑ったのは同い年の濃い茶髪の幼女であるムーラ。他には小柄な男子のリクと大きめの男子であるガイ。後は体が小さめの幼女のメルアの4人。


「ん? 何かあったのか?」

「このへんであそんでいただけ!」


 ムーラが俺の手を取って引っ張っていく。リク達も嬉しそうにしていたので俺は笑顔を浮かべながらついていく。


「ねぇグレイ! なにかで遊ぼうよ」

「別にいいけど何をするの?

「ならゴブリンごっこは?」

「えー! それは前もやったんじゃん」

「じゃあムーラは何かあるの?」

「え、うーん」


 流石に道の真ん中では邪魔になるので端に移動。俺達5人は何をするかで悩んでいるとガイが何か思いついたみたいでポンと手を叩いた。


「ならさ、おれのかあちゃんに冒険者の時の話を聞くのはどうだ?」

「いいね!」


 この世界では冒険者は夢のある職業。ガイの両親は冒険者をやっているので話を聞くのが楽しい。


「わたしもそれがいい!」

「おっ、メルアもいいのか!」


 ここで男子組とメルアが目を輝かせておりムーラも頷いていた。俺は少しドキドキしながら彼らの方を見て頷く。


「ガイのお母さんの邪魔にならないように聞こうか」

「ああ、わかった!」


 ガイはニッコリ笑ったので俺は彼らの先導で進んでいく。


(冒険者か……)


 ガイの家はウチの屋敷から少し離れた場所にあるのでそこまで遠くないのでテクテクと歩くと到着。ガイが先に入り俺達4人も一緒に入る。


「かあちゃん! グレイ達を連れてきたよ」

「まあ、よく来たわね」


 家の片付けをしていたガイのお母さん。俺は軽く頭を下げた後、リビングに移動。座るところがなかったので床に座るとガイのお母さんがジャガイモモドキの焼いた物を持ってきた。


「ホク芋の薄焼きだけど食べる?」

「もちろんいただくわ!」


 フムーラは木の大皿に入ったジャガイモモドキことホク芋をフォークで刺して口に運んだ。


「お、美味しい!」

「それはよかったわ」


 ニコニコと笑うガイのお母さんと美味しいホク芋を食べるムーラ。俺達もムーラの後に続くように食べ始める。


(普通に美味しいな)


 焼いて塩をかけただけだがホクホクで美味しい。俺は思わずがっつきそうになるが夜ご飯もあるので抑えめに食べる。


「あ、かあちゃん。冒険者の話をしてよ!」

「冒険者の話?」

「そう! とおちゃんとかあちゃんがどんな冒険をしたか聞きたいんだよ」


 嬉しそうな表情を浮かべるガイに困ったような顔になるガイのお母さん。少し言いにくい話もあるかもしれないと思い止めるか悩んでいるとガイのお母さんが口を開く。


「まず冒険者にはランクがあって最初はストーンランクから始まるのよ」

「ランク?」

「冒険者の強さを分けるために作られたものよ」


『調律の勇者と煌めく戦少女』でも冒険者が存在しておりランク制もあった。だが話を聞いている限り少しズレたところもあり興味深い話だ。


「でも強い魔物を倒せばそのランクも上がるんだよね!」

「そうだけど……例えば星3の魔物とかは危ないわね」


 星3の魔物……。魔物のランクは星1から星10が存在しており星3は序盤のボスレベルだ。今の俺では勝てるかはわからないがゲームでは狩まくっており大体はわかる。


(そういえば迷宮とかあるんだろうか?)

 

 ふと気になったので質問しようとするが他のメンバーが目を輝かせて質問しているのでなかなか入れない。

 そしてそのまま時間がきたので今日はお開きになり俺は屋敷に戻り始める。


〈あとがき〉


 読んでくださった皆様に感謝を!


 面白いな、続きが読みたいな、と思われた方は星とブックマークを是非よろしくお願いします。

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