女の勘。

 ――アネモネ先生とエミールさん、あの二人は本当につき合ってるのかな……。


 昼下がり。

 

 店が一番暇な時間になると、ぐるぐるとそんな考えばかりが頭を巡る。

 

 ――でも、確かにお似合いだよな。お金もないし、偉くもない……こんな僕なんかよりもずっとさ……。


 店の奥のカウンターで売り上げの確認をしていたリナに、僕はぼやくように訊く。


「ねえ、リナ」

「んん?」

「今日、ユーノちゃんたちが言ってたけど……リナも、アネモネ先生はエミールさんとつき合ってると思う?」


リナはピタリとお金を数える手を止めて、怪しむような目を上げる。


「何よ? 急に」

「いや、みんながそう言ってるのが聞こえたから……」

「うちは言ってないし」


 リナは再び作業に戻りながら、


「ユーノとオデットだけでしょ」

「じゃあ、リナはそう思わないってこと?」


 尋ねると、リナは再び手を止めてこちらを見る。


「何? そんなに必死になって……キモいんだけど」

「い、いや、別に必死になんて……! 僕はただ――」

「根拠なんて何もないけど、なんか違う気がするっていうだけ」


  忙しいんだから邪魔するなと言いたげな表情で、また作業に戻りながら言う。


「まあ、いわゆる一つの『女の勘』ってやつ?」

「女の勘……?」

「そんなに気になるなら、自分で訊いてみればいいじゃん。まあ、どうせお兄にはそんなことできないだろうけど。――あ、いらっしゃいませー」


 とリナは会話を打ち切って、やって来たお客さんの対応に出て行く。


 その後ろ姿を見送って、ふむ、と僕は天井を見上げた。


 ――『自分で訊いてみれば』……か。なるほど、確かに。

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