第24話:街を探索
「適当に歩こうか。」
「クゥー」
この世界の街を歩くのは初めてだから、実はちょっとウキウキしてる。軽く歩いた感じ、街並みは中世ヨーロッパと言った雰囲気。けれどところどころに魔術要素が含まれている。例えば浮いている掲示板とか、巻物を持った鳥が空を飛んでいたり、不気味な煙が立ち上がる魔女のお店だったり、私みたいに従魔を連れた人も結構いる。あとは武器持った人が男女問わずそこそこの数いるとかかな。
ただ、獣人とかエルフとか言った亜人種と呼ばれるような存在は今の所見かけてない。もしかして存在してないのかな?もしいるなら見てみたいなぁ。
「おう、嬢ちゃん、一本どうだい?」
そうこう歩いているうちに屋台が立ち並ぶ通りに付き、歩いていると串焼き屋のおっちゃんに声をかけられた。
「あー、このカードで支払いってできます?」
「おぉ、そりゃ商会ギルドのマネーカードだな。珍しいもん持ってるな。まぁ、扱えるけどよ。屋台で買い喰いするなら現金は持っておいたほうが良いぜ?」
「ちょっと急だったんで現金の用意なかったんですよね。」
「そうか、ここからなら冒険者ギルドが近いからそこで現金引き落としてきな。この通りをあっち方面に進んだ先に、魔物のはく製が飾られている大きな建物がある。そこが冒険者ギルドだ。ちなみにその隣に魔術ギルドもあるから、魔術師ならついでに登録しておくといい。まぁ、見ればわかる。ほれ、肉2本だ。」
「あれ?一本じゃないんです?」
「もう一本はそこの従魔のだよ。」
「なるほど、ありがとうございます!」
「おう!じゃぁな!」
そしておっちゃんからもらった串焼きをアドラーと一緒に食べる。とても美味しい。アドラーも美味しそうに食べてくれた。そうやって食べながらおっちゃんに教えてもらった方向に進んでいくと大きな石造りの建物が見えてきた。言っていた通り、入り口にはドラゴンの頭が飾られていて、壁には冒険者ギルドと書かれた看板が設置されていた。なるほど、確かに見ればわかるね。
中に入ると正面に依頼受付と買取の受付があり、入り口から右に進むと酒場がある。入り口から左に進むと階段が設置されており、資料室はこちらと書かれた看板があるので、二階に資料室があるようだ。今の時間は皆仕事で出ているのか、中にいる人は少ない。酒場に少し人がいるくらいだ。
現金の引き落としもそうだけど、先に魔物買い取ってもらおうかな。どれくらいのお金になるのかも知りたいし。
「すみません、魔物の買取をお願いしたいんですけど・・・」
「あっ!はい、魔物はマジックバックに入ってるとかですかね?」
「えぇ、そうです。」
「わかりました、では奥の解体部屋にて査定しますのでついて来てください。あ、そちらの従魔も一緒で大丈夫ですよ」
「あっ、そうなんですね。ありがとうございます。」
何も気にせずにアドラーと一緒に入ってたけど、問題なかったようだ。よかった。受付の人についていき解体部屋へと向かう。
「おう、ニナ。解体か?査定か?」
「はい、こちらの方がマジックバックに魔物を入れているそうなのでまずは査定を。その後に解体をお願いします。」
「OK、了解だ。じゃぁ、そこの嬢ちゃん、ここに取り出してくれ」
「あっ、はい。」
随分とスムーズに進むなぁと思いつつ、ワイバーンの死体を2体、ついでにグリフォンの死体も丸っと残ってたので一緒に取り出す。
「うぉっ、ワイバーンか?随分でけぇな。変異種か。このグリフォンも変異しかけだな?魔境にでも行ってたのか?」
「魔境?よくわかんないですけど、師匠に連れられた先で倒した奴ですね。」
「ほー、そうか。まぁ何でもいい。解体するとして素材はどうする?」
「肉は受け取ります。他は買い取ってください。」
「了解。解体手数料と肉の分を抜いたら金貨40枚くらいだな。肉は明日受け取りに来てくれ。ニナ!それでいいな?」
「あっ!はい、大丈夫です!では受付に戻りましょう。そちらでお金をお渡ししますので。」
ニナさんに付いていき、受付に戻る。
「ではこちらが今回の買取金となります。冒険者ギルドに登録していただけば、銀行預金という形で預かることも可能ですがどうなさいますか?」
「いや、登録はいいです。現金で渡してください。あと、全部金貨だと使いにくいから金貨1枚分崩して欲しいんだけどできます?」
お金は有り余ってるし、なくなったら適当に魔物売ればいいからね。別に登録しなくていいでしょ。
「そうですか!えぇ、大丈夫ですよ!そしたら銅貨10枚に大銅貨29枚、銀貨7枚でいいですか?」
「はい、それで大丈夫です。」
とすると、金貨1枚で1万ゴル、銀貨1枚で1000ゴル、大銅貨1枚で100ゴル、銅貨1枚で10ゴルと言った感じかな?あってるかわからないけど。
その後崩された状態で渡されたお金を確認しアイテムボックスにしまう。
「ご利用ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
「じゃ、出ようかアドラー」
「クゥー」
冒険者ギルドでの用事は終わったので、次は隣にある魔術師ギルドへ向かう。こちらは冒険者ギルド程大きくはなく、中もこじんまりとしてる。酒場とかはもちろんついてない。代わりに杖とか本とか妖精とか色々なものが浮いている。
人は誰もいないし、受付の女性もなんかダラーっとしているし、大丈夫なのかこのギルド?まぁいいか。登録しよう。
「すみませーん、魔術師ギルドに登録したいんですけど?」
「うぅー?んー、ちょっと待っててー」
受付の人は凄い辛そうな感じで席から立ちあがり奥の方へと消えていった。凄い隈だったけど大丈夫?
「うぅー、はいこれー。この紙に名前とー、弟子入りしているならその師の名前、あと得意な魔術とかあれば書いてー。うぅー。あっ、そうだ。魔術協会の認定を受けてるならそれも書いてー。」
ものすごい眠そうにしてるんだけど大丈夫だろうか?とりあえず言われた通り自分の名前と、師匠の名前、ついでに得意魔術には古式魔術全般と記載して、受付の人に渡す。
「はいはーい、ありがとー。次はこの水晶に手を当ててー、魔力を登録するからー。その間に記載内容を確認するねー」
そのまま指示通りに水晶に手を当てる。入学試験の受付でやったこととは違うのかなと思ってたら、なんか水晶が光ってそこから紙が出てきた。どうなってんのこれ?
「んー、ん!?んんー!!!ちょっ!あなた!これっ「うるさい!!」っったーーーい!何で叩くの!?ネカちゃん!」
突然受付の人が騒ぎ出したかと思いきや、後ろから神経質そうな黒髪青目の男が後ろからやってきて、受付の人を叩いた。
「モネ。お前また寝ながら作業してたな?ちゃんと確認したか?」
「えぇぇっと、した!したよ!だからこれ!」
「んー?んー!?失礼ながらこれは・・・いえ、何でもないです。ギルドカート発行しますね。」
「???」
「あのっ!あのっ!後で古式mぷげぇ!何でそんなに叩くの!私の身長縮んだらどうするのさ!」
「頭叩くくらいで身長が縮むことなんてねぇよ。お前は裏いって寝ろ。また研究で寝てなかったんだろ?」
「えぇー「寝ろ!」はいー・・・」
なんかよくわからないけどモネさんは後ろに下がっていった。ネカさんはツンデレなのだろうか?私は何を見せられたんだろう?
「うちのモネが失礼しました。こちら魔術師ギルドのギルドカードとなっております。魔術師ギルドについて説明は必要ですか?」
「はい、お願いします。」
「かしこまりました。」
そして受けた説明は以下の通り。
・魔術師ギルドに登録した魔術師はF~Aランクで判定される。
・魔術協会公認の認定試験を受ける際、ランクによっては試験免除することが可能
・ランクは魔術師ギルドの依頼をこなすことで上がる。
・依頼はいずれも魔術の行使が必要なるもののに限定される。依頼の多くは魔術を研究している人からの物となる。偶に冒険者ギルドと共同の依頼も発生する。
・ギルドランクに応じて、魔術師ギルドが保有する魔術書を見ることが可能。Aランクで
「以上となりますが、何か質問はありますか?」
「魔術協会公認の認定試験ってどんなことするんですか?」
「はい、これは魔術師としての実力を測る試験です。特級は例外として、3級~1級まで存在し、魔術行使、魔術に対する知識だけではなく、戦闘能力も考慮された認定試験となります。たとえ3級でも魔術師としては一流の部類となります。実力が同じ魔術師でも認定を受けているか受けていないかで扱いが大きく異なるので、そのうち受けてみるといいでしょう。回答としてはこんな感じですか何か気になることはありましたか?」
へー、認定試験ってそういうのだったんだ。だったらそのうち受けてみようかな?
でも説明聞いた感じ、ギルドに登録する意味あまりなかったかも?確定ではないけど、
まぁ、一般的な研究者との繋ぎを得られるかもってところがメリットかな。師匠はそういう方面では役に立たないだろうし。
「いえ、大丈夫です。」
「そうですか。こちらがギルドカードとなります。無くした場合は再発行に銀貨1枚必要となりますので、無くさないようお気をつけください。以上で手続きは終了となります。もしよろしければ依頼を受けていきますか?」
「いえ、今日はいいです。また後日くるのでその時に。ところでこの住所にある家に行きたいんですけど、どこかわかりますか?」
せっかくだから試験の時に確認した住所がどこか聞いてみる。するとネカさんは地図を取り出して説明してくれた。
「今いるのはここで、その住所の場所は外壁に面したここですね。貴族街の外れにある家ですが、赤旗が立てられているので、行けば直ぐわかると思いますよ。この地図はお渡ししますね。」
「ありがとうございます。助かります。」
「いえいえ。次は依頼を受けてくださいね。」
「えぇ、その時はよろしくお願いします。ではまた。」
「はい、ありがとうございました。」
アドラーと共に魔術師ギルドを出て、地図に従って家に向かう。地図には魔術師ギルド、冒険者ギルド以外にも商会ギルドや図書館や役場など、様々な公共施設についても記載されていた。これかなり便利だな。ちゃんとお礼言っておかないと。
「失礼、アンナ殿でいらっしゃいますか?」
「えぇ、そうですけど?」
そうこうしているうちに、住所に記載されていた場所に着くと、その家の門番に声をかけられた。
「おぉ、あなた様がそうでしたか。私、この家の管理人を任せられておりました、キュリーと申します。ウォート様より、『今日からこの家はアンナの物になるから、アンナが来たら家を引き渡してくれ』と言われております。こちらの書類にサインいただければ、引き渡しは完了となりますので、サインしてくださいますか?」
鎧を着ていたから門番だと思っていたのだが、違ったらしい。そして今日からこの家は私の家になるそうだ。私一人で暮らすには大きすぎる家だ。使用人が必要かもしれない。
「えっ、あぁ。はい。えっと、サインしますね。」
書類を受け取り、内容におかしなところがないことを確認してサインをした。
「ありがとうございます。本日より、この家はアンナ様の物となります。使用人の方々は既に中にいらしております。では、私はこれで失礼します。」
「あっ、はい。どうも。ありがとうございました。」
そういってキュリーさんは家から立ち去っていった。・・・って使用人が既にいるとかいってなかった!?どういうこと!?
「アンナ様!お久しぶりです!!」
「ニーナさん!?どうしてここにいるの?」
そう思って立ち尽くしていると、中から見知った顔のニーナが迎えてくれた。その後ろには初めてみるメイドさんが二人待機している。
「ウォート様のいつもの無茶ぶりです!今日からアンナ様の元でメイド長として働くこととなりました。よろしくお願いします!」
「え、えぇ。よろしくね。後ろの方々は初対面よね?」
「えぇ、そうです。あなたたち!自己紹介なさい!」
「はっ!初めまして、ユシアと申します。本日より、アンナ様の元で使用人として働くこととなりました。よろしくお願いします。」
そういってくれたユシアさんは、綺麗な緑色の髪に緑色の目をした人で、16、17くらいに見える。
「初めまして、使用人見習いのシアンと申します。何卒よろしくお願いいたします。」
シアンと名乗った方は、真っ白な髪に灰色の目、白人よりも真っ白な肌と、いわゆるアルビノのような見た目の子だ。ただ、身体が弱そうには見えないので、元々そういう血筋なのかもしれない。こちらはユシアさんよりも更に若く、13~14歳くらいと幼い印象を受けた。まぁ、見習いということだから納得だ。
「うん、よろしくね。とりあえず寝室に案内してくれる?師匠に振り回されて疲れちゃってさ。」
「かしこまりました!ご案内します!ところでそちらの子はあの時の卵から孵った従魔ですか?」
寝室まで案内される途中、ニーナが私の従魔に付いて聞いてきた。
「うん、そうだよ。アドラーっていうんだ。アドラー、みんなに挨拶してあげて」
「クゥー!」
私がそういうと、アドラーは右羽を上にあげて挨拶した。何それめっちゃ可愛いんだけど。
「わわわ!可愛いー!!よろしくお願いしますね!」
「クゥクゥ!」
メイドたちとアドラーとの挨拶を終えたところで寝室に着き、ニーナによって手早く寝巻に着替えさせられた私はベットにダイブして眠りについた。
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