第18話:魔の森
『二か月後に迎えに来る!それまでは頑張っていきろ!ではな!』
目を覚ますと未だに森。しかし師匠はおらず、辺りを見回すと手紙があった。その手紙に書かれていた内容がこれだ。
「えぇ・・・うそでしょ。」
私のアイテムボックスには食料1ヵ月分しか入ってない。残りの1ヵ月分を適当な肉を取らないといけないの?
「そして、これ何?」
私の足元ですりすりしてくる真っ赤な猫。何故こんなにも懐かれるのかわからない。
「はぁ・・・、とりあえず魔法テントだすか。っと、その前に索敵」
今までは魔術で索敵をしていたが、今回は魔術を使わず魔力感知で行う。師匠のように、魔術に反応する魔物とかいるかもしれないし。魔力感知のみでもある程度索敵出来るから、何とかなるだろう。ひとまずこの周囲に魔物はいないらしい。
遠慮なく魔法テントを展開して魔物除けと結界を展開。とりあえず風呂に入ろうとすると外から大きな物音が聞こえる。
・・・もしかして今ので魔物が来ちゃった感じ?魔物除け使ってるんだけど何で?
とりあえず外に出て確認すると、そこにいたのは空飛ぶトカゲ。ワイバーンとでもいうような奴が一匹、結界に向けて攻撃を仕掛けていた。
まじかぁ。結界が悪いのか魔物除けが悪いのか。とりあえずこいつは倒しておこう。もしかしたら食えるかもしれない。
———
「はぁ!?」
さっさと終わらせようと空間切断で首を狩ろうとしたが、完璧に避けられた。どうやらこいつは師匠と同じで魔術の予兆を感知できるらしい。
「くそっ、面倒だなぁもう。」
私は身体に魔力をまとわせて、地面を強く蹴り、ワイバーンの元まで飛び上がる。驚いたワイバーンは咄嗟に火球を放ってくるが、空中を蹴ってこれを回避し、ワイバーンの頭に蹴りを叩き込む。その怯んだすきを狙って
「ふぅ・・・、こうしてみるとこれまでの修行は無駄じゃなかったね。」
思っていた以上にすんなり倒せたことに驚きつつも、倒したワイバーンの死体をアイテムボックスにしまい、魔法テントの中に戻る。
「風呂入るかぁー!」
お風呂に入って身体を洗い、リラックスしてると、またしても外がドンドンと音がなる。結界が割られると嫌なので、そうなる前に外に出て確認する。そこにいたのはゴブリンの集団。30体くらいだろうか。私の身体を見ていきり立ってやがる。
「よしっ、ゴミ処理しよう。
私が放った嵐の力を持つ槍はゴブリンの集団の中央に打ち込まれ、何体かのゴブリンが吹き飛んだ。私は吹き飛んだゴブリンに向けて
パリン!
そのタイミングで結界が破られ、ゴブリンがこちらに来る。
「まじかよ!?
自分を中心に大嵐を発生させ、ゴブリンを吹き飛ばす。その隙に魔法テントをしまう。その後にゴブリンを地弾とか風刃で処理していく。最初みたいにどうにもならないような状況を作らないかぎり、普通にこちらの魔術を避けてきたので、結構面倒くさかった。
「また汚れたし・・・
外はもう暗い。しかし魔物の血が大量に流れたここにいるとさらに大変なことになりそうだ。魔術も何度も使ってしまっているから、索敵魔術も遠慮なく使い、安全そうな場所に移動する。
ひとまず周囲に魔物がいないところまで移動して隠密魔術を使用。そこからさらに移動して安全そうな場所についたら魔法テントを展開。そして結界と魔物除けを起動する。
周囲から魔物が来ていないことを確認した後、テントに入り、服を着て、食事をとる。それが終わったらベッドに入る。いつもなら卵に魔力を流すところだけど、何かあったときに対応できないと困るので、流さないで置く。
「あっ、そういえばレベル上がったかしら?」
ベッドに横たわっていると、ふとそういう要素があったことを思い出して、ステータスを確認する。
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ステータス
名前:アンナ・セリーニ
職業:無
種族:人(?)
レベル:15
ランキング:未実装
スキル:魔力制御Lv1、魔覚Lv1、魔術Lv7、魔法Lv1
称号 :奴隷、魔術師、魔法使い、引き籠り、本の虫、ダンジョン攻略者、
レナート神の加護、ウォートの弟子。
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レベルはそこそこ上がっていた。魔力は相変わらず結構ある。あとステータスだけど、これが多いのかどうかはよくわからない。まぁ、魔力さえわかればいいかな。あとはスキルが何か変化してるね。魔力操作と魔力感知が無くなって、魔力制御と魔覚っていうのが出てきた。名前的に魔力制御が操作の上位互換だと思う。とすると魔力感知の上位互換が魔覚になるのか?味覚とか視覚とかそういうのと一緒かな?まぁ、あまり気にしなくてもいいか。
そういえば称号に奴隷ってあるんだよなぁ。これいつ解除されるんだろう?まぁ、わからないのは気にしても仕方ないか。
「あれっ?君もここで寝るの?」
ステータスを閉じると、先ほどみた真っ赤な猫が私の胸元にきて丸くなっていた。
「かわいいー。癒されるー」
猫という最高の癒しを得た私は、そのまま気持ちよく眠りについた。
———ドンドンッ
「あー・・・何?」
気持ちよく寝ていたところで結界を叩かれる音がする。急いで外に出て状況を確認。結界を叩いていたのはクソデカくて青い熊。直立してない状態で高さ4mはありそう。横にもその分でかい。化け物かよ。
その熊は私を認識すると結界を何もなかったかのように割り、私に向かって腕を振り下ろしてきた。
———ドン!!!
「はぁっ!?ちょっ」
途轍もない勢いで振り下ろされた腕は、地面を揺らし、おおきくへこませた。
「化け物かよ!」
あのデカいの相手に利くかどうかもわからないが、とりあえず
「くそっ!」
私の持つ魔術の最大火力が効果なかったため、倒すことを諦めて逃げることにする。まずは
———ドドド!
「はっ!?嘘だろ!?」
しかしその熊は巨体に似合わずものすごいスピードでこちらに向かって走ってくる。道中にある木は悉く熊におられている。
「くそがっ!」
私はせめて牽制だけどもと、
「上!?っ!
何とか転移してギリギリで回避。そのまま距離を取って全力で逃げ続ける。
———ガァァァァ!!!
「今度は何!?」
熊から逃げていると、どこからか雄たけびが聞こえてくる。そしてその正体は直ぐに姿を現した。
「嘘だろ!?」
そいつは黄色いドラゴン。正真正銘のドラゴンだった。そして口に大量の魔力が集まっているのが見える。
「くそっ!」
あれを放たれたら熊とか関係なく死ぬので、とにかく射線上に入らないように逃げる。熊はどうなったか後ろを確認すると、奴はドラゴンの方に向かっていった。
何故かはわからないけど、私にとっては都合がいい。とにかく全力でこの場から離れる。
———ドオオオオオンン!!!!
そして一瞬光ったかと思えば、その後にとてつもない爆音が響き、その衝撃で私も吹き飛ばされる。
「ガッ!」
かなりの勢いで木に叩きつけられたが、幸いにもそれ以降何かが飛んできて体に刺さるということもなかった。身体の欠損もない。これくらいなら
———ドンッ!ドン!
先ほどの衝撃があったのに、次は何だと思って音が鳴る方をみると、私を追ってきていた熊と黄色いドラゴンが戦っていた。ドラゴンの羽はもがれており、熊は右腕がなくなっている。それでも殴りあい、噛みつき合い、相手を殺さんと必死に攻撃をしている。その戦いの余波で、二匹が戦っている周囲は更地になっていた。
とにかくあれらから見えない位置に避難しないと、巻き込まれたら死ぬ。目を付けらても勝てる気がしない。
それから数時間とにかく奴らがいない方向へと走り続けた。途中でゴブリンやコボルトといった魔物が襲ってきたが、それらに構っている暇などないので、適当に散らして全力で逃げた。
「はぁ・・・ここなら大丈夫かな。」
逃げ続けた先にたどり着いたのは滝がある小さな池。とても綺麗な景色だ。
「少し休憩しよう。」
とにかく疲れたため、適当なところに腰を下ろし、何もせずに池を眺めてボーっとする。
———ニャァー
ボーっとしてると、私の懐から赤い猫が出ててきて、池の水を飲み始める。その後、満足したのか私のひざ上に乗っかり、丸まった。
「可愛いわねあなた。」
とはいえ、足が汚れていて汚いので、
「おーよしよし、ここがいいのかな?」
顎とか頭とか色々なところを撫でまわしていると、気持ちよくなったのか私のひざ上で寝始めた。
「はぁ~・・・これが2ヵ月続くとかまじかぁ。生きていけるかなぁ」
これから二か月、不安しかない生活が続くことになる。師匠もしかして、私がダンジョンで20年活動できたんだから、森でのサバイバルくらいお手の物だろうとか思ってたりしない?全然そんなことないから。むしろ超初心者。サバイバルなんて出来ません。
「あっ、ワイバーンを解体してみようかな」
ここでやると魔物が寄ってきそうなので、魔法テントを出して、その中にある試験場に入って解体を始める。中は体育館程度の広さがあり、解体するには十分すぎる広さがある。
「とりあえずやり方わからないけど、まずは血を抜けばいいんだよね?」
魔術で大きな土壁を作って、そこにワイバーンを吊り下げる。といっても紐がないので、身体強化をしてワイバーンを持って土壁に上るしかないんだけど。
「ふぅ・・・結構大変だった。」
とりあえずワイバーンを持って土壁に上ることには成功した。あとは血が抜けるまでぶら下げておくだけでいいハズ。
それから血が出てこなくなったところでワイバーンを下ろして解体を始める。といっても完全に手探りなので、上手くはいかない。皮はボロボロだし、肉も結構な身をダメにした。内臓はよくわからないので全部廃棄。誤って心臓を切って血が噴き出たときは最悪な気分になった。食べられそうな肉はアイテムボックスに入れておく。他の内臓やらなにやら不要な部分はいつの間にか消えていたので、この魔法テントにはそういうゴミを処理してくれる機能もあるっぽい。本当に至れり尽くせりだな。このテント。選んでよかった。
———ドン!
「っ!またかよ!」
外で大きな音がなったので、私は外に出て状況を確認しつつ魔法具をしまう。するとそこにはグリフォンが私のこと真っ直ぐ見つめていた。
「あっ・・・どーも」
とりあえず挨拶しておく。
———バン!
「っ!!」
グリフォンは私に向かって魔法?魔術?とにかくよくわからないが、風刃のようなものを放って来た。私はそれを避けて
「はぁ!?」
しかし私が発生させた
「くそっ!」
———ドオオン!
その球は避けたが、地面に当たると同時に強烈な風が発生。それと共に私は吹き飛ばされる。そんな中で、私の視界にグリフォンが私目掛けて腕を振るってきているのが見えた。
「
急いで転移を発動させ回避。しかし、私が転移した直後、グリフォンはこちらに向かって風の刃を飛ばしてきた。
「くっ!」
それを何とか避けたところで、グリフォンは私の前にゆっくりと降り立った。その目はこれから大好物の獲物を狩る狩人の目をしている。どうやらどうあっても逃がしてはくれないらしい。これは腹を括るしかないかも。
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