第8話:外の世界
「外だぁ!!!!!ふぅー!!!」
青い空、白い雲、綺麗な緑、ここは森!地面が土!最高だ―!!!
実に20年ぶりの外を堪能するため、走り回り、地面に転がり、川に潜り、木に登り、とにかくはしゃぎまわった。
「ふぅーーー、気持ちいいいい・・・」
そして、はしゃいでいる途中で見つけた湖の畔に座って休憩する。
「そういやLv1にリセットされたんだっけ。ステータス確認しよう」
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ステータス
名前:アンナ・セリーニ
職業:無
種族:人(?)
レベル:1
ランキング:未実装
スキル:魔力操作Lv9、魔力感知Lv6、魔術Lv6、魔法Lv1
称号 :奴隷、魔術師、魔法使い、引き籠り、本の虫、ダンジョン攻略者、
レナート神の加護
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なんかステータスがLv1にしては高くない?まぁ、高いことはいいことなんだけどさ。今身に着けている物とか、称号にステータスを上げる効果があったりするのかな?称号のレナート神の加護とか何かありそうだよね。ダンジョン攻略と一緒についたものだろうし。人形がいた舘にあった女神像がレナート神だったのかな?何の神様かは知らないけど、とりあえず感謝の意を伝えるために祈っておこう。
———ドオオオンン!!!
「何!?」
ステータスの確認が終わって、レナート神という謎の神に祈りを捧げていると、何かが湖に落ちてきた。大きな水しぶきが上がり、私の身体が濡れる。
「うわぁ・・・、めっちゃ濡れちゃった。
すると湖の中から女の人が浮いて来た。
「え!?人!?」
足が折れて、血を流している。が、それ以外の怪我はなさそう。
「とりあえず引き上げよう。死んでいるかもだけど、何もしないのも気持ち悪いからね」
泳いで湖に浮いている人の元に行き、陸へと引き上げる。泳ぎが得意でよかった。
「良かった、とりあえず生きてるみたい。直ぐに治療すれば何とかなるかな。」
生きていることが分かった私は、早速ダンジョンの魔法テントを展開して、怪我人を中に運び入れてそのまま風呂場へ。邪魔なローブと服を脱がして全身を詳しく確認。右足が折れている以外は特に怪我はもないようだ。
私は魔術を使用して怪我を治療し、体と服を綺麗にした後、寝室まで運んでベッドに寝かせる。
「ふぅ~~。疲れたぁ・・・。よく見るとすっごい美人だなぁ。カッコいい系で『お姉さま!』とか呼ばれていそうな雰囲気。」
赤をベースに黒のインナーカラーが入った髪色で、髪型はショートヘア。顔の雰囲気はクール系。背も170くらいはありそう。コーヒーカップ片手に本を読んでいるだけで様になりそうな感じ。逆にこの雰囲気でぬいぐるみ抱いて寝ているとかもそれはそれであり。
「んー・・・ホント美人だなぁ。もしかしてレナート神本人とか?あの時は祈り捧げていたわけだし・・・いやいや、いくら何でも流石にそれはないか。ないよね?」
まぁ、普通に考えて事故だろうけど、タイミングが奇跡的過ぎて疑っちゃうよね。そういえば結界と魔物除けの魔法具起動してないや。起動させよう。
玄関に戻って魔法具に魔石をいれて起動。多分これで外敵から身を守れるはず。あとは部屋の汚れを
「さて、彼女が起きるまで従魔の本でも読むかぁ。」
「ん・・・?」
それから数時間、ベッドの横に椅子を出して本を読んでいると、救助した人が起きた。
「あ、起きました?具合はどうです?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。それよりここは?」
「私のテントの中です。場所は私もよくわかってないですね。その辺の森の中としか。あなたは空から落ちてきて、そのまま湖に落下。気を失って湖に浮いていたところを私が助けたという形です。」
「そうか、君が助けてくれたのか。ありがとう。礼を言う。」
――――ぐぅぅぅぅ~~
彼女が頭を下げたところで、腹の虫が大きな声を上げた。
「あー、その、すまないが何か食べるものはないか?お腹が空いてしまってな。」
「ふふっ、いいですよー。少しお待ちくださいね。用意するので。」
私はキッチンに向かい、ダンジョンの報酬として手に入れた食料の中からパンとスープを取り出してお皿に盛り、それを彼女の元に運んでいく。
ご飯を渡された彼女は一言お礼をいい、モグモグと美味しそうに食べていく。
「ふぅ、美味しかった。改めて礼を言う。儂は特級魔術師のウォートという。おかげ様で助かった。何か礼をしたいのだが・・・あっ、そうだ。お主、儂の弟子にならんか?」
「・・・はい??」
あまりに突然すぎる話に頭がフリーズする。お礼をしたいというのはわかる。けど弟子?何を言っているんだこの人?
「む??儂のことを知らぬのか?」
「あー、私ついさっきダンジョンから出てきたばかりなので、ここがどこだかわかってなくてですね。」
「ダンジョン??むむっ・・・??」
何やらとても難しい顔をしてうなっている。何か変なこと言っただろうか?
「先ほどここはテントの中じゃと言っておったな?どう見ても家に見えるが、もしかしてダンジョンで手に入れた魔法具かの?」
「えぇ、そうですよ。この手足とか、頭の耳に尻尾。あと今着ている服とかも多分そうですね」
「むむむ・・・・」
私がそう説明すると、ウォートさんは再び頭を悩ませる。
しかし改めて説明してみると私が持っている魔法具多いなぁ。こんなポンポン出てくるものなのだろうか?
「そのダンジョンなんじゃが、倒した魔物が消えてアイテムを落としたり、宝箱が出てきたりしなかったか?」
「えぇ、そうですね。私の服とかアクセサリーとか、このテントもそこで手に入れたものですし。ダンジョンってそういうモノじゃないんです?」
「普通はそうじゃないの。お主が入ったダンジョンは神造ダンジョンと呼ばれるものじゃ。別名“神の試練“とも呼ばれていて、一度挑戦すると攻略するか死ぬかしかない過酷な場所じゃ。その分、報酬もいいと言われておる。攻略者には何か称号が与えられるという話も聞くが、それっぽい称号はあるかの?」
「あっ、それならダンジョン攻略者とレナート神の加護っていう称号がありますね」
「ほうほう・・・。レナート神か・・・聞いたことのない神じゃの・・・。そのダンジョンにはどれくらいいたのじゃ?」
「20年くらいですかね?」
「そうかそうか。なるほどのぉ」
何やら嬉しそうな顔をして何度も頷いた。心なしか目がギラついている気がする。・・・もしかして私殺されるとかそういう流れ・・・?助けたの失敗だったかな?
「ならば、儂の弟子になるべきじゃの。」
「ホッ・・・よかったぁ」
「何がじゃ?」
「あぁ、いえいえ!何でもないです!それよりも弟子になるべきというのは?」
助けたのが失敗だったとか、そんな失礼なこと思ってませんとも!えぇ!
「あぁ、そうじゃったな。まずお前さん、見たところこの辺の常識はないじゃろう。常識あるものなら、こんな無防備に魔法具を人目に見せることもないからの」
なんだろう・・・言い返したいけど、この辺の常識がないのは事実なだけに何も言えない。
「魔法具以外だとダンジョンの魔物がドロップした肉とか報酬としてもらった1ヵ月分の食料しかないんですよ。文字通り身一つでダンジョンに放り込まれて、右も左もわからないままダンジョンにある物を使って暮らしていたんですから。」
でも何も言わないのは嫌だから、言い訳くらいはするよ?
「かかかかか!!!そうかそうか!なら仕方ないな!ハハハハ!!!」
何がそんなに面白かったのか、ウォートと名乗った彼女は大声で笑った。
「ハー・・・笑った笑った。そうかそうか。まぁ、なら仕方ないわな。この辺の人間でもないのだろう?」
「というか、ダンジョンより前の記憶はないんですよね~」
頭に“この世界の”が付くけど、嘘はいってない嘘は。
「そうかそうか。まぁ、何でもいい。とりあえず儂の弟子になれ。魔法具で身を固めているくせに後ろ盾がいないことがわかったら、直ぐに色んなところから魔法具目当てで命狙われるぞ。」
うわっ、そんな感じなのか。よかったこの人が“殺してでも奪い取る!”みたいなタイプじゃなくて。これも加護のおかげかもしれない。レナート神様ありがとうございます。
「ちなみに特級魔術師ってどのくらいの立場なんですか?後ろ盾がないと命狙われるってのはわかりましたけど、それって後ろ盾がそれなりの立場でないと意味ないじゃないですか。名前からしてかなり凄いんだろうなとは想像付きますけど」
「む、あぁ。お主はそこからじゃったな。まぁ、一言でいうと王家の次くらいの立場じゃな。どうじゃ?弟子になる気になったのかの?」
そんな凄い人なの!?いいとこ伯爵とかそのレベルだと思っていたら全然そんなことなくて驚いた。
「あ、はい。弟子になります。よろしくお願いします。」
それだけの立場を持つなら文句ない。というか普通はこちらがお願いするレベルの人でしょ。
ってか、空から降ってきた女の子が王家の次くらいの立場で、しかも私を弟子にしてくれるってどんな確率?運がいいとかそういうレベルじゃなくない?これもレナート神様のおかげかな。そのうち石像とか作らないと。
「かっかっか!よし、ならお主は今日から儂の弟子じゃ!あぁ、そうじゃ、名前はなんと言うのかの?」
名前・・・何だっけ?この20年名前なんて気にしてなかったから、この体の名前はもちろん、前世の名前もパッと思い出せない。とりあえずステータス確認しておこう。
「えーっと・・・アンナです。アンナ・セリーニ。」
「アンナ・セリーニか。そうか。姓持ちってことは貴族じゃったんかの?まぁ、聞いたこともない姓だから気にしなくてもよいな。とりあえずお主は名を聞かれたらアンナとだけ答えるがよい。姓を出すと余計な面倒が起こるかもしれんからの」
「了解です。」
「さて、この後じゃが、今日はここで泊りじゃな。もう夜じゃし。明日は王都に向かうからそのつもりでの。」
しれっと我が物顔でここに泊ることを決定した師匠。でも顔が好みなので許します。ハッ!?このまま美人師匠と夜の百合な展開になったり!?・・・はしないか。なんか見た目凄く若いのに、雰囲気は老人なんだよね。そういうの興味なさそう。私も別に興味ない・・・し??あれっ、なんか引っかかるけど何だろう?まぁ気にしなくていいか。
「そういえば、ここはテントの中だと言っておったの。他の部屋もあるのじゃろう?見学してもよいか?」
「いいですよ。私も手に入れたばかりなので、まだ大したものはないですけど。」
「かっかっか!このテント自体がすでに大した物じゃわい。他も期待しとるから案内しとくれ」
大した物ないといって直ぐに気が付いた。ここに置いてあるの全部ダンジョン産だから下手したら家具とか皿とかも魔法具なんじゃね?・・・と。
そしてその予想は的中。師匠は案内した部屋の全てで
―――何じゃこりゃあああああ!!!
と叫び
―――お主、これ魔法具じゃぞ
―――え?これもですか?
―――全部じゃな
―――ええええええ!!!
というやり取りがされたり、
―――お主この本はどこで・・・?
―――ダンジョンにありました
―――これ全部売ったらそのお金だけで国を買えるぞ
―――そんなに!?
という感じのやり取りが全ての部屋でなされ、全ての部屋の案内が終わるころには師匠は今日一番の大爆笑をしていた。
「アッハッハッハ!!お主国を乗っ取る気か!!どこの国も組織もこれほどの物と数は持ってないわい!!アッハッハッハ!!!」
どうも私が想像している以上にヤバイものだったらしい。まさか王家が持つ以上の代物だとは思わなかった。
本の価値が凄いのはまぁわかる。けど、それ以外の家具とか皿とか道具とか諸々が魔法具とか思わなくない?効果自体は気持ち手先が器用になるとか、リラックス効果があるとか、料理の味が何か美味しく感じるとかそういうレベルらしいけど、それでもおかしいでしょ。
あのダンジョンに置いてあったもの、全部が全部すごいモノだったんだな。本当に持って帰ってきてよかった。すごく運が良かった、いや、20年分の苦労が報われたといったほうが正しいかな。今思うとよく心折れずに頑張ったよね。ホント自分で自分を褒め称えたい。
あとレナード神様にも感謝・・・しておこう。私をダンジョンにぶち込んだ当人だろうけど、何だかんだ生きているし、いい物もらったし。
「ふぅー、笑った笑った。ところで錬金部屋とか調薬部屋は使うのかの?」
「あぁ、それはダンジョンにそれ関連の本があったのでそのうちやろうかなと。鍛冶の本はないですけど、なんかダンジョン攻略の報酬として選べたのでそれで追加した感じです。」
「そうかそうか、まぁ、好きにするとよい。さすがに鍛冶をやったことはないが、錬金術と調薬なら儂もある程度教えられるからの。とりあえず儂はもう寝る。色々あって疲れていての。今後のことは明日また話し合おう。」
そりゃぁ、空から落ちてきたから当然だよね。何をしたら空から落ちてくる事態になるのかわからないけど、とりあえず事故があったことだけはわかる。
そして師匠は寝室のベッドで寝た。あの・・・そこ私のベッドなんですけど。
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