トマトジュース
幼い頃、祖父母がよく
フレッシュ・トマトジュースを作っていた
畑のトマトと塩だけの
なんともいえない味だった
「からだにいいから飲みなさい」
私と弟は 祖父に飲まされた
コップに入った赤い汁を
複雑な思いで見ていたあの頃
ちびちびと嫌そうに飲む弟を前に
私は祖父の顔をうかがう
そして一気に飲み干すのだ すると
祖父は喜んで コップにつぎ足す
私は昔から そんな子だった
祖父はきっと 嫌と言っても笑っただろうに
私はいつも 下手くそだった
ただ 口にすれば よかったのに
月日が流れ、こんなふうに
昔を思って ほほえむ自分がいる
私は今日も 祖母が作った
恐ろしく茶色くて しょうゆ辛い おかゆを食べた
私は今も 下手くそなのだ
おいしいなんて 言えないけれど
それでも口に運ぶのは
それが愛情だと知っているから
だから ありがとう
口に出せない
薄情な娘
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます