第123話 着想とイメージ-キャラクターとファッション-

 何故か今年は、年末年始ではなく、今週に腰痛が始まった。結構な症状で仕事が出来ないほどではないが、姿勢によっては痛みが走った。ここ数日はいたむ箇所を庇いながらの動きだった。いまはほぼ回復に向かっているのだが、まだ少し痛みは残る。

 環境の変化なのか、はたまた気候の変化なのか定かでないが、この季節の痛みは初めてなので驚いた。古傷が痛むのは雨のせいなのだろうか?


 さて人生に疲れたおじさんの話(僕の話ね・笑)。

 僕はファッションにさほど詳しい方ではないが、人並みに理想の女性像がある。もちろんよくある、どうでもよいレベルの話で、男性から見た女性への、って感じのモノだ。印象である。

 そのファッション。割とシンプルな服装というか、オーソドックスな衣服が好み。奇抜なモノや最先端のものはあまり好まない。庶民感覚なのだろう。いや田舎者なのかも知れない。例えば、花柄プリント地などのフレアのセミロングスカートに、セーターやフリースなどを合わせ、カチュウシャやヘアバンドなどをした長髪の女性。そうふた昔ぐらい前の家庭洗剤や洗濯洗剤、家電製品などのCMによく見られた、清潔感のある郊外のベッドタウンに住む若奥さんって感じの風貌だ。おじさんはアレに弱い(笑)。

 なので、僕自身の小説に出てくるようなファッショナブルな女性とは違い、シンプルで気さくな感じが好みである。そんなことはどうでもいいから、本題にいけ、って? 御意。


 拙作中、ミュールやコーディネートワンピースなどを出すのは、登場人物が今風のファッションを纏うことで読者さんが小説の世界や舞台に入り込めるよう身近に感じてもらうためである。また『時神と暦人』の主人公、栄華などはもともとピアニストという設定なので、華やかさと気品を持たせるために映画などでのピアニストのイメージをそのまま踏襲しているまでだ。良いファッションとは思うが毎日、その格好で日常を過ごしていられるとちょっと落ち着かないかも?


 さてここで本題。では『時空魔女マリン嬢の回想日記』の主人公、青空麻鈴あおぞらまりんから確認だ。

 設定は二十代中頃から後半あたり。拙作の登場人物のなかでは、わりと青空麻鈴と勘解由小路歌恋かげゆこうじかれんが見かけ上一番普通っぽい。

 誰それ? と言われる前に説明を入れると、麻鈴はもちろん上述の『時空魔女マリン嬢の回想日記』の主人公である。対して歌恋は『時神と暦人』、『思い出の潮風食堂』を跨いで登場する主要な登場人物のひとりである。ただし、後者の歌恋は作中二つの顔を持っていて、ボーイッシュな杯佐和はいさわという別人に化ける場合もあるので、その時はショートカットにホットパンツ、ショートパンツやスニーカーの似合うアクティブな性質に変わる。

 そうなると、麻鈴がちょうど僕の好みなのだろうか? 前の回で二十代の吉高さんと吉岡さんをイメージしていると書いたが、作品中読者に上手く整合性が付いているのだろうか? 

 残念ながらファッションと容姿はともかく、麻鈴の性格は僕自身、実在するとしたら間違いなく苦手である。作品の構成上、面白いから書いているに過ぎず、自分で書いていても、虐げられている逢野おうのがたまに可哀想になる。なので麻鈴は決して僕の好みではない(笑)。


 そう考えると、どうやら恥ずかしいからか、ファッション、性格、特技、趣味の全てが揃った僕の理想の女性というのは、自動的に作品には出さないという傾向が自己考察で見て取れる。これを捻くれた作者とみるか、物語の客観的な創作姿勢を持った作者とみるかは読者次第である。

 一度くらいは自分自身が、へろへろになるような理想の女性を登場させて、甘々なシーンも書いてみたいが、如何せん、こんなポンコツおじさんの理想像をちりばめた小説など誰が読みたいものか、と、それと作品としての現実スペックを位相いそう、達観してしまう僕だ。

 時折、その辺りの才能に長けた理想の男性像で甘々な恋愛小説をお書きになっている女性の書き手の方の作品にお邪魔することもあるのだが(こういう時、特にはコンタクトなどはとらず読み専な僕です)、「おお、こんな男性がお好み。ストライクゾーンなのか。なかなか今の若者、男も大変だ」と尻込みしてしまう。僕がこの主人公なら、そんなくすぐったい台詞ムリと二、三歩下がってたじろぐ次第だ。でも一部の今どきの女性はこういう男性を待っているのかなあ? ディープな恋愛小説を書ける人を真面目に尊敬してしまう。畑違いの僕はハートウォーミング、タイムリープ、超能力、宇宙、魔法の世界でいいです、と本当に思う。


 閑話休題。登場人物のファッションは僕が書いているものだと、他にトガ、チュニカ、パルラ、ストラなどを纏ったローマの神々の擬人化を描くこともある。あまり詳しくは理解していないので、雰囲気だけのファッションである。


 他に職業的な意味を持たせるために、『時神と暦人』に登場する山﨑はカメラマンベストだったり、八雲半太郎には学者風、書生風に下駄を履かせて、バンカラ気質の残り香みたいなファッションで意味合いを持たせている。絵画でいうアトリビュートやサインの意味合いである。

 阿久葉織あぐはおり晴海はるみ親娘に関しては、それぞれ元、現役のファッションモデルなので、それ相応のファッションアイテムを調べて、トレンドっぽい出で立ちで毎回違った装いのもとキャラにあった装いを補完して登場させている。


 短編だと三人、神田みさき、細波映磨ささらなみえま多賀御美希たがおみきは物語に沿った特徴を持たせるための小道具としてファッションを選んでいる。

 みさきのニット帽は分かり易い。

 映磨と美希は似たような役割からだ。異性と会う前と会ったその時の衣装が別物である。前者は着崩したギャルの格好と後者は女っ気を気にしない「着たきり雀」のくたびれたOL。それがデートや合コンの時はおとぎ話のように女子力の高い服装に変わるといった感じだ。キャラ付けからそれ以上になってプロットの進行に合わせてファッションが変わるタイプだ。


 それ以外にもこだわりのファションは夏見の偏光グラスや逢野のじじむさいスーツに、無精髭(ファッションじゃないか?)という特徴もあるが、特徴を必要とする人物には、それらにあったコーディネートをさせてもらっている。これらも同じくキャラの特徴付けのためである。まあ、知識の少ない僕レベルで描写可能なものとしての使用だ。


 まとめると拙作や僕の趣旨では、衣服やファッションとしてトレンドを作品に持たせるというよりも、キャラクターの特徴付けのためにそういったファッションを選んでいるとすることが多い。おしゃれな物語なら、そういうファッションの持たせ方は必須だが、ファッションの「ふ」の字も知らない僕にはそんなトレンディな物語はムリである。


 僕の持つ登場人物のファッション性はほぼ完全にキャラ付けということになる。宗教画、神話画がアトリビュートやメタファーによって、その人物判断をつけるような役割をする人物特定のヒント、ここでのそれは、いわばそれに近いトレードマークということである。

 ついでに、アトリビュートそのものについての意味をミステリー風に拙作で使った作品もあるので一応ご紹介。それは『マリン嬢』の二話目「生きるといふこと」だ。カッコウと宝帯などの神々の特徴をあげるアトリビュートやメタファーといった象徴物を使って、推理の真似事をしている。ローマ神話に精通している方ならその意味をすぐに理解してしまう。そんな答え合わせをオチにした。


 久々にヴォリュームのある回になったなあ、という感じで、腰の痛みを庇いつつ今回はこの辺で切り上げたい。ではまた。

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