第89話 着想とイメージ-拙作の男性登場人物編-
雪である。仕事が終わって通り道の横浜駅は雪だった。でも藤沢駅はあられだった。おかげで傘買わずに帰宅できた。その後大きなぼたん雪に変わった。まぎれもなく冬である。
家について一息。珍しく日本酒など飲んでいる。身体を温めるためだ。そして今日は我が家のオーディオでマッカートニーが流れ続ける。いいね。ソロやウイングスの曲が中心に入っているアルバムをセットしている。
あやしげな空模様や気温が低いのは正直身体に堪えるのだがこういう曲を聴いていると気分がまぎれる。僕の洋楽趣味の初期のお気に入りはやっぱりウイングスなんだな、って再認識出来るのが嬉しくなる。
では閑話休題といこう。
以前、女性編をやっているので、今度は男性編である。僕の作品には女性陣に比べると華やかさを持つ男性の登場人物はあまり出てこない。それは容姿、収入、家柄などの方面でずば抜けたアドバンテージを持つ性質という意味でだ。なので女性向けのマダムノベルや主婦向けコミックのような展開の要素は乏しい。そういう嗜好性が僕にないためだ。実体験のないことは書けない。良くも悪しくも平凡かそれ以下が多い。
冴えない僕が書いているのに、書き手以上のキャラはそうそう出来てこない(笑)。まあプロット先行という特徴が活きていれば、その分をまかなえると考えているからだ。さりとて、その類いのキャラが全くないわけではない。数少ないそんな王子さまキャラからおじさんキャラ、いつもの冴えないくんパターンのキャラまで順を追って考察してみよう。
❶
ここは僕の作品の中では割と二枚目路線の登場人物。普通の人で身近な存在ではあるけどある種のヒーロー的な扱いと思う。
割と女性を守ろうという展開で登場する男性キャラなので、皆心意気が良い。良家のおぼっちゃま、武彦は父親連れて再登場するし、鮭野は彼女に協力して代役をこなし、田舎育ちのお人好しの性格からか、足利まで出向いてしまう。宇那木も頼まれた友人の親戚が経営する農園の梨を取りに行って、友人の策略に乗っかるというか、その切り盛り役の彼女の健気さに思わず男気を出す。磐田に至ってもかつての部下に愛の手をさしのべるなど、格好良すぎである。どれもこれも僕には出来ない所業である。
この手の男性の振る舞いというのは多分、男性の本来持っている
とは言え、おおよそ真面目で、思いやりのある性格でもあるのは確かだ。人間こうあるべきだ、の見本のようなキャラクターで、これにもう少し爽やかさを加えれば、という前提付きだが、往年の少女マンガに出てくるようなヒーローである。今は「王子さま」と言うらしいが……。まあ、僕の作品はそこまでの人物性格に装飾は必要ないのでその一歩手前でやめている(笑)。普通が一番。
❷
❶の登場人物、二十代、三十代を中心とした優しき男たちとはうって変わり、ジョークと人間臭さを持った四十代、五十代のおじさんキャラ。意外にこのキャラでおちゃらけを描くときに僕は筆がのる。
次の❸に出てくる山﨑が僕の分身かとひと昔程前、良く訊かれた。残念だが、性格の面では筆者はどちらかと言えば、山﨑より夏見寄りである(あえての話だ)。真面目な部分は山﨑も夏見も同じなのだが、その方向性が少し違うし、性格の明るさも異なる。
夏見のそれは、他言無用を忠実なモットーとして、気の置けない仲間にはおちゃらけながらもちゃんと寄り添い、暦人の仕事に関しては知識と体得をもって真摯な取り組みをする三位一体とした性格だ。時折、苦手なモノは
そしてこの中では真面目な一本気質の一色が一番いい男だ。妻の零香は幸せ者である。また良い具合にメニューを出したり、提案をしたりもする。人間思いのワームハートだ。
だらしなさではダントツで逢野だろう。これは王子さまパターンの逆でダメンズの男性に、なんだかんだ言って世話を焼いてしまう性分の相手役の登場で僕の手を介さなくても物語は上手く回り始める。そう麻鈴である。スラップスティックの展開では定番である。だが身の回りにこういうのがいたら僕は、彼のような人間とは極力関わらないようにすると思う(笑)。やっかい事を引き寄せると言う意味で、一般人のくせにその部分だけは凄い魔法使いのようだ。逢野に関してはそんなぐだぐだキャラクターである。
❸
言うなれば山﨑は夏見から毒気を抜いたような人物。馬鹿まじめ、優しさ、お人好しが山﨑。これってそのまま紺部にも白州にも当てはまるのだ。気弱で女性の尻に敷かれながらも優しさを振りまくので、女性も自然と素直になり、優しさを返す。理想の恋人や夫婦関係を築ける男性でもある。
夏夫も、若いながら、はちゃめちゃな晴海を上手く操縦している部分はあるし、彼女の毒気をちゃんと浄化できる凄い強者。みずほが惚れるのも分からなくはない。
おじさんから若者までいるこのキャラの括りは、一見自己主張しなさそうに見えて、尻に敷かれているような振る舞いが見えるが、しっかりと奥さんや彼女の手綱を握っている男性陣である。それを分かった上で女性は自分の立ち位置を踏まえたイニシアチブを握っている。すなわち良好な男女関係を築ける賢いカップルの見本のような人物たちなのだ。なので皆、結構人当たりも良く、頭の回転も速い人たちだ。僕とは大違いである(とほほ……)。
❹
彼らの性格の特徴は、甘えん坊な性格? 僕とは真逆だな。年上彼女(妻)のあさひはもちろん、義男も自分で好きな娘にアプローチも出来ないようなしみったれである。そして他人の力まで借りている。ちょうど❶のキャラクターたちとは真逆の性質だ。だが世の女性はこういう煮え切らない(?)男性が好きな人もいるのである。同じカテゴリーに入れているが、自分勝手にアマゾンの奥地に百合を探しに行ってしまう兼太もタイプは違うが、甘えているといえる。皆に心配かけても知らん顔な部分とかでね。物語上の人物なので僕は楽しく書いているが、こういう方々は近くにいると大変かも知れない(笑)。
もともとは脱力で書き始めた「マリン嬢」だが、その逢野のおかげで少し楽しくなっている。今度はどんなアホな役回りを演じさせようか、などと考えているためだ。そして懐かしいマンガのオマージュを刷り込んでおちゃらけるシーンは常に考えている。
「神明社」のシリーズでは、男女の出会いを通して人間模様をどこまで描けるかを模索している。俗っぽい恋愛模様や恋愛の過程ではなく、出会いという偶発が生み出すそこにいたるまでの人生観を織り交ぜるのが僕の主題と思っている。
また「暦人」に関しては今更言うまでも無いが、僕のライフワーク小説に近い物語だ。山﨑も夏見も八雲も、美瑠に、栄華に、富久と僕の脳内では、彼らが走り回っている。そこに歌恋やみずほ、時巫女たちも飛び回る。この作品を生み出したことは幸運だと素直に思っている。そうで無ければ二十年以上も頼まれもしないのにこの作品を書き続けていない。
そんなわけで僕の好きな世界観、もし興味があれば覗いて欲しい。そしてここに挙げたキャラクターたちを直に感じて頂けたなら僕はこよなく喜びの境地である。次回はギターの話でもしようかな、と思っている。ではまた。
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