第22話 マンガの話

 僕は読書としては余暇に読むマンガも楽しみだ。のめり込むほどは傾倒しないのだが、そこそこあの文化を重要視している人間の一人である。

 最近は絵のタッチが少女漫画と少年誌のマンガで、さほど変わらなくなったが、僕が子供の頃は全然違った。


『がきデカ』と「ベルばら」は書き込まれている絵としての完成度の高さは一緒だが、方向性が全く違う。近年の作品で言う『xxxHOLiC』と『夏目友人帳』ぐらい違う。


 うちは親戚はほぼ女性だらけ。祖父の兄弟の家は男系が多いのだが、祖父直系の我が家だけは女性ばかりだ。長女の母は全て女姉妹、僕の下は妹。記憶のある男性の身内は、娘婿の父と、僕と一緒に暮らした佐野の祖父だけである。


 なので家に転がっていたマンガは少女漫画ばかり。河あきらさん、津雲むつみさん、池田理代子さん、里中満智子さん、水野英子さん、たかなししずえさん、いがらしゆみこさん、星野めみさんなどなど挙げたらたくさん出てくる。


 逆に家にあった少年誌のマンガは僕のものだけだ。尾瀬あきらさん、原秀則さん、

小山田いくさん、望月あきらさん、とりみきさん、江口寿史さん、松本零士さんなどである。このうちの前半四人の漫画家さんの影響は少し入っているかもしれない。自分でも小説作品の世界観の一部に少しだけ活かされていると感じる。背景や舞台設定などでだ。


 具体的に言うと『初恋スキャンダル』と『夏子の酒』が尾瀬さん。『さよなら三角』、『冬物語』が原さん。『すくらっぷぶっく』、『ぶるうピーター』が小山田さん。『夕陽が丘の総理大臣』、『ズームアップ』が望月さんである。


「カクヨム」さんで載せた「神明社とガールズネーム(仮)」シリーズでも、このあたりのものがほんの少し、下地になっているかもしれない。自分自身で影響箇所の推察や特定は出来ないし、どれもこれも、いささか昔の作品なので、そこまで詳細を覚えているものも少ない。ただなんとなくだ。世界観を構成するごく僅かなひとつの味になっているかもしれないという程度の話だ。こういったイメージは、この微細な下地に前回紹介したような映画の本質が融合されて、僕のプロットと、僕の味付けのもとに言語化したものとでも言うのだろうか。


 ただ不思議なのは、僕の作品はSFが多いのだが、同じSFなのに松本零士さんの影響は表立って出て来ない。やはり前回ご紹介の眉村さん、筒井さん、星さんなど小説家の面々だ。

 多分松本さんの場合、作品が独り歩きして大きすぎるのと、言語化に向かない読み方を僕がしていたのかもしれない。どうやっても作品が似てしまうようなものを、僕は書くのを避ける傾向がある。出来てみたら二次創作を通り越して、これはそのものでしょ! となり僕の世界観が消えているのが困るようだ。オリジナリティが消されて飲み込まれてしまうのだろう。それくらい松本さんの作品は一般世間に浸透している世界観なのだ。それでは二番煎じと見做される。


 それはなんとなく自分を許せないみたいだ。取るに足りない、ごく微量の矜持のかけらみたいなものである(笑)。


 特に言語化では表現出来ない、画像にる部分が多いマンガは独特の間合いがあるので、それを文字作品に入れるのは難儀だし、仮に出来たとして、入れてしまうとまんまその人になってしまう。なので自然に避けているのかもしれない。同じ理由で高橋留美子さんのものも避けている気がする。両者とも絶大なヒット作の連発で、流布しすぎて万人が知るイメージを持った作家さんで存在が大きすぎるのだろう。


 そうはいっても、やはりマンガは直接言語化するのは難しい表現作品なので、参考になるものがごくたまにある程度だ。僕にとって、映画や小説ほど創作の刺激に届くのは稀で、やっぱり野放途に、限りなくくつろいで見られる楽しみであり、娯楽の一つである。大変な思いをして多くの作品を作って下さるマンガ作家さんに敬意を表さずにはいられない。


 今一番のお気にいりのマンガは『アルテ』である。時代考証、タッチの綺麗さ、物語の楽しさ、品の良さ、全てが気に入っている。そしてイタリア・ルネサンス期を舞台にした作品を形に出来る才能には感服の念を抱かずにはいられない。


 さて明日から仕事。今日はその準備とまいろう。持ち物の準備と洗濯と夕方は忙しくなりそうだ。結局、年末年始のお休み、あれもこれもやる予定でいたのだがそれほど多くの事はできず。家の掃除とプロットづくりはまあ、八割程度出来たので良しとしよう。


 ではまた週末に。この頁でお目にかかりましょう。

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