第17話 マイ楽器のはなし

 冬至を過ぎた。すなわちこれから日が延び始める。午後五時で日が暮れていたのが徐々に長くなるのだが、寒さの方は逆に厳しくなる。そんな中でクリスマスと正月が近くなる。今回は、YouTubeの有隣堂チャンネルの「ぶっころー」と『夏目友人帳』の「にゃんこ先生」がとても気になるお年頃のおじさんである僕の趣味的なものの近況。(あのマンガ息が長いんだなあ、と最近知った)


 さて本題。僕は三本のギターを持っていたのだが、現在、手元には一本だけになっている。買い換えと保管の関係で二本が手元を去っている。特に今はもうバンドをやっているわけでもないので、無くても生活に支障はないのだが少し寂しい。触って、世話をしているだけで、ただ出鱈目に鳴らしているだけで心が安らぐのだ。

 買い換えのつもりで手元にあったフェフナー社のバイオリンベースというポール・マッカートニーが使っていたものの廉価版ベースギターを売ってしまった。時期を同じくして、自宅待機期間となり、そのまま、まだ代用品を物色できずにいる。資金充当ももう少しかかりそうだ。

 持っていた器材はマッカートニーと同じティーカップボリュームにツマミを変えて、革製のストラップも、ピックアップも、弦も同じものを施していた。だが、本体もマッカートニーとほぼ同型のモノと入れ替えを試みようとしていた時のあれの流行である。そんなわけで買い換えはもう数年後になるかも知れない。


 アコースティック・ギターは生家に置いたままなので、持ってくるのもちょっと大変である。電車の中で担いでこっちまで来るのは、今の僕には少し至難の業だ。

 こちらもいずれはエピフォン社のテクサンというギターを考えている。通称「イエスタディのギター」である。マッカートニーがイエスタディを歌う際に使うアコースティック・ギターである。これも廉価版が出ているので、僕などはそれで十分だ。子供染みた思いだが、マッカートニーと同じ楽器を持っていると言うだけで人生のテンションが上がる。

 もっと言えばそれで日常を生きていく勇気がわくのだから安いモノだ(笑)。それくらい自分には必要なモノである。高校時代は軽音で、いつも横にギターがあった。活動場所の視聴覚室で、毎日のように弾きまくっていた頃が懐かしい。でもたいして演奏能力は高くない。それどころか腕は皆無だ。分かりやすく言おう、下手くそだ(笑)。それでも手に入れたいのである。


 昔、元配偶者にリッケンバッカーは買わないのか? と言われたことがある。リッケンのジェットグロというカラーのタイプはレノンの愛用品だ。先に言うと、僕には中古品ですら手が出ない。有名ブランドの国産ピアノの中級グレードのアップライトピアノや、そこそこの軽自動車を乗りだし出来る価格になる。それこそ上を見たらきりが無い。格好良いギターだが、端から手を出さないように心がけている。


 僕は楽器を見ているだけで楽しい。これはギターに限ったことでは無く、無数の音色は、生演奏はもちろん、レコードやCD盤から再生されたときにも楽しくなる。絵画の絵具の色と同じ理屈で、多くの楽器が混じり合った音楽がたまらない。ソロはモノクロ、トリオは原色使い、オケやバンドはフルカラーって感じである。耳で見る絵画である。なんかドビュッシーのメッセージみたいだが。


 もう五年以上前になってしまったが、東京でかつてIT機器講座を持っていた時は、昼休みに近所の楽器店に入り浸っていた。その楽器店はオケの楽器から、アコースティックから、エレキ、シンセに至るまでほとんどの楽器が揃っていて、それらを試弾しだんする人たちの音を聴いているだけで心地よかった。昼休みをぶらぶらしながら楽しめた時間だった。興味のある楽器の音が聞ける。奏法が見える。何て素晴らしいのだろうといつも思っていた。


 音楽は僕にとっては楽しむものだ。仕事や試練ではない。かといって今は趣味にもならない。だからいたずらに、そう高価なものはいらないのだが、廉価版でも、中古品でもいいので、マッカートニーと同じものが安く手に入れば、嬉しい、楽しいという、目的意図のはっきりしない幸せで夢見ているのである。おじさんのくせにだ。自分の事を好事家と言っている意味はそこにある。

 もし分かっていただける方がいらっしゃれば嬉しいが、そんな僕ごときのくだらないこだわりから来る夢物語を肯定して頂ける人は少ないかも知れないので、お茶を濁して今回はここで終わりとしよう(笑)。ではまた。


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