第8話
例えば、部屋に羽虫一匹現れた時に戦車砲を持ち出すヤツはいるだろうか。普通はいない。たかが羽虫一匹だ、それを駆除するために必要なのは、程度に個人差はあれど羽虫一匹を殺すに足る殺傷力、武力である。
素手、蠅叩き、薬物を使用するにあたっても精々ピレスロイド系の人体に害の少ないモノ。必要なだけ、最小限の力をもって排除しようとする者が大半だろう。何故なら、無駄だから。
では、ネズミ一匹ならどうだろうか。ネズミ捕りや殺鼠剤を用いるだろう。
では、アライグマやアナグマの類は? ここでようやく専門の業者を呼ぶだろう。
では、クマやオオカミ、ライオン等の大型野生動物なら?
それ以上に大きな、恐竜のような化物が現れたら?
そう。普通は相手によって対応を変える。無駄に大掛かりな対策など取らない。相手が脅威であれば、強大であれば全力を挙げるであろう。だが、弱者を排除するために普通は全力など用いない。無駄だから、損だから、そんなことをする必要なんてどこにもないからだ。
その、必要最小限の武力をもって排除するという当たり前の『常識』故に、突如としてキョウの都北部の旅館に現れたそのアンデッドは強大な力を得てしまった。
上空から落下してきたと思われるその存在に、キョウの都は素早く対応を行った。結界に反応したのは一体かつ弱小、そのため定石通りに戦奴数名を向かわせる。
結果は戦奴全員の生存。正確な位置の特定――男湯の露天風呂――も完了し、旅館の従業員と宿泊客の避難も済ませた。戦奴達とそれに合わせるように動かしていた式神から、そのアンデッドは人型で種族こそ不明であるが体躯も魔力も小さく、対象の付近には露天風呂にいたらしい戦奴らしき少年が1名と隣接した女湯にいたと思われる女性客1名だけ。
アンデッドハンター達は残酷ではないが冷酷である。そのためアンデッドの近くにいたその2名の救助は度外視し、迅速な対象の排除に移った。
アンデッドは危険な存在だ。霊長を謳う人類の唯一にして最大の天敵だ。たかがゾンビ一体見逃したことで村が滅んだ事例も過去にはある。
まして、ここはキョウの都だ。先の複数回に渡るアンデッド騒動で過敏になったキョウの都だ。たかが人名2つ程度、それも1名は戦奴だ。彼らを救助したがために都の民が危険に晒される、なんてことはあってはならない。彼らは必要な犠牲だ、トリアージに見捨てられた存在だ、コラテラルダメージだ。
そうして、アンデッドハンター達は本格的に対象の討伐に取り掛かる。
遠方より対象を確認し、旅館全体を結界で覆い対象を逃れられなくし、民間のアンデッドハンター数名からなる隊を投入した。
――数十分後、疲労困憊の体の彼らが全員帰還した。死者はゼロ。今回のアンデッド騒動の指揮官を担う男は彼らからの朗報を期待した。
だが、帰ってきた彼らからの返ってきた言葉はそれとは真逆。
曰く、話が違う、と。
弱小アンデッドなんていなかった、と。それどころか、取り残された戦奴の少年も女性客もいなかった、と。
後者の報告はまだいい。納得できる。此方の体制を整えている間に捕食されてしまったのだと、そう理屈が通るからだ。元々見捨てた命だ、取り立てて考慮する必要のない報告だ。
だが、前者――弱小アンデッドなんていなかった、とは。
帰還した者から話を聞くと、
「あれは弱小なんかじゃねぇよ、上位じゃあねぇが、少なくとも中位のアンデッドだ! オレらみたいなフリーでやってるようなハンターにゃとても倒せねぇ! 何人集まろうとな!」
指揮官は望遠魔術を用いることの出来る術師に確認を取る。
そして、帰還した者達の言葉が事実であることが確認された。
対象は、初期の段階で報告されていたモノよりも大きな体躯を誇り、存在感も魔力量も大きくなっていた。確かに中位以上の、しかし上位種ではないアンデッドであった。
情報の伝達ミスであろう、と指揮官は判断した。なにせ対応は急場だったのだ、対象の能力を見間違う、というのは時に致命的なミスとなってしまうが起こり得ない事態ではない。
そして、ここは腐ってもキョウの都。術師を中心としたアンデッドハンターは数多く存在する。さらに、今は議論の最中故にこのような些事には呼び出せないが先の襲撃を受けて遠方からいくつもの対アンデッドの名家が訪れてきている状況だ。
フリーの、民間のアンデッドハンターでは手に負えないとはいえ相手が単体であることは間違いない。そして、その対象は逸脱した能力を持つ特殊個体という訳でもなければ狂暴な性格という訳でもないことを彼らの生存という事実が物語っている。
ミスはミスだ。だが、今回のは致命的なミスではない。次回に生かすことすらできる有意義なミスだ。
そう判断した指揮官は、中位のアンデッド――それを容易に狩れるだけの部隊を即座に編成した。彼は優秀だった、故に編成は1時間程度で完了。
4人1組、それが12部隊。計48名からなる大所帯だ。1体のアンデッドに対しては些か過剰とも思われる戦力だったが、万全を喫して彼はこの部隊を編成した。
そして、再度の突入と交戦。
――戻ってきた彼らはまたもや疲労困憊かつ全員生存。どころか負傷者すらゼロ。
だがしかし、彼ら全員の表情には明るいモノが微塵もない。
嫌な予感と共に、指揮官は報告を受ける。
「――対象は超大型のアンデッド。外見は爬虫類型で推定数十メートルの細長い体格。右前足に謎の映像の映る宝玉を持ち、頭部には2本の角が生えている……そして、一切の攻撃が通用しないほどの上位アンデッドであると予想される、だとっ!? なんだ、この報告はっ!?」
先ほど自身も確認した対象とは、外見も能力もまるで異なる。
彼は早足で望遠魔術師の元へと向かい確認を取る。
結果は、報告通りであった。
対象は巨大な爬虫類型のアンデッドであり、放つ気配も高位種のそれ。アンデッドの力を封じる結界の張られたキョウの都でこれだけの威圧感を、旅館から離れたこの指揮本部まで届かせるほどの、上位アンデッド。
対象の種族の特定を部下に命じながら、彼はこの異常事態の原因を脳内で探る。
弱小アンデッドが旅館の風呂に落ちてきた。それだけであったはずだ。なのに何故、このような事態が発生しているのか。何故、あんなにも高位のアンデッドが現れたのか。
1人の下士官が、考える指揮官の隣でぼそりと呟いた。
「……もしかして、龍神様?」
「なんだと……? 貴様、あの存在に――あのアンデッドの正体に心当たりがあるのかっ!?」
下士官は胸倉でも掴まれるかのような勢いで自身に迫った彼に対し軽く身を引きながら答える。
「えっと、昔おばぁ……祖母に聞いたことのあるおとぎ話に、あのアンデッドと同様の外見をした特徴の神様が出てきたな、と」
「おとぎ話だと?」
「はい。角を生やした細長くて大きなトカゲのような姿の神様だと。名前はなく、ただ龍神様とだけ呼ばれていました。天候や疫病を操り、気まぐれで人を助けたり逆に害したりと」
「……自然信仰の類か。下らん、そんなものは存在しない」
「えぇ……ただ、仮に龍神様が存在したとしても、あのアンデッドではないと私も思います」
――だって、龍神様は神様です。アンデッドではありません。
その下士官の言葉は、そのおとぎ話は誰にも信じられていなかった。
作り話だ、くだらない神話だと、誰もがそう思った。
そう思っていたから――『龍神様』の存在を事実として認識していなかったから、そのアンデッドは弱り果てていたというのに。
始めに、旅館の者数名が知った。
次に、彼の存在を戦奴達が知った。
そして、フリーのアンデッドハンター達が知った。
さらには、数多くの本職のアンデッドハンター達が知った。
その上、指揮本部の者達もまた、彼の存在を知ってしまった。
知る、知られる、恐怖される、信仰される。
いずれの条件であっても構わない。ただ、認識される。実在を確信される。明確な正しい情報など必要なく、知られることによってより強大に、より強靭に、より強力に成長していく。
それが、キョウの都に現れた謎の弱小であったはずの――羽虫程度であったはずの、いまや化物となった――『龍』という非常に温厚なアンデッドの特徴であった。
――――
「……該当例、なし。対象、不明なアンデッド。やはり、ルシ子のデータベースに記録されていないアンデッドです。ルシ子は困惑します。何故、仮称トカゲアンデッドはここまでの速度で成長したのでしょうか」
目の前のその長大な、しかし大人しいその存在を見やりつつ。魔術によって姿を隠したまま男湯内部にてルシファーは首を傾げる。
存在感からして――堕天使の勘からして、そのアンデッドは全力を出したルシファーよりも遥かに弱い。だが、人化した状態の今のルシファーと比べれば、彼の存在の方が力も魔力も上だ。戦いは力量だけが全てではないが、今の状態では分が悪いとルシファーは判断していた。
それに、対象は非常に大人しい。とぐろを巻いたその体がアンデッッドハンター達からの攻撃に晒されようと、一切の反撃を行わなかった。そのような相手に対し戦いを挑む是非をルシファーは悩んでいた。
「……しかし、対象が個体名ナナシを捕食――いえ、アレは捕食というよりも捕獲に近い形でしょうか。摂食の意図を感じさせない丸呑みでした――それを確認しています。友人として、救出すべきであるのかをルシ子は悩みます」
堕天使の瞳によって、ナナシが未だ生存しているのは確認済みだ。
どういう訳か、彼はそのアンデッドが前足に握った宝玉の中にいるらしい。彼の魂はそこから感じられる。口から――頭部に備わったその場所から取り込まれたにも関わらず、何故宝玉内にいるのかは不明であったが。
しばらく観察して分かったことだが――彼女は、そのアンデッドは特段ナナシを害する意図はないらしい。
いや、むしろその逆だろう。今の化け物染みた姿となる以前、彼女はナナシに対し腕に抱かれながら愛を語っていた。対するナナシは困惑していた様子だったが、彼女が彼に友好的であるのは間違いないだろう。
事実、捕食に似たあの行為の後もナナシの魂が揺らぐ様子はない。宝玉の内部にて揺蕩う様が見て取れるだけだ。
「情報分析――エラー、情報の解析に失敗しました。情報量の不足が原因と判断。よって、ルシ子は情報の解析ではなく類察を行います」
今まで見てきた光景及び自身の持ち得る情報では状況の把握が不可能であると判断したルシファーは、理解ではなく推測を行うこととした。
「対象の巨大化――成長は、人類の戦力投入によって発生しました。よって、この現象は敵対勢力の戦力に依存した成長であると推測されます」
「不正解ですよ、ルシ子ちゃん」
誰に答えた訳でもない虚空へと投げたはずの呟きに、女湯に方から返答があった。
聞き馴染みのある、それどころか未明から早朝にかけて語っていたあの神の声であった。
「彼女は――『龍』は、相手が強ければ強いほど強くなるなんて少年漫画みたいなキャラクターではありませんよ。そんなカッコいい特性なんて持っていません、彼女の性質は至極単純です」
「……不服ながら問いましょう、神。トカゲアンデッド――もとい個体名龍は、どのような性質を持ち、何故急激な成長を果たしたのでしょうか」
「トカゲアンデッドって、愛称の『ドラ子ちゃん』以上に安直で酷いネーミングですね。アナタに名付けの才能はないみたいです、彼と夫婦となるのは諦めたらどうでしょうか、ルシ子ちゃん」
「……ルシ子は繁殖を行う予定はありません。ですから、ルシ子のネーミングセンスとナナシとの婚姻の是非に因果関係は一切ありません」
「そうでしたね、アナタは彼を愛しているのではなく、あくまで友人――そして、婚姻によって欲しいのはこのヤマト国における社会的な立場、でしょうか。あの時は湯に浸って茹で上がった頭でつい逆上してしまいましたが、よく考えてみればそんな所ですよね」
竹で出来た仕切り。それを短刀で切り裂き現れたのは、何故か忍者姿の衣装を纏ったアンデッドの神、メヴィアであった。
「…………」
「おや、ノーリアクションですか。反応が悪いですね、つまらない。自分では結構に合っていると思うのですけれど。ニンニン、なんて」
「……再度問いましょう。ルシ子の推論の不備を、個体名龍の性質を答えてください」
「なんて遊び心の無い。まぁいいでしょう。これ以上彼女の中に彼が囚われていると、本当に絆されてしまいかねませんからね」
本来この彼女の能力は男の方のワタシ相手に使うモノなのですけれど、と。
そう呟きながら、無表情のその神は問いの答えをようやく返す。
「『龍』というのは、大自然の擬人化――いえ、擬神化とでも言うのでしょうか。人々の力ではどうしようもない事柄を全部纏めて固めて、それに人格を与えられた末に生まれた偽りの神です。アナタの創造主や、あるいはワタシとは異なる経緯で誕生した紛い物です。アナタが嫌う神とは異なった、支配どころか使役される側の神ですよ。ルシ子ちゃんが嫌う必要のない神様です。それが今や人々に忘れ去られ、あるいは作り話、おとぎ話、嘘であると思われ零落し……そうして弱体化した末にアンデッド化したのが今の彼女。『龍』。種族的にはドラゴンゾンビですね」
ネームドユニットなのに名前が無いんですよ、彼女。ネームドのくせに。矛盾してますよね。
そういって冷笑を浮かべる彼女の眼は笑っていなかった。
視線の先を辿ると、その『龍』とかいう名前のアンデッドが握る宝玉があった。
正確にはその宝玉の表面――そこに映し出される映像を彼女は睨んでいた。
憎らしく、恨めしく、嫉妬と羨望と憎悪と侮蔑と嫌悪と――あらゆる悪感情の込められた視線でそれを射抜かんばかりに睨みつけていた。
「故に、彼女は知られることで成長します。いえ、成長という言い方は語弊を招きますね。彼女は知られ、認識され、畏怖され、崇められることで、『戻る』のです。神とすら呼ばれるほどの力を持っていた頃の彼女へと戻っていくのです」
メヴィアは右腕を空へと掲げると、何事か呟いた。
瞬間、男湯のみに範囲を絞った結界が展開される。
「……断絶の結界」
「ご名答です。これで、この空間は完全に外界から隔離されました。外から見れば、突然この空間が消え失せ認識出来なくなったように――元の露天風呂のように見えることでしょうね。当然ここには誰も入れません。ヤマト国でこの結界をすぐさま解除できる人類側のユニットは『巫女』かあの柳家の妹の方くらいでしょうね」
これで、これ以上彼女を認識する人間はいなくなりました。
メヴィアはそう言うと、張りつけたかのような、嘘偽りで塗り固めたかのような笑みをルシファーに向ける。
「ワタシもルシ子ちゃんも、人化を解いていません。アナタが人化しているのはクールタイムが理由でしょうけれど、今はそれが幸と出ました。ワタシ達ほどのアンデッドが本性を見せれば、この断絶の結界――人化した状態で張れる限界のコレは、ワタシ達の気配を抑えきれずに数分と持たずに壊れてしまうでしょう。なにせ、2人分ですから」
「……何が言いたいのですか、神」
「ワタシ達の気配が漏れれば、きっとより多くのアンデッドハンターがこの場所に集います。結界を張りなおすよりも早く、彼らはここに来てしまうかもしれません。なにせキョウはアンデッド対策を強めましたからね、アンデッド状態のワタシでも結界を張るのに手間取るでしょう。そうなれば、より多くの者が『龍』を知ってしまいます」
「なるほど。そうなれば、個体名龍はより一層の強化、成長……いえ、神である姿に戻るであろうとルシ子は理解しました」
そこで提案です、と。
未だに忍者衣装の理由を語らない――そもそも神とは気まぐれ故に理由があるのかすら定かではないのだが――彼女はルシファーへと手を差し出す。
表面上は笑顔で、しかしながら敵対心と殺意を隠しもせずに握手を求める。
「ハンティングをしましょう。あの世界とやらの『恋愛ごっこ』に興じるよりも前に、ハンティングゲームを行いましょう。目の前のあの化け物を人化した、人間である状態のワタシ達で狩りましょう。そして、囚われた彼を救いましょう」
ルシ子はその言葉を受け、しばし瞑目した。
正直な所、ルシ子はナナシを助け出すべきかどうかすら悩んでいた。なぜなら、捕食される際の彼が抵抗していなかったためだ。
命の危機、というのであれば話は別だが望んで彼があの宝玉内にいる可能性について考えれば、救出の是非について彼女は判断を下せないでいた。
もしかしたら、望んでの行為かもしれない。そして、その場合であっても彼があの中から出てくることはないかもしれない。
彼と2度と会えない。それは寂しい。けれど、友人ならリンがいる。2人の内1人減るのは、まぁ寂しいことは寂しいけれど。彼の選択の結果というのなら、受け入れるほかあるまい。それが彼の自由の結果ならば。
「……問いましょう。神は何故、ルシ子の助けを求めてまで個体名ナナシの救助を行いたいと望むのでしょうか」
「あの宝玉の映像……アレが気に入らないからですよ」
問いかけにメヴィアは即答した。
「アレは、彼と龍が今体験している幻想そのものを映し出しています」
宝玉の表面に映る映像を指さして、メヴィアは唇を噛む。
見れば、確かに。
ナナシと、彼が腕に抱いていた少女……その両者が成人ほどの年齢にまで成長した姿で仲睦まじく暮らす風景がそこには映し出されていた。
「『龍』は空想から生み出された存在です。故に、幻想という概念を支配する能力を持ちます。勿論、幻想は所詮幻想でしかありません。現実に及ぼす影響なんてほとんどないに等しい。けれどあの宝玉内では、あの中に囚われた者はそれが現実だと、彼女の生み出した幻想を事実だと錯覚してしまうのです」
夢の中で空を飛べることに違和感を持たぬように。夢が夢であると自覚しにくいように。
『龍』は、幻想の王は限定的ながらその幻想を支配するのだと。
「……気に入りません。ワタシの彼を……あんな風に……っ!」
笑みが剥がれ落ち、表情に怒りを見せるメヴィア。
そんな彼女の様子にルシファーはため息を吐くと、差し出された手のひらを大きく叩いた。
さながら、ハイタッチでもするように。
「……ワタシが求めたのは握手であったのですが」
「勘違いしないでください。彼は神のモノではありません、ルシ子の将来の伴侶です」
「勝手に言っていればいいですよ。それで、協力して下さるのですか」
「今回だけです。神とはいえ、今回のアナタは自由を求める側……そして、ナナシは囚われていると、神は発言しました。ルシ子は支配と束縛への反逆者です。ですので、今回だけ手を貸しましょう」
「ありがたいですね。流石にこの人の身でアレを狩るのは……ソロプレイはキツいかもと思っていた所なので」
それでは、とメヴィアは自身に喝を入れるように深呼吸して。
「お互いの大切な方のために、一狩りいきましょうか!」
「ええ。安心してください。紛い物とはいえ、零落しているとはいえかつての神が相手なのです。2戦1勝1逃し、神殺しの戦いに関してはルシ子は百戦錬磨の猛者ですから」
「……一度逃したことがあるんですね。それに、それを普通神であるワタシの前で言いますか?」
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